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第1話 新宿プッシールーム
そのお店は東京・新宿、花園神社の近くにある
花園神社といえば酉の市が有名で、毎年祭りの期間中にはたくさんの熊手の露店が立ち並び、壮観の一語に尽きる
今時珍しい見世物小屋、露店に設けられた仮設テントの下で丸椅子に座って酒を煽る人々、
露店商の商売繁盛祈願の手締め
賽銭箱に札を投ずるように希望に銭を投じる光景
そんなものはタキの目には滑稽にしか映らない
タキが働く風俗店【新宿プッシールーム2号店】に行くには、花園神社の脇を通っていかなければならない
酉の市が始まると2日連続祭りの喧騒が続き、しばらくするとまた2日続いて祭りが行われる
それが3回行われる
一の酉、二の酉、三の酉だ
なんでそんな日程を組んだのか、昔のひとの考えることはよくわからないとタキは思いながら、今日も熊手を担ぐ人々の横をすり抜けて店に向かう
店はいわゆる、ゲイ専門のオナニールームだ
セミダブルベッドひとつ分くらいのガラス張りの部屋に演じ手 が入り、客の要望に従って、道具や手でオナニーをして見せる
客はガラス越しにプレイヤーのオナニーを見ながらシコるのだ
タキはこの店に勤めて2年目になる
風俗店は店舗型、非店舗型関わらずたくさんあるが、タキにとってプッシールームのシステムは性に合っている
何しろ客に触られないのがいい
おしゃべりはマイクを通して行わなければならないが、それくらいはサービスの内で、客が望めばどんな卑猥な言葉でも言ってあげる
部屋名【ペルシャ】がタキの部屋だ
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