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第4話 スコティッシュフォールド①

「話したらすっきりしました。タキさんは俺のこと気味悪がったりしないんですね」 「誰かに話したことがあるんですか?」 「妻の両親に話しました。でもそれから会ってくれなくなって。俺が墓参りに行くだけでも怒るんです」 クロさんは肩を落としてうつむいた 「ご両親も娘さんを亡くされてお辛いのかもしれないですね。時間が経てばきっと」 奥さんがいなくなれば、義実家との縁なんていつかは消えてしまうだろう タキは気休めしか言えない自分を情けなく思った 「聞いてくれてありがとうございます。やっぱり今日は帰ります」 アイスコーヒーを飲み終えたクロさんがまた立ち上がった タキにはまだ聞きたいことがあった だが、また来てくれる保証はどこにもない タキは思いきって聞いてみることにした 「やっぱり奥さんのことと喪服って関係あるんでしょうか?!」 クロさんは目を見開いてタキを見ると 「それはまた次回にでも」 と言って、部屋から出ていった ※※※※※※※※※ 【スコティッシュフォールド】のミナミは年齢のわりには見た目が若く、感度も声もいいと【プッシールーム新宿2号店】の人気ナンバー1だ 身長が低くて、顔立ちがかわいいのがバリタチに人気で、出待ちされることもしばしばあった だが本人はがつくノンケであった 28歳、フリーター、付き合って8年になる彼女がいる その彼女が今度結婚すると言う 「は?」 「だから別れて、っていうか別れてくれないと困るんだけど…」 彼女は証券会社の営業職に就職してから、バリバリの仕事人間になった ミナミは出会ったときからフリーターだったから、彼女はそれでいい人なんだと思っていた 6年前に仕事が大変だというから同棲を始め、家事はミナミが受け持った ミナミの感覚ではヒモというよりは主夫で、そういう関係があってもいいと思っていた 「いや、俺ら付き合ってたよね?え?浮気?二股?」 ミナミの頭がぐるぐると回った 決して今のままで結婚できるとは思っていたわけではなかったが、まさか相手がそこまで真剣に将来のことを考えているとは思わなかった 「でももう私たち28歳だよ。ミナミのことは嫌いじゃないけど、これから結婚して子供もできてってなったら、さすがにフリーターとじゃやっていけないでしょ」 至極もっともな意見だが、腑に落ちないのはそこではない 「じゃあなんでもっと早く言ってくれなかったんだよ?就職しろなんて一言も言わなかったじゃん」 今日の今日まで順調だと思っていた 長く同棲してるにも関わらず、プッシールームの仕事がない日にはセックスだってしていた すると彼女は言いにくそうに、 「それはわたしの庇護欲というか、ダメ男好きなところが出ちゃったんだよね。仕事で失敗しても、ミナミ見てたら楽になれるっていうか…こいつみたいな底辺もいるんだから、私はまだまだ大丈夫だなって思えたというか…でもそんな後ろ向きな考えじゃダメだったんだなって、今の彼氏に教えてもらったって言うか…」 ミナミは、ハンマーでガツンと頭を殴られたような感覚に陥った

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