1 / 13
第1話
気がついたら、真っ暗な部屋で寝そべっていた。
頭が重く、意識が浮遊感に魘われる。
意識はあるが、何故か手足が痺れて動かない。
「あぁ゙……」
掠れてはいるが、一様声は出るようだ。
「だ、れ゙か……居まッせん……かッ」
この状況を打破する為、途切れ途切れだが精一杯の声を絞り出す。が、返事は返ってこない。
視界の端で、蝋燭の光が辛うじて此処が和室だと認識させる。
此処は何処だろう────?
見知らぬ場所で、目を覚まし。
暗い部屋で、呼び掛けにも応答されず、身体も動かないうえに、一人ぼっち。
せめて身体が動けば……。そんな事を思っていると。部屋の隅に置かれた蝋燭台の蝋燭が、ゆらゆらと揺れだす。
目線だけそちらに向けるといつからか、隣の襖から一筋の柔らかい光が漏れていることに気づく。
誰か居る──!?
考えるより先に、口が動いていた。
「誰かッ……いま、せんかッ………」
必死に声を掛けるが返事は返って来ず、代わりに奇妙な音が聞こえてきた。
「……、…………」
耳を澄ますが、あまりにも小さ過ぎて聞こえない。
「………ッ、………………」
微かに聞こえた音は、《《誰かの声》》の様だった。
(やっぱり人が居る‼)
期待に胸を膨らませ、もう一度口を開き掛け思い止まる。何故?それは少しづつ声の正体が分かりだしたからだ。
「あぁ゙……、あッ……ン゙ンッ」
上擦った声が、妙に色っぽい。
「あッ……ン゙!あぁ゙ぁ゙………………ッ‼もっとッ!もっと下さいッ…」
喘ぎ声が段々激しくなるとやがてもう一つ、声が加わった。
「ほっほっほっ。厭らしくワシのちんぽを旨そうに咥えおって。可愛い奴じゃのぉ」
嬉しそうな声と、「何がもっとだ!欲しけりゃ自分で突っ込んで腰を振れ」や「コッチがお留守じゃな!よしよし。俺が可愛いがってやろう」等、聞こえるだけでも複数居るようだ。だがどれも聞くに耐えられない程の言葉の数々に耳を塞ぎたくなった。
嗚呼、せめて。腕だけでも動かせれば耳を塞ぎ、この不快な声を聞かずにいられるのに。ああ、気持ち悪い───…。
夢なら早く覚めて、そう思う程に底気味が悪かった。
「あぁ゙ぁ゙あああぁ‼‼」
突如、断末魔のような嬌声が部屋に響きわたる。
驚きに息を呑み、唇を噛んで震える。
……。
数秒、辺りが静かになるり。やがて誰かがぽつりと呟く「コレはもう駄目じゃな…」だと───…。
また、暫く無音の空間が続き。段々怖くなり固く目を瞑った。さっきの人は大丈夫なのだろうか。アレっきり嬌声した声はおろか、誰の声も聞こえてこない。緊張から嫌な汗が流れる。
不意に好奇心から、もう一度目を開けてみることにした。
ゆっくりと…瞼を開く。
相変わらず眼の前の景色は変わらず、真っ暗なままで。目の端に蝋燭台が────……。
目が合った。人を値踏みする様な不愉快な目。
「みいつけた…」
ともだちにシェアしよう!