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第73話 奥とは?
藤尾は何を知っているのだろう。
「奥の御老人がよく言ってるんだが。」
何か、真相に迫る事が聞けるのか?
他に客はいない。藤尾と名都だけだ。
「よくフィクションでは、最後に謎は解き明かされて大団円となる。
でも現実はモヤモヤする事ばかりだろ。」
「謎ばかりで真相は闇の中、ですね。」
「それでいいんじゃ、と御老人は言っていたよ。」
奥とは?
それの明確な答えなど無い。脈々と繋がって来た生命の歴史か?偶然の出来事がずっと続いているだけか?
奥の御老人、などと言って、本当に存在するのだろうか?
数々の仮説を立てる事は、出来るだろう。
まずは、この世界を仕切っている存在。脆弱な政治などでは役に立たない。圧倒的な力を持つ、なんてあり得ない。無いと言う人には無いだろう。ある、と思う方が楽しい、と思うものには、ある。何事もそうなのだ。
否定的な意見には、じゃあ何故衆道が存在するのか問いたい。同性愛者は何故生まれるのか?
自然だからだ。必要だからだ。
その存在は必要だから存在する。誰に?何に?
そうでは無い。その存在が必要な物事はすべからく存在する。不要なものなど無い。傲慢になるべきではないだろう。存在には全て必然がある。
もっと言えばどんな生き物にも必然があって存在するのだ。生き物に限らない。
有機物も無機物も存在する必要があるから存在する。ちっぽけな人間の勝手な基準だけで善悪、要不要を決めてはならない。
「それでも、日々、悩み苦しみ試行錯誤する。
人間ってものは愛しいのぅ。」
「葛藤するのが尊いのじゃ。」
気が遠くなる程生きて、存在して、人類の、いや、生命の完成形なのか?
御老人たちの事だ。
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