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第2話

「うわああぁ゙ぁ゙‼‼」 その一言を口に出すのに相当な時間が必要だった。 人間、驚き過ぎると声も上げられないと言うのはホントの様だ。震える手で、天井に向かって手を空かして見る。(ここは、自分の部屋…) 目が覚めるとそこは見慣れたいつものベッドの上。 時刻は分からないが、カーテンから差し込む光は明るかった。一度身体を起こす為、上半身を起こした時だった。酷い激痛が、頭を響いた。 「いッッ…‼」痛みと共に、呻る。 (何だこの痛みは……)俯き、痛みを耐える様に頭を抱える。数秒それが続くと、突然スゥ…と痛みが和らぐ。 「ハァ…ハァ……」 荒い息遣いが静かな空間を支配する。 震える手で、ベッドの横に置かれたサイドテーブルに手を伸ばす。見ずに取ろうしたせいで、誤ってスマホを落としてしまった。 ガタッと大きな音が響く。 (あ…、ヤバい)何故か無意識にそう思ってしまった。 ここは自分の部屋で、夢に出たあの場所では無い……のに。震える手を床に伸ばす。ゆっくりと、ゆっくりと。時間を掛けて、音を立てない様に手を伸ばす。 ギシッ…。ベッドの軋む音。それすら今は怖かった。 このまま落ちたスマホを拾うか躊躇して、伸ばした手が止まる。(大丈夫、大丈夫。ここは自分の部屋)そう言い聞かせてもう一度手を伸ばす。 後ちょっとで手に届く所で、突然部屋のドアが開いた。 響介「何してんだ、らい?」 そこに立って居たのは、幼馴染の響介だった。 驚いたのか、目を丸く突っ立ている幼馴染。驚くと、大人びたその外見も年相応に見えるんだな。なんて呑気に考えられる程には少し余裕が出来た様だ。 お互い無言のまま。一度視線を交わした後、響介が「ほんとにどした?」って再度聞いてきた。 俺は正直に「自分が何をしていたか思い出せなくて少し放心状態になってただけ。……なんか、途轍もなく怖い夢を見た気もするけど、中身はまったく覚えていない。けど凄く恐ろしい夢を見た気がする…」と言ったら。 響介「怖い夢?そっか。ソレはすげーやな夢だな」 って、いつもの優しい笑みを浮かべてくれた。俺はその笑みのお掛けで、ほっと息をつく事ができた。 「あぁ、ごめん ごめん。心配かけちゃって」 力なく笑う俺に、響介は気を遣う様に「無理すんなよ」って言いながら俺のいるベッドに近づいて来た。 「分かってる。ありがとな」 響介がベッドに腰掛け俺の顔を覗き込んむ。 思いの他、顔が近くて俺は少し恥ずかしくなった。 (コイツのこういう距離感の近さに驚かせぱなしだ)まぁもう大分慣れたけど。 響介「熱は?」 「ククッ お前はオカンか」 心配そうな顔をするから何だと思ったらまさかの熱は?ってww 響介「オカンで結構~。俺はただ、お前が顔面蒼白してたから心配しただけだつーの。バーカ」どうやらいじけたらしい…。プイとそっぽを向く友人を見て俺は可笑しくなった。 「はいはい。ありがとうね~響介。お前くらいだよ、俺の心配をしてくれる奴は」冷やかす様に笑みを浮かべると、不満そうな顔をされた。 響介「馬鹿にするな。俺だって心配くらいする」 「そうかいそうかい。わかったよ」 手をひらひらと振りながら応えると、更に不満そうな顔をされた。響介がこの顔をするときは決まって俺を馬鹿にする時だ。こいつのこんな顔を見るのが実は俺は好きだったりする。 響介「……今変なこと考えただろ?」 「いいや?なんにも?」 そんな下らない話をしている間に突然響介が「あ、そう言えばお前大丈夫だったのかよ」って聞かれて、「は?何のこと?」と聞き返す。 すると「お前昨日、すげー飲み過ぎたから二日酔いになってないかと思って心配して来たんだよ」とこぼした。 (あぁ、だから朝起きて頭が痛かったのか…)なる程なる程って一人で納得する俺に、追い討ちをかける様に響介が「でもあれは面白かったな~。お前が途中でゲロったのはww」。 (は?いつ?昨日?) 「は?俺が?ゲロった?」 響介「うんうん。途中でトイレに行くとか言って、フラフラなのに一人でトイレに行くから、心配になって俺も一足遅れて迎えに行ったら、お前知らない奴に介護されてたぞww」 (いや、響介。笑えない。ソレは絶対笑えないヤツだから。wwじゃあねーから!) 「は?意味分かんね。介護って誰に?」 響介「だから知らない奴だって。俺は見たことねーな。知り合い?」 「いや、覚えて無い。つーか、ソイツその後どうしたの?」 響介「ん~?あぁ、何か俺が来たら知らない奴が「ああ、この人今すっごい気分が悪いみたいだから今日はもう帰った方が良いよ」って言ってきた」 「へ~、それから?」 響介「んで、お前を見たらさっきみたい顔面蒼白してたから、俺も流石に焦って酔いが冷めたわ。まぁ、後はお前を家に連れて帰って、俺も帰ろうと思ったけどちょっと心配だったから家主に許可取らずに勝手に泊まらせてもらいました。因みに、お前ん家のソファーで寝かせてもらったわ~ww」 「ソレは別に良いけど、お前ソファーで寝たのかよww」 響介「だって、ソファーしか無いじゃん寝るとこ」 「あぁ、そうだったなww」 響介「でも、あのソファ座り心地めっちゃ良い!」 「それは良かったなww」 そんな会話を交わしながら俺は気づいた。 「今何時?」 響介「あぁ……今は────…⁉ごめん、俺ちょっと時間過ぎてたわ!」響介は自分の腕時計を見るや否や、慌てて立ち上がった。 響介「もうこんな時間か……ごめんもう帰るわ」響介は俺にそう言うと、玄関の方へと歩き出す。が、急に立ち止まり、「はい」と何かを渡される。手には俺のスマホが握られていた。 「あぁ、ありがとう」渡されたスマホを受け取り礼を告げる。が、よっぽど急いでいるのだろうスマホを渡すとそそくさまた玄関へと歩き出した。俺も何となく付いて行く。 ……。 「……今日はありがとな」 玄関につき、出ていく響介にもう一度礼を告げる。すると響介の表情はとても穏やかに笑って「じゃあまたな!」それだけ言い残すと、バタバタと部屋を出て行った。(騒がしい奴) 相変わらず元気なようで何よりだと、俺は呆れ半分に笑うのだった。 気分転換に少し外の空気が吸いたくて、ベランダに出る事にした。四月の昼間にしては、まだ少し肌寒くて薄着で出た事をちょっとだけ後悔した。 「寒ッ……」 頬を撫でる風が、肌寒くて思わず身震いする。 (やっぱり部屋に戻ろう) 思ったより外が寒くて、直ぐに部屋に戻った俺は少し腹が減ってきた事に気づく。 「何か食いもんあったかな…」 冷蔵庫へと向かい、冷蔵庫の中身を物色する。 コレと言った食べ物も無く少し腹がひもじい…。 (コンビニにでも行くか)と思い立ち、出かける準備をする事にした。まずは上着と財布、それからスマホと家の鍵。それらを手に取りポケットに突っ込む。 準備も整い、玄関から外へ出る。やっぱり外は一段と寒い。 「寒ッ……」 身震いしながら、エレベーターに乗り込む。 ボタンを押して下に降りる。 エレベーターの浮遊感を感じながら一階に着いた。 ポーン(開く音) エレベーターが開き、エントランスをくぐり外へ出る。 ポケットに手を突っ込み近くのコンビニへと歩き進む。途中で、お鍋の絵が載った旗をみて「あぁ、一人暮らしでなければなぁ」とか思ったりした。 正直鍋とかカレーとか、一度作ると次の日も強制的に同じモノを食べないといけないと思うと、どうも作りたくなくなる。 (正直作るのも、めんどいとか思ったり) ははは…。俺って結構ヅボラだったりして…。 そうな事を考えていた俺は、後ろから来る気配に全く気づかなかった。 ガンッ‼鈍い音と共に、俺の頭を殴られた衝撃で、俺の意識が、完全にシャットダウンした。 (誰だよ、俺の頭を殴った奴…)

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