1 / 10

第1話 夜の裸体

部活、遅くなっちゃった。 といっても、とくに急いで帰る必要もないので、フツーにゆっくり歩いていた。 日が暮れてから帰ることはほぼ無かったためか、景色が違って見えたために、いつもの道じゃないところを通っているようだ。 「…迷った?」 つい声に出しちゃった。ちょっと焦った。 おそらくもう家に着いてても良いだろう時間になってるけど、どうも方向がずれているのか。 そして、普段通らない住宅街の太い道をまっすぐ歩いている。 この道だったら知っている。ここをまっすぐ行けば、いつもの道に出る。 ということは、けっこうな回り道をしたことになる。ちょっと失敗したな。 でも、まあ、知ってる道に辿り着いたから、少し安心した。急いでいたペースを落として、ゆっくり歩くことにした。 その通りすがった道沿いに、一軒家があった。その家のすぐ横を通っている。 その2階に明かりがあった。カーテンもなく部屋の中まで見通せる。 その部屋の中に、青年がふっと現れた。 腰に巻いていたバスタオルをさっと取り、頭にかけてくしゃくしゃとかき乱した。そのまま窓まで出てきている。 腰までオープンにしているので、全てが見えた。 個人的には、なかなかのモノだと思う。 どうやら星とか月とか見てたらしく、視線は上を向いていたらしい。 が、顔の向きはそのままで、視線が合った、ように思った。 いや、顔もこちらを向いたので、俺も見られた。 仁王立ちのままで。 その青年は、また天を向いた。何事もなかったように。 俺は、小走りに家に向かった。 *  *  * あの背格好、そして家の場所。校区から考えて、おそらく同じ学校だろう。 あっ、でも、私立の学校だったら、住所とか関係ないもんな。 ウチの学校はフツーに公立の高校だし。 スマホを開けると、その裸体。 さっき、つい写真撮っちゃったのだ。 ちゃんとフラッシュ付けずに、無音にして。 ピントもちゃんと合ってるし、全身が綺麗に写ってる。 「ごはんよ~。はやく下りてらしゃい。」 「あ、はーい」 ぱっとスマホを片付けた。 *  *  *

ともだちにシェアしよう!