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「これで……、種族関係なく、弱者に手を差し伸べ、皆で協力し合って、本当の『争いのない世界』が出来るわ! 私一人では無理だと思ったし、強い味方がいないと。ねっ、魔王?」 「我がいなくても、お前は強いから、やっていけるだろうに……」  レフィーナが無邪気に笑うと、魔王が鼻で笑った。  しかし、そんな二人は大事な事を忘れていた。それは、禍々しい漆黒の長剣の存在だった。  レフィーナは両手を広げ、魔王に抱きつこうと駆け寄ろうとした時だった。何処からともなく漆黒の長剣が姿を現し、レフィーナの胸元をめがけて、風を切るような速さで飛んでいった。 「――っ! 危ない!」  魔王が大声で叫び、レフィーナに防御魔法を施そうと思った時には、漆黒の長剣はレフィーナの胸元に突き刺さり、その場に膝から崩れ落ちた。 「うっ! たとえ契りを交わしても、使用者は私な訳だし、これが報いよね……」  レフィーナの体を貫通した漆黒の長剣は灰となり、風に吹かれて、何処かへ消えてしまった。レフィーナはその場に倒れ込んだ。魔王は急いでレフィーナの元へ駆け寄り、体を掬い上げるように抱き上げた。  レフィーナの胸元には、漆黒の長剣が縦長い逆三角形の盾を貫く紋章が刻まれていた。 「おいっ! しっかりしろ!」 「……魔王。折角、契りを交わしたのに、駄目でしたね。私が欲張り過ぎたのでしょうか? ゴホゴホッ」 「そのようなことは無い」  レフィーナはぎこちない笑顔を魔王に向けた。魔王はすぐさま胸元に傷が無いか見てくれた。どうやら紋章以外には特に変わった様子はなく、傷口も出血もみられなかったと言った。 「ふわぁ……、魔王、こんな大事な時に眠気が……。折角、一緒に新世界が築けると思った、んですが……。わた、し……、今、とてもねむく、なって……」 「おい、しっかりしろ!」 「……あとはお願い、します。寝ていても、会話、出来る……魔法でも、考えてみ――」  レフィーナは強い眠気に襲われ、魔王の胸の中でスヤスヤと眠りに落ちた。魔王が何度か声をかけたり、肩を揺する感じがしたが、それも徐々に分からなくなった。

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