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ある程度、新天地での作業が終わり、何年もの歳月が過ぎ去った。
ダルタロスが聖女レフィーナに代わり、新世界の創造者となり、様々な種族が共存し、互いに手を取り合い、新たな世界を切り開くように導いた。
一方、下界では勇者の身勝手な行動から各国から不満が募り、暴動や戦争が起きるようになった。
それを見かねてか、永い眠りについているレフィーナが念話でダルタロスに話し掛けてきた。
「はぁ、なんでこうも争いを好むのかしら?」
「聖女よ、今の気分はどうだ? と言っても、下界がこんな有り様じゃ良い気分もしないだろう」
「それもそうね。私は念話で国王などに話しかけていたけど、誰も私の声なんて聞いてくれないし、邪魔者扱いよ」
「我はこれからもずっとお前のそばにいるぞ」
「あら、嬉しい事言うじゃない」
「しかし、この都市の原動力は聖女の魔力や生命力なのだ。無理はして欲しくない」
「大丈夫よ。ここに人が集い、活気に満ちれば、それを原動力に出来るわ。そうしたら、私も少しは楽になるわ」
「そうか。ならば、早いとこ建国せねばな」
ダルタロスは許された者のみが立ち入る事が出来る、いわば、創造者の理想郷とした。その上で、三大欲求に基づいた、衣食住に困らないようは都市を築くように四天王の二人に命じた。
セーレやストラス、ストラスが連れてきた貧困で苦しむ人間、獣人、魔物などが協力し合って、天空都市の建設を進めていった。
*
三年もの歳月が経ち、レフィーナが理想とする都市が完成した。レフィーナとダルタロスはこの都市を『天空都市アルディア』と名付けた。市民全員にブレスレットの装着が義務付けられ、一人ひとりに番号が割り振られた。
自動認識機能が備わっており、悪事を働く者には罰を与え、犯罪を犯した者は永久追放とされた。しかし、下界に比べれば、何百倍も住みやすい環境に不満を漏らす者や悪事を働く者はいなかった。
レフィーナは救える命が無いか、アルディアの最も高い塔で安らかに眠りながらも、下界を透視で観察し続けた。
「次の段階へ行くために、外部との交流をそろそろ考えましょうか」
「いいのか? 選定せず、余所者を入れて」
「そこはちゃんと考えてるわ。ここに通じる扉を世界にばら撒くの。その扉は共鳴した者にしか開ける事が出来ないようにするの。それなら問題ないでしょ?」
「まぁ、お前が考えたのなら、異論はない」
ダルタロスはアルディアへの扉をいくつか作り上げ、より良い発展を願い、世界中に扉をばら撒いた。
その扉は人間界には勿論、魔界にも分け隔てなくばら撒かれた。
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