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番外編7
「彰人、帰るぞ」と珍しく彰人のクラスに悠哉が顔をのぞかせた。普段なら彰人から悠哉のクラスへ足を運んでいるため、悠哉から出向くことはほとんどなかった。
どうしたのか不思議に思ったものの、特に聞き出すことも出来ず「ああ」と彰人は急いで荷物をまとめた。
「うち来いよ」
自身の家の前で足を止めた悠哉は、今まで一度も開かなった口を開きそう言った。
「えらく急だな」
「嫌なのか?」
「いや、別に嫌ではないが」
普段とは確実に異なる悠哉の態度に、彰人は自ずと引っ掛かりを覚える。未だに椿のことが引っかかっているのか、それにしても単に機嫌が悪いだけなら急に家へ招くことも謎だった。しかしここで断ってまた一段と悠哉の機嫌が損なうことも困るため、彰人は大人しく招かれることにした。
リビングではなく悠哉の自室へと通された彰人が床へと腰を下ろすと、悠哉も隣に座り「なぁ彰人」と彰人の瞳を真っ直ぐと見つめた。
「これ以上嘘をつくなら俺と別れてくれ」
「はっ…?」
突然の悠哉の発言に、彰人の時は止まる。聞き間違いではないかと自身の耳を疑うが、悠哉はっきりと別れてくれ、そう言ったのだった。
「待ってくれ悠哉…っ、どういう事だ…っ?」
「今日お前が椿先生と二人で話しているところを見たんだ。何を話してるかまでは分からなかったけど…あれは完全に初対面の間柄ではなかった。お前は俺に嘘をついたんだろ?」
罪を犯した受刑者を尋問するかのように、悠哉は鋭い瞳で彰人を見つめていた。
まさか見られていたとは思ってもみなかった彰人は、上手い言葉が見つからず「いや…っあれは…」としどろもどろに言葉に詰まってしまった。そんな彰人の様子になおのこと睨みをきかせた悠哉はさらに追い打ちをかけるように言葉を続ける。
「正直二人が話してる姿を見る前からお前が嘘ついてるって思ってた、だけど確証がなかったから何も言えなかったけどこの目で見たからには黙ってらんねぇ。なんで嘘をついたんだ?俺が嘘とかそういう類のことが嫌いだってお前は知ってんだろ?」
普段よりも怒気を孕んだ悠哉の声色から、本気で怒っている様子が伝わってくる。それ程彰人に嘘をつかれたことがショックだったのだろう、彰人はただ黙って悠哉の言葉を受け止めるしかなかった。
「椿先生とどういう関係だったのか俺だって知りたい、だけどお前が話したくないなら無理やり聞こうともしないよ。話したくないならはなさなくていい、だけど嘘をつかれるのはショックだった。お前にとっての俺は嘘をついてもいい相手なんだって…」
「違う…っ、そういう訳じゃないんだ…っ」
「じゃあどういうわけだよ?!お前は嘘の一つや二つって思ってるかもしんないけど…俺にとってはお前からつかれる嘘の一つも二つも全部そんな軽くないんだよ…っ!俺にとって彰人は大切な存在で…そんなお前に嘘なんてついて欲しくないんだ…っ、お前の事なら何でも受け止めてやりたい、だから今回の事はすげぇ寂しかったよ」
今にも泣きそうな程に歪められた悠哉の顔を見て、彰人は衝動的に悠哉の身体を抱きしめた。しかし悠哉は抵抗するように彰人の胸を押しやり「やめろ…っ嘘をつくやつなんかに抱かれたくない…っ」と抵抗した。
「悪い悠哉、俺が悪かった。だから別れるだなんて言わないでくれ」
ぎゅうぎゅうと、悠哉の身体を抱きしめる腕に彰人は力を込める。そんな彰人に抵抗できるはずもなく、大人しくなった悠哉は「嫌だ、嘘つき野郎なんかもう別れてやる」と口にした。
「お願いだ悠哉、別れるなんて言わないでくれ。全部話す、お前に嘘をついたことも全部正直に話すから、だから俺から離れないでくれ」
たった一つの嘘でも悠哉にとっては大きなものであり、結果こんなにも傷つけてしまった事に彰人は後悔しか無かった。悠哉に嫌われるという不安、自身の未熟さ故についた嘘は最悪な結果をもたらした。
彰人はゆっくりと悠哉の身体を離し、悠哉の瞳をうるうると揺らめかせている涙をそっと指で拭った。
「嫌だ、もう彰人なんて嫌いだ」
「俺は好きだ、愛してる」
「そんなこと言ってご機嫌取りしても無駄だからな…っ、今回俺は怒ってるんだ、だからちょっとやそっとの甘い言葉になんか騙されるかあほ」
どこか頑固になっている悠哉に、彰人は愛おしさから顔を歪めた。完全に軽蔑された訳では無い、ただ拗ねているだけなのだとどこか安心した彰人は、悠哉の頬に軽く触れるだけのキスをした。
「俺はこんなにも好きなのに、どうしたら機嫌を直してくれるんだ?」
「…どうしたらって…」
「お前に愛されるためなら何だってやってやる、だから教えてくれないか」
「…俺だけを愛してくれ…」
伏し目がちに逸らされた悠哉の瞳、彰人の鼓動はバクンと急速に音を立てる。
「んっ…」
悠哉の薄い唇に軽くキスをすると、鼻から抜けるような声が少し漏れ出る。堪らずもう一度唇をくっつけ、食むようにゆっくりと唇を動かした。
ちゅっ…ちゅっ…、というリップ音だけが鳴り響く室内に、彰人はなんとか己の理性を沈めるために名残惜しくも唇を離した。
「今はこれで勘弁してくれ、これ以上すると話をする前にお前を押し倒してしまう」
離された彰人の唇を追うような視線を向けていた悠哉だったが、ハッと我に返ったように「離せ…っこれだと話も出来ないだろ」と彰人の肩を弱く押した。
「それにキスしろだなんて誰も言ってないだろ…っ」
どこまでも素直でない悠哉に、彰人の表情筋は緩さを増していく。先程まで不機嫌で怒っていたとは思えない悠哉の姿に、愛おしくて堪らなかった。
「もう早く話せよ」
「分かった、話すよ」
彰人は意を決したように口を開いた。そして悠哉に全てを打ち明けた。椿の事を本当は覚えていたこと、自身の初恋相手であったこと、そして悠哉に知られたくはなかった過ち。悠哉は黙って聞いてくれていたが、彰人の中には未だに嫌われるのではないかという恐怖が存在していた。それでも彰人は真実を話した、悠哉なら受け止めてくれると信じながら。
「これで全部だ。こんな事知られたらお前に軽蔑される、それを恐れて嘘までついてしまった。だけど隠そうとして嫌われるなら本末転倒だしな、不快な思いにさせて本当にすまなかった」
彰人が話終えると、それまで黙っていた悠哉は「むかつくな」と一言吐き捨てた。
「それだけで俺が彰人を軽蔑するとか、そうお前は思ってた訳だろ?そこまで小さい人間だと思われてたなんてムカつく以外の何物でもない」
ベッドの上に両腕を乗せた悠哉は、機嫌が悪そうに唇を尖らせた。悠哉のまさかの反応に戸惑った彰人は、急いで弁解を口にした。
「お前を小さい人間だなんて思っていない、ただ俺のした事は最低なことだし、それをお前が知ったら軽蔑する可能性だってあるだろうと俺は思ったんだ。お前から嫌われることを何よりも恐れている俺は、少しでも嫌われるような可能性がある事は話したくなかったんだ。だから今回の事だってお前を信用してなかったわけじゃなくて…」
「もういい、分かったから」
彰人の言葉を遮った悠哉は、彰人の胸に人差し指を押し当てた。
「簡単に要約すると、お前は俺に嫌われることを恐れてただけってことか?」
「まぁ、要約するとそうなるな…?」
悠哉の言う通り、全ては悠哉に嫌われることを恐れた彰人の不安であった。こんな最低な話悠哉に知られたら嫌われるという彰人の被害妄想である。
「はぁ、なんか心配して損したというか…俺はもっと椿先生に対して今でも忘れられない気持ちとか、そういうのがあるかもって思ってたのに」
「
それはない、今更あの人に対して好きだという感情もないし、本当にただの初恋相手に過ぎない。久しぶりに再会してもあの頃のような恋心ももう抱かなかったしな」
「だったら何もやましい事ないじゃんか、もっとすっと話してくれたらこんなに拗れることもなかったのに」
完全に拍子抜けしてしまっている悠哉に、彰人は「それだけか…?他になにか無いのか…?」と彰人は疑問に思う。
「他って?」
「だって俺は椿さんが襲われていたのに何も出来なかったんだぞ?それなのに自分以外の男と関係を持ってることに勝手に腹を立ててたんだ、最低だとおもわないのか?」
「最低なのはその職員だろ、それにお前だってまだガキだったんだし何も出来なかったのはしょうがないよ。逆にその時の事を今もこうして自分の罪だと戒めてるお前は偉いよ彰人」
悠哉の右手が優しく彰人の頬へと触れた。肌から伝わる悠哉の柔らかい手の感触、そして人肌の温かさがなんとも心地よかった。軽蔑されるどころか褒められるなんて誰が想像できただろうか。悠哉は彰人の事を偉い、そう褒めたのだった。彰人はまるで今まで抱えていた重荷から開放されたような、そんな感覚に陥った。
「お前が自分のした事を未だに許せないっていうなら俺が許すよ。だからもう罪だなんて思わないでいいんだ」
慈愛に満ちた悠哉の表情は、なんとも美しかった。この男はなんて優しいのだろうと感動を覚えると同時に、彰人は「ありがとう」と悠哉を抱きしめた。
「お前の言葉一つでここまで気持ちが軽くなるなんてな。本当にお前はすごいな」
「俺は別に大したこと言ってないだろ、単に彰人が俺の事好きすぎんだよ」
「ふっ、そうだな」
ぎゅっと悠哉の腕が彰人の背中に回される。なんて幸福な時間なのだろうと、彰人は今という幸せを噛み締める。最高にかっこいいこの男が自身の恋人だという事実に、彰人は堪らない気持ちになる。
「さっきの続き、してもいいか?」
彰人は身体を離し、鼻と鼻触れる程の距離で悠哉を見つめる。一瞬で顔を赤くさせた悠哉は、視線をそらせながらも「ああ」と小さく頷いた。
「んぅ…っ」
勢いよく悠哉の唇へ噛み付くようなキスをする。角度を変え何度も悠哉の唇の感触を堪能するかのような甘く濃厚なキス、時折漏れ出る悠哉の甘くくぐもった吐息が彰人の下半身に熱を帯びさせる。
「…っぁ、はぁ…んっ…ベッド…ベッドがいい…」
欲情に孕んだ瞳でそう訴えかけられる。そんな可愛らしい望みを聞かないわけがなく、彰人は悠哉の身体を抱き上げベッドへと降ろした。
「んんっ…ふぅ…っんっ…」
くちゅりと悠哉の口内へ舌を這わせば、柔らかくもいやらしい舌の感触に頭がクラっと揺れる。ディープなキスはいっそういやらしい音を室内に響かせ、お互いの気分をより高めた。
唇を離すと、細く長い唾液の糸が二人の間に紡がれた。キスに弱い悠哉は、既にとろんとさせた瞳を濡らしている。
「んっ…はぁ…っ」
「悠哉…可愛い」
「うっさい…早くしろ…」
彰人が可愛いと一言呟くだけで照れくさそうに口元を隠した悠哉がなんとも愛おしく、彰人の下半身はさらに熱を増すばかりだった。何度したところで飽きることの無い悠哉の可愛らしい反応に、彰人の理性は既に微小であった。
慣れた手つきでワイシャツのボタンを全て外すと、白い肌が露になる。平らな胸にツンと主張するようなピンクの二つの飾り、彰人はゆっくりと乳輪をつまみ上げ、さらに盛り上がった乳首に吸い付いた。
ちゅう…っ、と吸い上げれば、びくりと悠哉の身体が反応を見せる。そして咥えたまま舌でその小さな玉を転がすように動かせば「ぁ…っあぁ…んぅ…っ」と甘く官能的な声が彰人の鼓膜を刺激した。
悠哉は最初の頃から乳首で感じており、この頃はすっかり性感帯の一部となっていた。悠哉の敏感過ぎる身体に、本当に自分と身体を重ねるまで未経験だった事が不思議なぐらいであった。いずれは乳首だけで達するようにまで開発したい彰人であったが、今日はなかなかに余裕が無いためまたの機会にしようと乳首から口を離す。
そして悠哉の薄い腹に舌を這わせながらも、カチャカチャとベルトを外しズボンを脱がせる。パンツの上からでも分かるほど、悠哉の自身は立ち上がり主張していた。やんわりと手を這うように動かせば、悠哉の腰が跳ね上がる。
「一回イクか?」
直接触ることはなく布越しに悠哉の自身を扱くように手を動かす彰人は、左手で乳首を愛撫しながら悠哉の顔を見た。快感からか今にも蕩けてしまいそうな悠哉は、大きく唾液を飲み込み「ちゃんと…っ直接触ってっ…」と彰人の右手に手をかけた。
「直接?だったらお前がして欲しいように俺の手を動かしてくれ」
扇情的に懇願する悠哉の姿に、サディスティックな気持ちに擽られた彰人はわざと意地悪く笑った。普段の悠哉ならば言い返してくるだろうが、今の快感に囚われた悠哉はただ素直に彰人の言うことに従うだけであった。彰人の右手を掴み、パンツの中へと潜らせると自身の性器へと誘導した。そして上下へと彰人の手を動かし始めた。
「あぁっ…あ…っうぅ…んっ…」
彰人の手を使い自慰をしている、そんな悠哉のいやらし過ぎる光景に彰人は目眩がした。ただ快感のために彰人の手を使って自身を扱いている事実に、彰人の興奮は最大にまで高まった。
「人の手を使って勝手に気持ちよくなってるのか?お前は本当にいやらしいな」
「は…っぁ、だって…っお前がっ…ぁっ…」
「俺の手でするオナニーは気持ちいいか?」
「んんっ…っきもち…っいい…」
既に先走りでぬるぬるとした感触が己の右手から伝わってくる。そして自分の右手が悠哉の意思で動いている、いわば自慰の道具として使われているという事実に彰人の興奮は益々駆り立てられる。
堪らず悠哉の先端部分をグリっと親指で押しやると、予想していなかった刺激に悠哉の身体が大袈裟に跳ね上がった。
「ああっっ…それ…っやばいっ…イッちゃっ…っ」
反射的に止まった悠哉の手だったが、彰人は悠哉の手が止まってもお構い無しに自身の意思で右手を動かし始めた。激しく上下に擦ると「あぁぁっっ…イクっ…っっ」と悠哉の身体が大きく仰け反り、布越しから白濁が染み込んだ。
彰人はそのまま悠哉のパンツを降ろし、ベッタリと悠哉の吐き出したもので汚れてしまったパンツを床へと放り投げた。そして達した余韻から胸を上下に動かしている悠哉の横に手を付きながら、引き出しからローション、そしてゴムを取りだした。
「うぁ…っ冷た…っ」
ローションを悠哉の後孔に垂らせば、ピクリと悠哉の小さな尻が可愛らしく震えた。
「すぐに良くなるから我慢してくれ」
悠哉のサラリとした前髪をかき分け、顕になったおでこにちゅっ、とキスをすれば悠哉は照れくさそうに顔を顰めた。そんな悠哉の素直じゃない反応を楽しみつつも、彰人は悠哉のナカをゆっくりと解していく。
すっかり悠哉の良いところを知り尽くしていた彰人は、指の腹で押し上げるようにそこを刺激してあげれば悠哉の口からは甘い喘ぎ声が漏れ出る。すぐに彰人の太い指を三本も咥えこんでしまった悠哉の後孔から指を抜けば、入れられていた名残から完全に閉じきっていない小さな窄まりがヒクヒクとまるで彰人を誘っているようだった。
「すっかりナカで感じるようになったな」
「…はぁ…っ、お前のせいだろ…」
「いや、でもここまで感度がいいのは最早才能だぞ。女でもナカで感じることは難しいらしいからな」
瞬時に自分の衣服を全て脱いだ彰人は、随分前から立ち上がっていた自身にゴムをはめながら今から抱く目の前の恋人の姿を堪能した。彰人がゴムを付けている姿をまじまじと見ている悠哉は、期待の瞳を向けながらゴクリと喉仏を上下させた。悠哉は無意識なのだろうがここまで見つめられると流石の彰人でさえも気恥しさを覚えるため「そんなに見られると穴が開きそうだ」と軽口を叩く。
「いや…別に見てるつもりは…っ」
「そんなに早く入れて欲しいのか?」
意地悪く笑った彰人は、悠哉の窄まりに自身をあてがった。
「そういう訳じゃ…っ」
「じゃあこのままでもいいのか?」
焦らすように自身を擦り付ければ、「ふっ…ぅ…」と悠哉の口から吐息が漏れる。そして唇をかみ締め、キッと彰人を睨みつけるように「いじわる…」と呟いた。
彰人の理性はここまでであった。焦らして悠哉の反応を楽しもうと思った矢先、そんな反応をされては理性などすぐに崩れてしまう。彰人はグッと悠哉のナカへ自身を沈めた。
「くっ…」
「あっ…あぁ…っ」
待ち望んでいた彰人の太く硬い熱に、悠哉のナカはきゅうきゅうと彰人の自身をキツく締め付けた。彰人は狭すぎる肉壁の中、ゆっくりと己の性器を沈めていく。
「…っ狭いな…」
「…は…っぁ…んぅ…っ」
時間をかけやっと全てを飲み込んだ悠哉は、腕を伸ばしぎゅっと彰人の頭を抱きしめた。彰人の耳元で「全部入った…っ?」という悠哉の熱の籠った吐息にゾクリとした快感が体を駆け巡る。彰人は今すぐにでも激しく突き上げたい気持ちをなんとか抑え「ああ、全部入った。身体の方は大丈夫そうか?」とあくまで悠哉の身体を第一に気遣う。
「ん…俺は大丈夫…だから動いてくれ…」
彰人の頬に手を添えた悠哉は、欲情に孕んだ瞳で彰人に懇願した。ぶわりと全身の毛が逆立つ感覚と同時に、彰人は一度腰を引くと、勢いよく奥まで腰を突き上げた。
「あぁ…っっ」
びくり、と一際大きく悠哉の腰が跳ね上がる。それでも彰人はお構い無しに何度も腰を突き上げた。
「あっ…奥っ…っ、あたってっ…っ」
「はぁ…っ、悠哉…っ」
「んんっ…っあぁっ…っ」
激しいピストンを繰り返せば、お互いの熱が混ざり合うかのような熱さに身が焼けるようだった。熱い、熱すぎる、それでも迫り来る快感の波に抗えずに、彰人は悠哉の身体をゆさぶった。
「彰…人…つ」
「は…ぁっ…悠哉…っ」
「好きっ…好きだ…っ、彰人…っ」
必死に自分の名前を呼ぶ余裕のない声、そして好きだと訴えかける悠哉の瞳に彰人は限界であった。迫り来る快感の波に耐えるように悠哉の身体を力強く抱きしめると、「あぁっ…っ」という声と共に彰人の腕の中で悠哉の身体がビクリと跳ね上がる。
達した余韻でお互いの息遣いだけが残る室内、未だに冷めない熱さを感じながらも、彰人は悠哉との繋がりをまじまじと実感していたのだった。
「結局お前のタイプってどんな人なんだ?」
うつ伏せで枕を抱いている悠哉は、隣でワイシャツに腕を通している彰人へと疑問を投げかけた。彰人はボタンを停めながら「急に何の話だ?」と悠哉を見る。
「俺と椿先生って見た目も性格も全く違うだろ?だから彰人はどういう人がタイプなのかはっきりしなくて気になったからさ」
顔を上げ彰人を見つめている悠哉のその瞳は純粋なものであった。彰人は少し黙り込み「…そうだな、本来は椿さんみたいな人がタイプなんだろうな」と結論を述べた。
「そもそも年下と付き合ったのは悠哉が初めてだしな」
「そうだったのか?」
「ああ、大体年上だったな」
彰人は過去の恋人達の姿を思い出すが、ほとんどが年上であったことに気がつく。本来は悠哉のような突っかかってくるタイプは面倒で関わりたくもないと思ってしまう程であり、こちらに干渉してこない大人びた人間とばかり付き合っていた。
「じゃあなんで俺なんだよ」
どこか不満気な悠哉は、彰人の答えに少々不貞腐れているようだった。そんな悠哉に「ふっ」と笑った彰人は、悠哉の柔らかな髪をさらりとすくった。
「ここまで深く人を好きになってなかったからだろうな。今まではなんとなく好みの人間と付き合ってきて、好きだという気持ちもただ好みだったという浅い理由だった。だけどお前は違う、最初は突っかかってくるお前が気に食わなかったが、何度か接していくうちにどんどん惹かれていっていつの間にか恋をしていた。まるで初恋の時のような感覚だったさ」
彰人は素直な気持ちを口にした。初恋であった椿の事はもちろん好いていた。しかしまだ若かったあの頃の彰人は、自分よりも大人びた椿の事をどこか尊敬の目で見ていたのかもしれなかった。そしてそんな年の離れた椿を好きになった自分自身に酔っていた節もあり、どこまでも子供だった。もし悠哉と出会うことなく椿と再会したとしても、もう一度アタックしようなどとは思わなかっただろう。
しかし悠哉は違った。拒絶されたことにより一度は悠哉と距離をとった彰人だったが、高校でまた再会した際には運命だとそう思った。決して諦めたくないという強い意志が彰人にはあり、もう一度悠哉と関わる事を選んだのだった。
やはり悠哉の存在は彰人にとって特別であり、今後の人生ここまで愛おしいと思える存在は決して現れることはないのだろうと彰人は強く確信した。
「まぁお前と出会う前は年上が好みだったが、今はそうでは無いからな。お前じゃないと嫌だな」
思わず漏れ出た本音に、悠哉は「…お前はすぐそういう事を…」と恥ずかしそうに顔を顰めていた。そんな悠哉が愛おしく、彰人は癖のない悠哉の髪を撫でた。
「そういうお前はどうなんだ?どんな奴がタイプなんだ?」
彰人は悪戯心に催促されるように、同様な質問を悠哉にした。一体どんな返答が返ってくるのか、彰人は悠哉の特徴的に垂れている瞳を見つめた。
「とびきり男前で俺の事を馬鹿みたいに愛してくれる奴」
小さく口角を上げそう口にした悠哉は「もう寝る」と彰人に背を向けてしまう。一人取り残された彰人は、たった今耳にした悠哉の答えに暫く身動きが取れずにいた。そして顔に熱が集まっていく感覚に、彰人は思わず片手で顔を覆った。
まさか悠哉が素直に答えてくれるなど思っていなかった為に、不意をつかれたようで自分で聞いたにも関わらず照れてしまった。
本当にこいつには敵わないな、と柔らかく笑った彰人は、悠哉の髪をかき分け露になった赤く染った耳に優しくキスをした。
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