77 / 161

第77話 ロシアンブルーは眠れない②

「勝手に人をおかずにしないでください」 リンに声をかけられ、アットはビクッと身体を震わせた その瞬間、アットの先端から精液がほとばしり出た さっきまでリンの髪をつかんでいた指の隙間から精液がこぼれ落ちた 「わり」 アットはローテーブルの上の箱ティッシュを引き寄せて、手のひらと床を拭いた 「・・・」 「・・・」 「なんで?」 リンの疑問はもっともだった アットは何も言えなくなった 余裕のないところを見せたくなくて、一度ヌいておこうとした自分が悪かったと、アットは反省した 反省しても時が戻るわけではない アットはスラックスを上げてリンに向き直った リンは一度はシャワーを浴びたらしく、湿った肌にボクサーパンツを履いて、Yシャツを羽織っていた アットの脳内にブワッと血が回った なんてことはない、ヤローの下着姿だ バンドでツアーにいくときや、曲作りで徹夜をするときなんて、マサトや他のメンバーとはパンツ1枚で雑魚寝する 彼らに一度だって欲情したか? アットは頭の中で否定した じゃあ、この衝動と火照りはなんだ? アットはリンの足にすがりつくと、ボクサーパンツの上からリンのモノを()んだ 「アットさん!?」 アットは夢中でリンの膨れ上がったモノを甘噛みした 「ちょ…」 「リン…!」 「待って待って待って!」 「待てない…!」 「いやいやいや…」 『いや』という言葉に反応して、アットは我に返った 見上げると、リンが真っ赤な顔で歯を食いしばっていた 「イヤ…?じゃない?」 リンはコクリとうなずいた 「イヤ…ではないけど、俺、初めてで…どうしたらいいかわかんない…」 ホストクラブでウエイターとして働いていた時に、先輩たちに無理やりフェラをさせられたことならある だが、オーナーの息子ということで最後まではされなかった 今思えば、地獄の中にも光があったのかもしれない 継母のせいで辛い目にもあったが、守られている部分もあったのだと強く思う 「俺がリードしていい?もうカッコ悪いとこ全部見られちゃったけど…」 アットが、7つも上とは思えない声と表情でリンを見た 「…わ、わかった…」 「今日だけじゃなくて。あんたとは一回で終わりにしたくない…と思う。だからあんたもそのつもりでヤるかヤらないか決めてほしい」 一度冷静になると、途端に及び腰になった 年下に判断を委ねるなんて、スマートさやかっこよさとはほど遠い でも怖い 恋愛とはこんなに怖いものだっただろうか アットは鮭児に想いを寄せていた時のことを思い出した 「アットさんと付き合うかどうかってことですか?」 リンはボクサーパンツのウエストをギュッと握っていた手を緩めた 「うん。真剣に考えてほしい」 アットは、正座した膝の上で拳を握りしめた それを見たリンが、 「アットさん、言ってることとやってることがめちゃくちゃ」 アハハとお腹を抱えて笑った 「急にキスしたり、チンコ噛んできたりしたくせに、付き合う前提でヤるかヤらないか俺に選べって」 「だって、俺はもう好きな人に嫌われたくない…っていま思い出して」 アットが今にも泣き出しそうな顔で言った リンは笑うのを止めた 「それは…俺もです」 リンがアットの前に立て膝をついて両手を広げた アットはその腕の中に身を委ねた ※※※※※※※※※※※ その日の夕方、リンはアットと一緒に大久保の家を出て、歩いて新宿に向かった アットはついていくと言ったが、リンは断って新宿駅で別れた 昨晩から今日にかけての出来事は夢のようでいて、後を引く痛みを伴った現実だ 下半身も痛くてだるかったが、それよりもアットと抱き合っている間、ずっと締め付けられていた心臓のほうがずっと痛かった アットとは離れがったかったが、リンにはやるべきことがある リンは、新宿駅から花園神社方面に向かって歩きだした

ともだちにシェアしよう!