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ごめんね、ほんとの僕は『親友』じゃない(前編)

「おらぁ!! αのくせにネチネチΩいじめてんじゃねーよ!!」 「本当にΩをいじめるなんて、構って欲しい小学生みたいだね」 「す、すいません!!」 「俺らじゃなくて、いじめた奴に謝れ!!」 「謝る相手も分からないのかな?」 「ひぃ!? すっ、すみませんでした!!」 「あっ、逃げやがった。くそっ、まだ殴りたりねぇ」 「そのくらいにしておきなよ、光一」 「――――――――ひぃぃぃ!!」  俺の名は望月光一(もちづきこういち)、Ωで可愛いものが大好きな十七歳だ。Ωであると喧嘩を売られることも多いが、俺は売られた喧嘩は買う主義だ。今日も可愛いΩが通りすがりのαに、いじめられていたからその喧嘩を買った。俺と一緒に喧嘩したのは山宮純也(やまみやじゅんや)、αで正義感が強くていじめなんかを許せない俺の良い親友だ。俺たちは背が高く二人とも百八十センチほど身長がある、俺たち二人に喧嘩を売ってきて勝てた相手はこの辺りにはいなかった。いじめられていたΩは同じ教室の小林涼(こばやしりょう)、俺は彼に優しく声をかけた、純也はやじうまたちを追い払っていた。 「おう、小林。大丈夫か? お前は相変わらず背が低くて可愛いな。よしよし」 「はいはい、やじうまさんたちは散って、今回は災難だったね。小林くん」 「たっ、助けてくれてありがとうございました!!」 「おお、小林の髪の毛ふわふわだ」 「光一、勝手に人の髪に触れるんじゃない。ごめんね、小林くん。こいつ、悪気はないんだ」 「いいえ、本当に助けてもらって感謝してます!!」 「小林に比べると純也の髪ってサラサラだな、俺のくせっ毛とは大違いだぜ」 「光一、僕の言ったことを聞いていなかったのかい?」 「あのお二人にお礼がしたいです、明日の放課後に軽食でも奢らせてもらえませんか?」 「あっ、俺はパス。明日の放課後は補習なんだ」 「僕も図書室で勉強しようと思ってたから、そんなに気にしなくていいよ。小林くん」 「そっ、そんな。申し訳ないです」  俺は本人から聞いて実は知っているのだ、この可愛い小林涼は純也のことが好きなのだ。だから俺は二人の接触のチャンスを作ってやろうとしたが、純也は勉強が大好きだから駄目だった。小林の方を見ると涙目で兎のようにぷるぷる震えていた、はっきり言って可愛いそして可愛いは正義だ。でも二人の仲を良くすることは俺にはできず、暗くなってきたので皆で帰ることにした。小林は純也に一生懸命に話しかけていた、純也も優しい奴だから笑顔で話を聞いていた。純也は御曹司なのに婚約者がいなかった、だから小林にもチャンスはあるのだ。けれど、何も起こらず小林の家についてしまった。小林は俺たちにお礼を言って、可愛くペコリと頭を下げると家に入っていった。 「なぁ、純也。鈍い俺でも気づいてるんだけど、鋭い純也は気がついてねぇの?」 「ふぅ~、ああ。小林くんの僕への好意だろ、実ははっきり言うと迷惑なんだよね」 「そうなのか!? あんなに可愛い兎みたいなΩでも、お前の好みじゃないのか!?」 「僕はそのっ、カッコいい系が好きなんだ。自分で立って、しっかりしている人が好きなんだ」 「そっか、それじゃそんな子を探すのって大変だな。Ωって大抵は皆が可愛いじゃん」 「そうとも限らないよ、光一みたいにカッコいいΩだっているじゃない」 「あはははっ、俺はカッコいいというより、ただ大きくていかついんだよ」 「……光一は十分にカッコいいよ」  そうして俺の家についたので純也とは別れた、俺は狭いアパートの一室に入っていった。俺には家族はもう一人もいない、祖父母は早く亡くなったらしいし、中学校の時に両親は事故で亡くなった。不幸中の幸いで両親がしっかり保険に入っていたので、俺は何とか一人暮らしができているのだ。親戚もいなかった、俺は天涯孤独というやつだった。でもまぁ何とか生活できるだけの金はある、それに体も健康で丈夫だった。ヒートというのが偶にきて面倒だが、俺は抑制剤と相性が良くて薬を飲めば、ほとんど普段と変わりなく過ごせた。そんな俺に電話がかかってきた、純也からだったので出た。 『純也か何か用?』 『光一、やはり僕の家に一緒に住まないか?』 『ああ、何度も聞いた下宿ってやつか。でも一人でも不自由はないしな』 『光一を一人にしておくと心配なんだ』 『よりによって、俺を襲う奴はいないさ』 『何があるのかは、誰にも分からないだろう』  こうやって俺の親友の純也は俺の心配をしてくれるいい奴だ、だが純也の好意に甘えすぎてはいけないと俺は思っていた。そんな話をしていたらだ、何だか焦げ臭い匂いがどこからかしてきた。俺は純也との電話を終わらせて、貴重品だけ持って外に出た。そうしたら俺の住んでいるボロアパートが燃えていた、慌てて携帯で消防に電話すると、あっという間に消防車がきた。そうして消化活動をしてくれたが、俺の部屋まで炎は押し寄せアパートは全焼してしまった。俺は火災保険とかの手続きは明日することにして、他に頼れる者がおらず純也に電話をかけた。 『光一か、こんな時間にどうした?』 『あの、悪いんだけど純也。今日、泊めてくれないか?』 『すぐに車で迎えに行く、何が遭ったんだ?』 『アパートが燃えた』 『はぁ!? こっ、光一は無事か? 怪我はしてないか?』 『俺は変な匂いがして、すぐに家を出たからセーフ』  それからすぐに純也が車に乗って迎えに来た、俺は思わずありがとうと純也に抱き着いてしまった。純也はそれで驚いてしまったのか硬直してしまった、百八十センチをこえる男からのハグはまずかったかと俺は思った。それでも純也はすぐにいつもの純也に戻り、俺のことを快く泊めてくれることになった。純也の車で行った山宮家は相変わらず広い屋敷だった、俺は何度か遊びに来ていたが本当に広い家だなと思っていた。山宮家では丁寧な歓迎を受けた、使用人の人たちが次々と挨拶をしてくれた。純也のお父さんとお母さんも出てきて、いつまででもいるといいとまで言われた。 「純也、ありがとな。明日からはホテルにでも泊まって、また住むところを探すよ」 「何を言っているんだ、父と母が言っていただろう。光一はここに僕と一緒に住むんだ」 「そんなこと言ってたっけ? いつまででもいてもいいとは聞いたけど?」 「あれは僕と一緒にこれから住めということだ、嫌だとは言わせない行くところないだろ」 「そんなにお世話になったら申し訳ないな、でも正直なところ助かる。ありがとな、純也」 「僕は当然のことをしているだけだ、それに僕にとっても良いことがあるんだ」 「そうなのか?」 「ああ、そうだ」  そしてとりあえず今夜は純也のベッドに二人で眠ることになった、キングベッドで俺たち二人が寝ても十分な広さがあった。どうしてこんなに純也が使うベッドが広いのか、俺は不思議に思ったが広い方がいいのだろうと、深く考えずに風呂を借りることになった。純也の部屋には個人用の風呂とトイレまでついていた、さすがに普通のサイズのお風呂場だが、俺が使うには十分すぎるくらいだった。そうして風呂に入っていて、俺は重要なことに気がついた。貴重品しか持ち出せなかったから着替えが無いのだ、だから俺は借りたバスタオル一枚の姿で、俺が出るのを待っている純也のところに出て行った。 「純也、悪いけど着替えも何かないか?」 「……綺麗だ」 「おい、純也。聞いてるか、それとも着替え無い?」 「少し待て用意させる、ベッドにでも座ってろ。こっ、光一は綺麗に筋肉がついているな」 「ああっ、毎日家でできる筋トレしてたからな。大丈夫か、純也。顔が真っ赤だぞ」 「なっ、何でもない。ちょっと部屋が暑いだけだ」  俺はタオル一枚の姿でキングベッドに横になってみた、さすがに広いベッドで寝心地も良さそうだった。そんな俺を呆れた様子でじぃっと純也が見ていた、俺が動くたびに視線が追いかけてきた。そうしてしばらくしたら使用人の人が着替えを持って来た、純也がそれを受け取ってすぐに出ていくように言っていた。俺は着替えを貰ってその場で着替えた、ちょっと薄目の真っ白なシルクのパジャマだった。俺は着替えの代金は火災保険から払うと言った、それは他の人用だったもので純也は気にしなくていいと言った。 「それじゃ、純也。俺と一緒に寝る?」 「ああ、そうする!!」 「どうしたんだ、なんか気合入ってるな」 「なっ、何でもない、ちょっと緊張してるだけだ」 「あはははっ、俺と一緒に寝るのに緊張する必要はないだろ」 「こっ、光一は緊張しないのか?」 「純也とは学校でいつも一緒にいるし、それで慣れてるから平気」 「そっ、それじゃ一緒に寝よう」  俺は火災保険の申し込みとかいろんな考えるべきことがあったが、キングサイズのベッドは柔らかくも良い寝心地ですぐに寝てしまった。誰かが俺の腕や足それに唇に触れる気配があったが、純也が寝返りでもしたのだろうと、俺は気にせずにぐっすりと眠った。そうして翌朝目を覚ましたら、俺は純也に抱きしめられていた。ちょっと抜け出そうをしてみたが、純也は俺をしっかりと抱きしめていた。だから俺は純也が起きるまで待った、もしかすると俺の寝相が悪かったのか、パジャマのボタンが三つも外れていて俺の胸が丸見えだった。しばらくすると純也は目を覚ました、そして俺のことを見てこう言った。 「これは夢か?」 「純也、現実だよ。昨日、一緒に寝たじゃないか」 「ああっ!? 抱き着いてすまない、俺は眠る時に何かに抱き着く癖があるんだ」 「あはははっ、それじゃ俺は純也専用の抱き枕だな」 「せっ、専用」 「どうした、純也。また顔が真っ赤だぞ、この部屋が暑いのか?」 「何でもない大丈夫だ、それじゃ朝食を食べに行こう」 「ああ、分かった」  そうして俺は山宮家の家族に混じって朝食を頂いた、突然ころがりこんだ俺に山宮家の人たちは好意的だった。特に純也のお母さんとお父さんはにこにこしていて、嬉しそうに俺と純也を見ていた。さすがにお金持ちだけあって朝食も品数が多く、ご飯のお代わりも何回でもできた。俺はそれに甘えて何度かご飯をお代わりして食べた、純也も俺と同じくらい食べていた。高校生の男なんてこんなものだ、俺たちはいくら食べてもお腹がすく年頃だった。そうして俺たちは学校に行くことになったが、珍しく純也は車で学校に行くと言った。 「いつもは歩きなのに、純也が車を使うなんて珍しいな」 「ああ、もうお前のアパートに寄る必要はないからな」 「え? もしかして俺のために、純也は車を使わなかったのか?」 「そうだ、光一と話をしながら歩きたくて、車は使ってなかった」 「そっか、俺と話すためか。純也はやっぱり俺の親友だな」 「ああ、そうだ。だから親友が困っているのを見捨てないからな」 「うん、分かった」 「分かっているならいい、光一はこれからは山宮家に住むんだ」  俺は次のアパートが見つかるまでだなと思って、純也と一緒に住むことに同意した。純也は嬉しそうにしていた、何か良いことがあったのかもしれなかった。そうして俺たちは車で学校に登校した、俺たちが一緒に車から出て校門にはいると、きゃあきゃあという女の子の声が聞こえた。純也はαで御曹司だから、その純也を狙った女の子たちの声だった。純也は女の子からいろいろプレゼントをされそうになって、それを笑顔で丁寧に断っていた。中には俺にもプレゼントをくれる女の子がいたが、純也がやっぱり丁寧に断ってくれた。 「ああいうプレゼントには、何が入っているか分からない」 「そうなのか、例えば?」 「ぬいぐるみなどには盗聴器やカメラが、食べ物には薬が入っていることがあった。だから光一、お前も女の子のからの贈り物は受け取るな」 「そうだな、今は俺は山宮家にいるんだもんな。盗聴器やカメラなんて持って帰ったら困るな」 「お前は可愛いものが好きだからな、ぬいぐるみなんかいくら可愛くても受け取るなよ」 「ああ、分かった。ここは自室じゃないから気をつける、そういえば純也がくれたぬいぐるみも燃えちゃった。残念だ」 「新しい物をまたプレゼントする、だから気にするな。光一」 「そんなに貰ってばかりだと悪いからいいよ、純也」  俺はそう言って純也からのプレゼントを断ったのだが、山内家に帰るとすでに可愛くて大きな熊のぬいぐるみが置いてあった。俺は一目で気に入って、その熊さんを抱きしめた。そして純也にお礼を言った、結局そのまま俺は山宮家にお世話になることになった。俺はせめて食費としていくらか渡そうとしたが、笑顔で断られて誰にも受け取って貰えなかった。そうして一緒に住みだして一週間が経った、俺は相変わらず純也の部屋に住んでいた。すると純也ともほぼ二十四時間いるわけで、ある問題に直面することになってしまった。オナニーをどこでしたらいいのか、俺には分からなかったのだ。 「なぁ、純也。俺さオナニーがしたいんだけど、どこでしたらいい?」

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