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ショートケーキ
約束の週末。
昼過ぎにカフェで待ち合わせをしている。直之はこういう時、待ち合わせよりも少し遅れて店へと向かうようにしていた。
時計は待ち合わせよりも十分過ぎている。自動ドアに軽くタッチして扉が開くと、店の奥に座って読書をしている渉の姿を見つけた。すぐには向かわず、レジでカフェオレを注文してからゆっくりと近づいて行く。
「お待たせ」
「おはよう」
二人掛けのソファの中央寄りに座っていた体を右端へと移動させ、直之が座るためのスペースを空けると、キリが良くないのか開いたままになっている小説へと視線を戻してしまう。
そっと持っていたカフェオレをテーブルに置き、隣に腰を下ろす。
真剣に読んでいる横顔を見つめながら、いつ自分の存在に向き合ってくれるのかを待っていると、しばらくして静かに本が閉じられた。
「ゴメンね」
「いいよ。付き合ってもらうの俺だし」
「けど、待たせちゃったし」
「遅れたのは俺。もう少し読む?」
「ううん。ちょうど章が変わるところだから大丈夫」
「そっか。じゃあ、これ飲んだら出よう」
直之の言葉に首を縦に振って答えると、持っている本をバッグへ入れて、自分の買っていたすでに冷めているであろうカフェオレを口へと運んでいる。
どうせ読書に夢中になっていて飲むのを忘れていたに違いない。
まあ、いつもそんな感じだから本人は特に気にしていないだろうけど……。
「さっ、そろそろ行こうか?」
「うん」
お互いに飲み終わったカップを手に持つと、返却口へと運び、店を出る。
隣に並びながらショップが立ち並ぶ方へと足を進めていく。
「寝袋と、他にどんなものが必要?」
「一応、寒さ対策でウィンドブレーカーとか買っといてもいいかもね。あとは、食器類かな。コップとかお皿とか、セットになってるやつだったら、コンパクトにまとめられるだろうし」
「おー、なるほど。渉は買ったの?」
「直之が買い物付き合ってって誘ってくれたから、僕も今日揃えようと思って何も買ってなかったんだ」
「そうなんだ。だったら、色違いでお揃いとかにしてもいいかもな」
「そうだね」
深い意味なんてなく言った直之の言葉に、ちょっと照れくさそうに渉が返事をした。
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