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嬉しい報告

「すぐにお薬をお届けします」 そう言ってイシュメルさんは寝室を出て行った。 寝室の扉がパタンと閉まった途端、ルーファスさんの大きな身体に抱き込まれた。 「レンっ! ここに残ると言ってくれてありがとう! 私は本当に嬉しかった」 「僕も……ルーファスさんの気持ちを知れて嬉しかったです」 「レンを絶対に不幸にはしないと約束する。一生レンだけを愛し続けると誓うよ」 「あの……ひとつだけ聞いてもいいですか?」 「ああ、なんでも言ってくれ!」 「ルーファスさんにも、もしかしたら……その……側室さんとか、いらっしゃるんですか? いるんだったら、僕……」 「な――っ、いるわけないだろうっ!!! 私は成人前にこの指輪を父上から与えられてからずっと、将来の伴侶に誠実でありたいと思って生きてきたんだ。私は口付けも全てレンが初めてだし、これから先レン以外のものと身体を繋げるつもりもない。信じてくれるか?」 ルーファスさんは本当に僕が欲しい言葉を本心で言ってくれる。 本当に僕だけを愛してくれるんだ……。 心の中が嬉しい気持ちで満たされていく。 「よかったです……僕、ルーファスさんを誰かと共有なんてしたくないから」 「ああっ! レンっ! 大丈夫、私はレンだけのものだ! 死んでもレンから離れたりしないよ」 「ふふっ。じゃあ、寂しくないですね」 僕が笑顔を見せると、ルーファスさんは嬉しそうに僕を抱きしめた。 その優しい抱きしめ方が心地良くて、すごく安心する。 ああ、やっぱり僕たち離れてちゃダメなんだな……。 「レン……体調が良さそうなら、レナルドとクリフに正式にレンが私の婚約者となったことを伝えたいのだが……」 そうだ。 レナルドさんも、クリフさんもずっと僕の気持ちを汲んで待っていてくれてたんだっけ。 「はい。ゆっくり休んだので大丈夫です。お二人に会わせてください」 「では、あちらに連れて行こう」 僕をそっと抱き上げると、寝室を出てリビングのソファーへと座らせてくれた。 そして、机の上に置かれていたベルをチリリンと鳴らすと、すぐにトントントンと扉がノックされた。 えっ? こんな小さな音が聞こえるってどんなシステム?? この音だけが聞こえるの? それともここで話したことは全て筒抜けとか? いやいや、王さまの部屋なのにそれはちょっとセキュリティ上の問題があるよね? 大体そんなに声が聞こえるなら、その……えっちするとか恥ずかしくてできないんだけど……。 流石にこんな豪華な部屋なのに壁が薄いとかないよね? じゃあ、やっぱりこのベルの音だけが聞こえるとか? うーん、でも普通のベルっぽかったけどな……。 ここで悩んでいても仕方がない。 後でルーファスさんに聞いてみようかな……。 最悪、防音対策してもらうとか頼んでみよう。 僕が考えを巡らせている間に、ルーファスさんがクリフさんとレナルドさんを部屋の中へと呼んでいた。 「ルーファス、ああ、レンくんも一緒か。それでイシュメルの見立てはどうだった?」 「ああ、食事量は気にせず、食べたいときに食べたいだけ食べさせるようにということと、睡眠をよくとるようにと言っていた。クリフ、あとでイシュメルから薬が届くから、届いたらすぐに持ってきてくれ」 「承知いたしました」 「それから、二人に大事な話がある」 ルーファスさんの真剣な表情に、部屋の中に緊張が走った。 レナルドさんもクリフさんもただ何も言わずに黙ってルーファスさんを見つめている。 ルーファスさんはふぅと深呼吸してゆっくりと口を開いた。 「レンが……ここに残って、私の伴侶になってくれると誓ってくれたのだ」 「――っ!!!」 「 本当かっ?!」 「ああ、私たちは晴れて正式な婚約者となった」 「ああ――っ!! なんと嬉しい知らせでしょう!!! レンさま!! ご決断いただき本当にありがとうございます!!!」 目にいっぱい涙を溜めて、僕に頭を下げるクリフさんを見ていると、なんだか僕も目が潤んできてしまう。 「クリフさん……決断するまでに時間がかかってしまって……心配をおかけしてしまいましたよね。お待たせしてしまってすみません」 「何を仰るのです!! レンさまがお悩みになって当然でございます。ですが、本当に……ルーファスさまのおそばに残ってくださってこれ以上嬉しいことはございませんっ!! ああっ、本当になんと嬉しい日なのでしょう……」 「クリフ……嬉しいのはわかるが、いい加減落ち着け。レンが驚いている」 「私としたことが……申し訳ございません。あの、それでは正式にルーファスさまがご伴侶さまをお迎えになるとお知らせしてもよろしゅうございますか?」 「結婚式はひと月後にするように。それ以外はクリフ、お前に全て任せる」 「承知いたしました。それでは私は失礼いたします」 クリフさんは僕たちに頭を下げ、嵐のように去っていった。 「ははっ。クリフの喜びようを見たか?」 「ああ、あれもずっと待っていたからな。やっとその日が来たと思って嬉しいんだろう」 「それにしてもレンくん、よく決断したね。もう少し時間がかかると思ったけど……」 「ルーファスさんが……僕のことを心から愛してくれているってわかったので。離れたくないなって思ったんです」 「――っ! レンっ!!」 「わぁっ!!」 嬉しそうな笑顔を浮かべたルーファスさんにぎゅっと抱きしめられて、僕は驚いてしまったけれど、でも……こんなに喜んでくれるなら、本当に決断できてよかったと思う。

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