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第74話 そして・・

「ロジ、起きて!」 ミトに起こされて抱きしめる。この手に確かに抱いている。ベッドの中。  ミトが上になってロジの顔を見つめる。ロジの目が覚めるのを待っている。 「ああ、おはよう。どうした?」  胸に抱きついて 「生きてると不思議な事がたくさんあるねぇ。」 「いきなりだなあ。 ミトは特にいろんな経験をしたからね。」 「うん、ロジと出会って世界が広がった。僕の人生って、ひきこもりのままで終わると思ってたのに。」 可愛い頭を胸に乗せて来る。この柔らかい髪を撫でている幸せ。半身を起こして抱きしめた。  顎に手を当ててその唇を啄む。 チュッ、可愛い音を立てて応えるこの天使は、確かにロジャーの手の中にいる。 「ああ、ミト。愛するという感情は、数式に表せない。こんなに溢れる思いなのに。」 「ロジ、勉強し過ぎだ。お仕事、少し休んだら?」  指先に触れるミトの全てが愛おしい。  そのころ、スグルもベッドの中で礼於を抱きしめていた。裸でベッドの中にいる二人の、タトゥーが蠢いて生きた龍のようだ。 「スグルの龍はすごくセクシーだ。 僕を抱く時。」  その太い腕にしがみついて礼於が甘えてくる。 「スグル、僕どうしたらいいかわからないんだ。 こんなに好きなの、伝わってる?」 もう、出会ってから随分時が流れた。未だに熱い想いをぶつけて来る礼於が堪らなく愛しい。 「私もだよ。礼於と出会えて良かった。 こうして二人で生きて行こう。」  強く抱きしめた。 「おはよう。出勤の時間だよ。」 ハジメとタカはそれぞれの職場へ出かける。  ハジメは出入国管理局の仕事で成田空港勤務だ。語学を活かして働いている。日本は難民に厳しい国だから、ハジメは彼らに優しくありたいと努力している。  タカヒロは博物館の学芸員になった。真面目な性格でコツコツ勉強してきた。  ハジメとタカと、二人でモデルの仕事をした事もあったが、今では遠い昔のようだ。なかなか人気があった。 「白薔薇」の千賀子さんたちが、時々写真集の話をする。またいつか撮りたいと。  みんな大人になり、月日は確実に流れて行く。 奥の御老人は相変わらず御老人のままだ。                  完

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