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煌めくルビーに魅せられて番外編 吸血鬼の執愛

 瑞稀は吸血鬼の姿をしている俺に、綺麗な眼差しをまっすぐに注いで言ってくれた。 『桜小路さんがこうして傍にいるだけで、ドキドキしています。もしかしたら、好きになっているのかもしれませんっ』  この姿で告白されるなんて、夢を見ているようだった。  人間の姿と吸血鬼の姿を併せ持つ俺は人外で、吸血鬼のときの自分を隠さなければと、今までは嘘をついて生きてきた。  親しく付き合った恋人に吸血鬼の姿を見られた際は、催眠の能力を使い、自分を見たことをすべて忘れさせた上で、その後交際を断った。ほかに好きな人ができたという理由をつけて、徹底的に距離を置き、好きになった気持ちを無理やり捨て去ることをした。  その行為に疲れ果てた結果、3年前から恋人を作らなくなった。その代わりに、楽しいなにかを模索すべく、今度は美味しい血を持つ人間探しに夢中になった。  月一におとずれる吸血衝動の際に、老若男女の血を吸って、それぞれの味を堪能する。  子どもの血は、青みがかった薄い味わい。年寄りはいろんな味が合わさっていて、複雑な感じだった。そこから年齢と性別をどんどん絞り、俺が美味いと感じる血は、20代前後の童貞男性というのを導き出した。  童貞か否かの判断は、体から放たれるフェロモンで判断できた。吸血鬼になると視力や嗅覚などの身体能力が格段にあがり、ターゲットを探すのに役に立つ。  瑞稀と出逢ったあの日は、なかなか童貞男性を見つけられなくて、夜遅くまであちこちを徘徊。そのおかげで、彼と運命の出逢いを果たすことができたんだ。

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