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第3話 ペルシャ②

タキは自分のペニスは触らないプレイスタイルを貫いている ローションを口に含み、腰を前屈みに丸めて後ろの穴めがけて垂らした 「今日はどれにします?」 部屋の背後の棚には各種玩具が並んでいて、客はプレイヤーに使ってもらいたいものがあればオプション料金で2つまで指定することができる 「まずは指でお願いします」 タキはうなずいてクロさんの言う通りにした 中指、人差し指、薬指の順にゆっくりと挿入していく スピードや激しさを求める客もいればスローペースを好む客もいて、クロさんは典型的な後者だった それに不必要なあえぎ声にも不快感を示すことがあった タキがオナニーでしか感じないということは、オナニーで必ず感じると言うわけではないが、クロさんの静かでストイックな瞳に射ぬかれると、背中の毛が逆立つような快感に襲われて激しくイキそうになる そんな状況であえぎ声NGはきつかった しばらく指で攻め続けると、泡立った汁が臀裂の方に流れ出てきた スピーカーからクロさんがベルトを外す音が聞こえた ほとんどの客ならこれから盛り上がるところだが、クロさんの場合、低空飛行でいくのが最適解だ タキは片手を背中の後ろについて、膝を立てて背中をそらした これできっとよく見える 結局タキは指だけでイキ、クロさんも手でしごいてイッた このまま続けさせる客もいるが、クロさんは、 「タキさんも休憩して」 と言ってワンドリンクオーダーのオレンジジュースを飲んだ タキは体を拭いてから両脚を揃えて座り、裾を手繰り寄せた クロさんがジュースを飲んでいる間、タキはやることがないので、クロさんの動きをじっと見ていた やがてオレンジジュースを飲み終えたクロさんが、 「つかぬことをお聞きしてもいいですか?」 と聞いてきた 「はい」 「タキさんは霊感がありますか?」 唐突な質問に、客に対していつも冷静で丁寧なタキも思わず、「は?」と返してしまった 「やっぱり、おかしな質問でしたよね。忘れてください」 「いいえ。おかしな質問ってことはないので大丈夫ですよ。でも、霊感はないと思います」 「それじゃあ霊媒体質とか…」 「え…さらにないと思いますけど…」 タキは正直に答えた 「そうですか」 クロさんは、心底残念そうにうなだれた 「何かあったんですか?」 「いえ…」 クロさんの視線が気まずそうに泳いだ 「今日はこれで帰ります。お金は1時間分払って帰るので…」 クロさんは急に椅子から立ち上がり、上着をつかむとそそくさと部屋から出ようとした 「ちょっと待って…!」 タキは部屋と部屋を仕切るガラスに詰め寄った 「お時間が大丈夫なようでしたら少し話していきませんか?ドリンクサービスするんで」 タキの好奇心がうずいた と、同時にタキは自分が話を聞いてやらねば、と思った それがどんな荒唐無稽なことだろうと、いま、クロさんを癒せるのは自分しかいない タキはインターホンでスタッフを呼んで、オーダーを取りに来てもらった クロさんは恐縮しながらアイスコーヒーを頼んだ 話す意志があるということにまず安心した 「なんで突然、僕の霊感なんて気になったんですか?」 「突然でもないんですが、タキさんを見てるとそうじゃないかな?と思うことが多々あって」 タキ本人ですらそんな自覚はない 一体、どんなところでそう思ったのか 俄然興味が湧いた クロさんは膝の上で爪をいじった 「僕は妻を亡くしてるんですが、ふとした瞬間にタキさんが妻に見えて、それで…」 それで足繁く通ってくれていたのか 「でも、似てるからって、霊感があるとか憑依体質とかってのは飛躍しすぎじゃないですか?単純に似てるって言う方が僕は運命を感じます」 憑依されているから通ってくれているだとすると、クロさんが会いに来ているのはあくまで奥さんでタキではない それは面白くなかった 「でも、決して顔や背格好が似てるとかではないんです!本当に妻がタキさんに重なって見えて…毎回じゃないんですけど…」 クロさんは次第に自信なげにうつむき出した 「それで、オナニーする日もあれば、しない日もあったんですね」 クロさんが済まなそうにうなずいた 「じゃあ今日は見えたんですね?」 「はい」 「それはよかったです。ちなみに会話とかはできるんですか?」 「会話はできないけど、機嫌とかはわかります」 幽霊に機嫌があるのかどうかも怪しい それでもタキはクロさんを笑ったりしない 本当に大切な人なら、幽霊でも幻覚でも、例え頭が狂っているんだとしても、会いたいしそばにいたいと思う

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