2 / 3
何でもないことのように君が笑うから(中編)
「龍二が相手をしてくれないなら、僕ハッテン場に行って適当な男と寝るからね。僕も嫌だし凄く悲しいけど、龍二が僕の相手をしてくれないならそうする」
「そんなことをするのは止めろ、清春!!」
「それじゃあ、龍二が相手をしてくれるよね。僕をハッテン場なんかに行かせないで、龍二が抱いてくれるんだよね」
「きっ、清春。俺はまだ十七歳だ、未成年だぞ。手を出したらお前が犯罪者になる、そんなことはできないだろ?」
「ちぇ、そういえば龍二はまだ成人してなかったね。龍二の誕生日は三カ月くらい先だったよね、分かった。それじゃ、毎晩僕を抱きしめてくれるなら、三カ月だけ我慢してあげる。龍二、約束だよ」
「ああ、分かった。毎晩、清春を抱きしめて寝ればいいんだな」
清春は俺がまだ成人していなかったことを思い出して、とりあえずセックスするのは思いとどまってくれた。その代わりに毎晩一緒に俺が清春を抱きしめて寝ることを約束させられたが、いきなり兄だと思っていた清春を抱くことを考えたらずっとマシな話だった。俺はその間に清春をなんとか説得しようと思っていた、さっそく今晩一緒に寝ることになったが、清春は俺に抱き着いてくるだけじゃなくて俺を誘惑してきた。顔や首筋にキスをされたり、足で俺のものに刺激を与えてきたりした。そうして言うことは俺をいかに好きかということだった、清春は俺の耳元で囁き続けた。
「初めて御影池家へ来た龍二は五歳で可愛かったよね、僕は兄弟ができるって大喜びだったのに、母さんが龍二を離れにやったからがっかりしたよ。可愛い龍二を僕は一目で気に入ったのに」
「ああ、そうだったな。でもその後、離れまで清春が来てくれた。俺も兄弟ができて嬉しかった、それまではアパートの部屋に大抵一人で、いつ帰ってくるか分からない母さんを待ってたからな」
「僕たち母さんに隠れていっぱい遊んだよね、龍二がこの広い家を探検したいって言うから探検隊を作った。思い出すなぁ、龍二は無邪気で可愛かった」
「時々、お義母さんに見つかって怒られたり、二人で逃げたりしたな。清春は俺以外に好きな奴はいなかったのか?」
「龍二以外に好きな人なんていないよ、ふふっ、浮気の確認? だって金持ちのΩなんて無理やり抱いてしまえば自分のものにできる、近づいてくる男はみんな金目当ての嫌な人ばっかりだった」
「そんな男がいたのか!? 清春、よく身を守れたな。まさか無理やりとかされてないよな!?」
俺がそう言うと清春は嬉しそうな顔をした、僕の処女を心配してくれるのと言って頬が赤くなった。そうしてまた『キス一つだよ、龍二』と言うから、俺は清春が無事だったか心配で清春にディープキスをした、清春はうっとりとして何度も何度も俺にディープキスをさせた。そうしてようやく清春は自分は処女だと教えてくれた、中学校も高校も御影池家で働いている親の子どもに、清春は身を守っていて貰ったそうだった。俺はそれを聞いて安心したが、Ωというのは俺が思った以上に危険にさらされているのだと、俺が清春を守らないといけないと思った。
「うふふっ、僕が処女がどうか気にするなんて龍二は可愛いなぁ。処女じゃなくて使用済みだったらがっかりした?」
「お前を無理やり抱いた奴を、今更だけど殴りに行ったよ」
「ああ、やっぱり龍二が好きだ。僕のことを本当に心配してくれるのは龍二だけ、他の人は僕を御影池家の跡取りのΩとしてしか見ない」
「そんな!? 友達の一人もいなかったのか、小学校なら友達くらいいただろう?」
「僕のズボンを脱がそうとしてΩかどうか確認しようとするのが友達? 他はみ~んな僕のお金目当ての煩いガキだったよ、僕はほとんど小学校は保健室にいて女の先生と喋ってた」
「そうだったのか小学校が違っていたから知らなかった、Ωに対して他人はそんなに態度が悪いのか」
清春は嫌なことは忘れさせてと俺に抱き着いてきた、俺はもちろん清春を守るように抱きしめた。清春はそのまま大人しく寝てしまった、俺も炊いてある白檀の香りに包まれて眠りについた。清春の体温が気持ち良くて俺は夢も見ずにぐっすりと眠った、そうして朝になって起きると清春を起こした。お義母さんが亡くなったから、俺たちは一週間は忌引きで学校を休むことができた。だがその分の授業が進んでしまうので、俺は清春と一緒に勉強をした。清春は成績は普通だった、俺はテストはいつもほぼ百点で成績は良かった。
「やっぱり龍二はαなんだよ、愛人の子なんて関係ない。エリートなんだ、凄いね」
「そう言われると俺の努力が無いみたいじゃないか、俺は努力して成績を維持してるんだ」
「僕だって努力してるけど、龍二みたいにできないもん」
「すねるな、すねるな、清春は十分な成績だよ。大学も合格圏内だろ、良い成績じゃないか」
「そういえば大学!! 龍二はもちろん志望校を変えるよね!! だって地方の大学へ行けとか言ってた母さんはもういないんだから」
「そうだな、俺も清春と同じ大学にしようかな。この辺りでは一番偏差値が高いし、いろんな学科がある」
俺はお義母さんから地方の大学に行って、そのまま御影池家を出て行けと言われていた。でももうそんなことを言うお義母さんはいない、清春と同じ大学に行くのもいいなと思って俺は笑った。清春も嬉しそうに笑った、でもふと俺は清春と同じ大学に行ってもいいのかと考えた。清春に好きな奴ができたら俺は邪魔者だ、そう考えると同じ大学に行くというのもよく考えた方が良かった。悩み始めた俺を見て清春は俺をその場に押し倒した、そうしてまたディープキスを俺にした。前よりもエロくてヤバいキスだった、俺は思わず勃起するところだった。
「ぷはっ、清春。勉強中にこんなエロいキスは止めろよな」
「今、龍二は僕と同じ大学に行くか迷ったでしょ」
「うっ!! おっ、お前に好きな奴ができたら俺は邪魔者だって思って迷った」
「龍二ったら僕は十二年間も、龍二が好きだったの。今だって抱かれたいのを我慢してるの」
「新しく好きな奴なんかできないか?」
「もうどれだけ僕が龍二を好きか、証明してあげるからこっちに来て!!」
そう言うと清春は俺を自分の部屋のそのまた奥にある隠し部屋に連れていった、そこに行ってみたら俺は驚いた何百枚も俺の幼い頃から今までの写真が貼ってあった。清春と一緒に撮ったものもあれば、身に覚えのない隠し撮りもあった。それにモニターが置いてあって、離れの俺の部屋が映っていた。俺の生活は清春に筒抜けだったのだ、それから清春は上機嫌でDVDを見せてくれた。そこに映っていたのは離れの自室でオナニーをしている俺だった、清春はそれをうっとりした顔で見ていた。俺は背筋がゾッとした清春の俺への執着の強さに震えがきた、清春はこれで分かったでしょうと笑顔で俺に言った。
「清春、あんな映像!! 消してくれ!!」
「嫌だよ、僕の大切な龍二コレクションだよ」
「プライバシーの侵害だぞ!!」
「分かった、もし龍二より好きな人が出来たら消してあげる」
「絶対にその時は消してくれよ、清春!!」
「でも高校と家しか往復しない僕に、龍二より好きな人なんてできるわけないけどね」
清春はくすくすと笑っていた、嬉しそうに楽しそうに笑っていた。俺は清春が何でもないことのように笑うから、常識が麻痺しそうになった。俺は頭を振って考えを切り替えた、あきらかに清春のしていることは異常でおかしかった、清春を誰か常識があって安心して任せられるαの男を探す必要があった。でも俺にはそんな男を探す力が無かった、父さんに相談するかとも考えたが、そうしたら清春に待っているのは政略結婚だった。そんなことはさせたくなかったから、俺はどうしたらいいのか分からずに悩んだ。そうしたら清春がまたとんでもないことを言いだした。
「ねぇ、龍二。オナニーしてるとこ見せて」
「なっ、何を言ってるんだ。そんな恥ずかしいところ見せられるか!?」
「もうモニター越しには何度も見てるよ、でもやっぱり生で見てみたいんだ」
「嫌だ、そんなところは見せられない!!」
「……今度この辺りの上流階級の家の後継ぎを集めたパーティがある、そこでなら僕が気に入るαがみつかるかもしれない。ねぇ、龍二。オナニーしてるとこ、見せて」
「そのパーティに出てくれるんだな、分かった。オナニーしてるところを見せる、でも絶対にパーティに出ろよ!!」
そうして俺は清春の部屋のベッドで、清春にオナニーをしているところを見せることになった。俺はいつものように女の裸を思い浮かべようとした、そうしたら清春が服を脱いで俺の方を見ながら笑った。そして清春も俺の前でお尻の穴に指を入れてアナニ―を始めた、その光景はエロくて両足を開いてアナニ―する清春がすごく色っぽく見えた。俺は目を瞑って女の裸を思い浮かべようとしたが、清春がアナニ―しながら『龍二、ここが気持ち良いの』とか、『ここに龍二のものをいれてぇ』とか、『ああん、龍二の太いおちんちんが欲しいよ』なんて言った。俺は初めて女の裸じゃなくて、清春をおかずにしてオナニーをしていってしまった。
「龍二、気持ち良かった? 前はオナニーを週に二回はしてたでしょ。だから、週二回また一緒にオナニーしようね」
「こっ、今回の一回だけじゃあ!?」
「僕はオナニーしてるとこ見せてって龍二に頼んだ、龍二は見せるって約束したでしょ。だからこれから週二回は龍二のオナニーを見せて、今日みたいに僕のことを見て聞いていってみせて」
「そっ、そんなのはずるい!!」
「何がずるいの? 龍二、正当な取引だよ。ふふっ、パーティも楽しみだね」
「……ああ、分かった」
俺は清春が俺が思った以上に狡猾なので驚いていた、それに清春のアナニ―を見ていってしまった自分自身にも驚いた。清春のアナニ―は蠱惑的でいやらしく、俺は女の裸なんて思い浮かべることができなかった。だから清春の姿に興奮して俺はそれでオナニーしてしまった、俺にとっては衝撃的なことだ兄の清春をみてオナニーをするなんて、それから俺は清春を性的対象として見るようになってしまった。その後の週二回のオナニーの時には、今まで使ってたエロ本も持ち込んだ。でも俺は目の前の清春の姿に釘付けで、清春のアナニ―をみながらいってしまうようになった。
「龍二が見てるって思うとオナニーも楽しいよ」
「俺は楽しくない!!」
「嘘つき、こんなにいっぱい精液を出してるくせに」
「――――ッ!!」
「ああ、早く龍二に抱いて貰いたい、もう一カ月経った。あと二か月だね」
「分かってる、それでパーティというのはいつあるんだ?」
清春は忘れてた、準備しなくちゃと言いだした。そして清春や親父が使っているテーラーを呼んで、清春は俺と自分の新しいスーツを作らせることにした。パーティは一週間後だということで、俺はそこに清春が気に入るような、まともなαの男性がいることを祈った。清春はそんな俺を見てくすくすと笑っていた、俺たちはとっくに学校に行くのを再開していた。俺は放課後を図書館などで勉強して過ごした、少しでも清春と一緒にいる時間を減らしたかった。そうしないと俺はのみこまれると思った、清春の俺を思う愛情の強さにのみこまれて溺れると思った。
「さぁ、お待ちかねのパーティだよ」
「おそろいのスーツか」
「そうだよ、龍二は僕のパートナーだもの」
「変じゃないか、こんな服は気慣れていない」
「凄くカッコいいよ、龍二。僕、惚れ直しちゃった」
「清春も凄くよく似合ってる」
こうして俺と清春はパーティに行くことになった、俺はこんな集まりに出たことが無かったので、清春にどうすればいいのかを聞いた。清春は僕の隣にいればいいよと言った、それと俺はもう黒木龍二(くろきりゅうじ)に名前が変わっていた、御影池家から俺の戸籍を移して母親の黒木の性で作り直したのだ。でも母親と戸籍は繋がっておらず、俺の単独のものになっていると親父に聞かされた。さていよいよパーティだ、これで清春が気に入るような、まともなαの男が見つかれば良かった。でも、清春はパーティに参加してこう言いだした。
「本日はお招きいただきありがとうございます、僕は御影池清春、こちらは僕の婚約者の黒木龍二です」
ともだちにシェアしよう!