＊＊＊ 　宗太の猛りがぼくの内側をこすり、最奥を突く。 　そのたびに呼気とも声ともつかぬ喘ぎが、ぼくの口からすり抜けてゆく。 　感じやすいところをまさぐられ、せわしなく身体を繋げて。 　汗と、唾液と、精液とにまみれながら、もう何時間、セックスを続けているのだろう。それでもまだまだ足らなくて、こうして体を重ねている。 　宗太はぼくの実存を確かめるように、しっかりとした愛撫とキスを何度も繰り返している。だからぼくの肌には、水彩で描いた花びらのような赤みが散っていた。 　長時間、責めたてられ、その絶えまない打撃と快楽にぼくは意識が朦朧とし始めている。全身は疲労を覚え、かすかに痙攣さえ始めていた。それでもやめたくなかった。朝までセックスをし続けたいと願わずにはいられない。 　宗太の腰に絡みつけていた脚がずるりと外れた。 　それを宗太が両脇に抱え込み、下から尻をしたたかに押しつけながら、深く腰を入れる。ペニスの先がぼくの最奥を抜けた衝撃に、ぼくは首をのけぞらせて喉仏を震わせた。 「あ…っ」 　さらに力を加えられて埋められればもう、ひとたまりもない。アナルをひくひくと蠢かせながらぼくは、もう出るものも出なくなった幾度目かの射精をする。 「んぁ――――、あ――――、…――――、」 　深いアクメに視界が白み、失神寸前となる。 　宗太の手が伸びてきて、深く吐息するぼくの汗ばんだ額を、優しく撫でた。 「ごめんな」 　ゆっくりと弛緩するぼくに、ぽつりと言う。何が、という顔で、ぼくは宗太を見あげたのだと思う。 「自分を抑えきれなくなってる」 　激情を抑えられないほど求めてくれるのなら、本望だ。ぼくは薄く笑った。 「いいよ。もっとして。もっと、強く、突いて……。すごく、気持ちがいいから」 　ぼくへと渡されている部分は、確かに宗太のほんの一部分にすぎないけれど、それはなんて仮借なくぼくを苛(さいな)み、支配するのだろう。 宗太による被支配に、ぼくは恍惚となる。そうだ。誰でもいいわけじゃない。相手が宗太だからいいんだ。彼とのセックスは、いつだってぼくを天国にいるような気分にさせる。 　宗太の首に縋りついた。 「ね、もっと…、もっと頂戴…」 　もっとひどく、痛いほどえぐられたい。そうやって宗太から仮借なくセックスの跡を刻みつけられたい。 「かかえてよ、宗太…、ぼくの体、かかえて」 　ぼくのおでこにキスを落とし、ぼくの上体をかかながら宗太が上体を起したので、ぼくは宗太を跨ぐ形になって、その棍杭が鋭くアナルの奥へと挿し込んだ。 「く…っ」 　張り詰め、太さが限界に達したものを下からぐっと突きたてられて、ぼくは淫蕩な衝撃と快楽とにさらわれて、無残にわななく。宗太は激しく腰を使い、数度目かの精を放った。ぼくもイキっぱなしで、宗太の射精に追随するように再び果てた。 　すっかり脱力して、腕ひとつ動かせない。そんなぼくを宗太は布団の上に寝かせて、ペニスを留めたまま覆い被さってくる。 　そうもするとぼくは、カエルみたいな格好になるのだけれど、大好きな人の重みに包まれるのはこの上もない至福だ。汗で密着する皮膚の感覚も最高に幸せだった。 　宗太が出て行ってしまうのが惜しい。でも疲労困憊のぼくの状態から、これ以上は無理だと判断したのだろう。 「そう、締め付けるなって」 　ペニスを抜きながら、宗太が困った声を出す。 「だって、あんたが出ちゃうの、嫌なんだよ…」 　長時間、宗太のペニスを咥えていたのに、まだ名残惜しい。宗太が出てゆく瞬間、ぼくはなんとかして口をすぼめようとする。それを毎度のように笑われてしまうのだ。 　ぼくの泣き言に「かわいい」と呟いてから、ぼくの胸元に顔を埋めてくる。喜びの鼓動を打ったぼくの心音が聞こえただろうか。 「気持ち良かった」 「うん…ぼくも」 　ときめいて、じんとくる。ぼくへかかる重みが増し、宗太が眠りに落ちる寸前みたいに弛緩したのが分かった。 　また、ぼくの胸の中の小鳥が鳴く。大好き大好きと囀る。 　なんで、こんなに彼が愛おしいのだろう。 　なんで、この人じゃないとだめなんだろう。 　髪に指を差し入れ、幾度も梳いた。さらさらと快い。可愛い。なんだか、赤ちゃんを抱いているみたいだ。女の子の母性本能ってこんなのかもしれない。 「ぼくもすごく気持ちよかったよ」 「うん」 　大きな掌がぼくの肩を愛撫して、腕へとゆっくりとおりてゆく。それでぼくの存在を確かめて、安心するみたいに。ぼくはそれを労わり、慈しみ、いとしむ。 「今週末は、どこかに出かけられるといいな」 　しばらくして興奮が凪いでいった後で、ぼくの胸に頬を埋めたままで宗太がポツリと呟いた。 「いいね。唯輔も一緒に」 「そうだな。――悪いな、佳樹。本当は、二人だけでデートしたいところなのに」 　沈んだ口調になる。ぼくはなけなしの理性を引っ張り出して元気に答えた。 「いいよ。他の人が加わるのも楽しいよ」 　ぼくに申し訳ないことをしていると、宗太は苦しんでいた。そんな罪悪感をこれ以上深めて欲しくない。