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3-1(メフィスト視点↓)
時を同じくして、魔界では平穏な日々が続いている。魔王がいなくなってから、四天王もバラバラになった。魔王の座を狙おうとした一人は消息不明、セーレは天空都市アルディアに残り、ストラスは魔界の自身の屋敷に閉じ籠もっている。
メフィストは相変わらず呑気で毎日楽しいことがないか探していた。唯一、構ってくれる引きこもりなストラスに日々ちょっかいをかけていた。
「なぁなぁ、ストラス。今の話聞いてたか?」
「メフィスト、なんだ?」
メフィストは今日もストラスの城へ来ては、ストラスの書庫で面白そうな本を探す。ストラスの書庫には、世界中から集められた本が所狭しに保管されている。メフィストはいい暇つぶしになるため、ここに来るのが好きだ。しかし、あらかた読み終わってしまい、手持ち無沙汰だった。そんな時、たまたまアルディアへの扉を見つけ、ストラスに話を持ちかけるのであった。
「ほら、人の話聞いてねぇ。だからさ、アルディアへ行こうって話だよ」
メフィストがそう言うと、ストラスは目頭を押さえ、読んでいた本を閉じると、ため息をついた。
「はぁ……。そもそも私たちが立ち入れる場所ではないだろう。行き方も分からないのに、なに馬鹿なことを言ってるんだ」
「いやいや、この前、旧魔王城を散策していたら、地下水路の奥に扉があったんだよ。あれは絶対にアルディアへ通じる扉だぜ」
メフィストは目を輝かせながら、前のめりになり、ストラスに訴えた。ストラスはこめかみに手を当て、再びため息をついた。
「なんでお前は旧魔王城なんて場所に散策へ行くんだ? 頭おかしいんじゃないか? 魔王様にでも見つかったら、首をはねられるぞ」
「ストラスはまだ魔王様が生きてると思ってるのか? 数年前に勇者一行に倒されたじゃないか」
「正しくは、勇者じゃなくて、聖女が倒しただ」
人間界では魔王を倒したのは勇者と言い伝えられているが、それはあくまで表向きだ。本当はとても残酷だ。勇者達に散々嫌がらせを受けた聖女が勇者の命令で魔王を倒したのだ。
「まぁ、そんな事より俺と一緒にアルディアへ行こうぜ」
「私は遠慮しておく。まぁ、アルディアに物珍しい書物があれば、行かなくもないが……」
「なんだよ、また本の話かよ。……分かった。俺がお前の好きそうな書物を買ってきてやろう」
「まぁ、お前には無理だろうがな」
「ほんじゃ、楽しみにしてろよ。お前をギャフンと言わせてやる」
メフィストはニカッと笑うと、手を振り、ストラスの城を後にした。
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