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第25話 【R18】神紋の儀式
化野護は、困惑していた。
いつもベッドで自分の下にいる愛しい恋人が、自分に跨り雄の顔をしている。何と返事をすればいいのか、どう動くのが正解なのかわからずに、フリーズした。
そうしている間にも、直桜は護の唇を食んで、耳を食んで舐めあげる。
「ぁっ……、直桜、待って。ここ、事務所。せめて、部屋に」
胸を押し退ける手に力が入らない。
「どうせ誰も来ないよ。清人はもう帰ったし。てか俺、今移動したら意識飛ぶから、このままさせて」
シャツを捲り上げて肌に触れる直桜の指が熱い。
耳に掛かる吐息も早くて、熱を帯びている。
(惟神の力をこれほどに消耗して……。こんな直桜、初めて見た)
未玖の清祓は護が思っていた以上に直桜の負担になったらしい。それほどに難しい魂魄だったのだろう。
今まで他の惟神でも、浄化師でも清祓師でも成し得なかった術を、この短時間でやってのけたのだから、当然だ。
「直桜、休みましょう。神紋の定着は、今でなくてもいい。後でゆっくり、とっ」
思い切り、下唇を噛まれた。
流れた血を、直桜の舌が舐め挙げた。
「ダメだ。後回しには出来ない。逃がさないって言ってるだろ」
開けたシャツを邪魔そうに退けて、鎖骨に噛み付く。
ビクリと震える護の肩を抑え込んで、肌を強く吸われた。びりっと甘い痺れが走って、力が抜ける。
「でも、直桜がこれ以上、神気を消耗しては……んっ」
鎖骨を食んでいた唇が胸に降りて乳首を弄る。
舌先でコリコリと捏ねられて、腹が疼いた。
「今は、良いんだってば。素直に俺に抱かれててよ」
「直桜……、どうしたん、ですか。何か、焦って……」
「別に焦ってない。いいからもう、黙って」
唇と強く押しあてられる。
舌が割り込んで、上顎を強く舐め挙げた。
息ができない程なのに、指で胸の突起をつねられる刺激が強すぎて、抗えない。
(直桜の様子が、いつもと違う。あの、八張槐とかいう男の話になってから、雰囲気が変わった)
護を欲しがっているという、集落の裏切者で反魂儀呪のリーダーと思しき男。それ以前に、直桜自身が槐を嫌っているような印象を受けた。
(槐に俺を奪われたくなくて、焦っているのか? だとしたら、これは嫉妬?)
そう思った瞬間、腰の奥が強く疼いて、前が硬くなったのを感じた。
下着と服に押さえつけられて、きつい。
「護、乳首されるの好きなの? いつも俺にいっぱいするのって、自分が好きだから?」
「今のは、ちがっ……ぁっ」
直桜が自分の股間をぐりっと押しあてる。
その刺激だけで、先走りが流れたのが分かった。
「直桜が触れるとこ全部、気持ちが良くて、どうにかなりそう」
息が上がっていく。
我慢できなくてベルトに掛かった手を、直桜の手が押しのける。そのまま脱がされて、下着をずらされた。
パンパンに硬くなった陰茎を、直桜の手がゆっくりと扱き上げる。
「すごい熱い。もうこんなに大きくなってる。護の好きなとこ、舐めてあげるね」
「ぁ! ぁっ、直桜……、すぐに、出そう……」
裏筋に舌を這わせて、亀頭を咥え込む。舌を尖らせて尿道の口を突かれると、腰が震えた。
「護って、先をいじられるの、好きだよね。気持ちいい?」
根元を扱きながら、頬張った先を吸い上げられる。
何度も繰り返されて、腰が勝手に揺れてしまう。
「直桜、ダメ、も、出る……ぁっ」
直桜が口を離した。
出す直前で離されて、切ない快楽が腹の中で燻ぶる。
溢れた先走りを絡めた指先が、尻の口をなぞった。
思わず腰を浮かす。
陰茎を緩く扱いたまま、直桜の指が中を緩くかき回した。
「ぁっ……、はぁ、ぅん……」
久しぶりに感じる刺激に、声が漏れる。
「ちょっとキツいかな。護のは……、この辺?」
直桜の指が奥に伸びて、腹側を刺激する。
強い痺れが走って、頭に突き抜けた。
体が大きく跳ねて、背中が反り上がる。
「良かった、当たりだね……」
陰茎を扱きながら、直桜の口が先を咥えて吸い上げる。
指は中の良い所を撫でながら押し上げる。
波のように迫る強い刺激に、体も声も抑えがきかない。
「ぁ! ぁぁっ……、待って、そんなに、したら、我慢、できなっ……ん、んっ」
直桜が顔を上げて、護を見下ろす。
「護の蕩けた顔、可愛い……。鬼化してない護とエッチしてみたかったんだ。いっぱい感じてくれて、嬉しい」
いつの間にか二本に増えた直桜の指が、一際強く中のしこりを擦り上げた。
「ァぁっ……、イくっ、中で、イッちゃ……」
直桜の指の動きが、ぴたりと止まる。
「護の声、可愛くてもっと聞きたいけど、まだイかせてあげない」
直桜が下着をずらして自分の男根を露にする。
その先を、護の後ろの口に押し当てた。
「もうこんなに、ぬかるんでるよ。かわいい。後ろ、いっぱい感じちゃった?」
「直桜が、沢山、意地悪するから……ん、んっ」
口に熱い先をグイグイと押し付けられて、それだけで声が漏れてしまう。
「護がいつも俺にしてくれていること、そのまましているだけだよ。俺もいつも、気持ちいいから」
「こんなに、意地悪してなっ……、ちゃんと、イかせてあげてるっ」
直桜がぐいと、腰を前に出した。
熱く硬い先が、護の中に入り込む。
「あっ! おっき……、んんっ、ぁっ」
「もうちょっとしたら、イかせてあげるから、我慢して。護の奥まで入りたいから、ちゃんと準備しないと」
直桜がゆっくりと腰を動かす。
緩い動きが中の悦い所をなんども擦って、ずっと気持ちがいい。
絶頂するほどではない気持ちの良さが、じれったい。
「はぁ、ぁ……ん、ぁ……」
護の顔を眺めていた直桜の手が胸の突起に伸びた。
すっかり硬くなって勃っている所を、舌で舐め挙げ、容赦なく吸い上げる。
「ぁん、あっ、はぁ……」
それでも絶頂するには足りなくて、腹に疼きが堪っていく。
「イケなくて、辛い? もっと、してほしい?」
耳の穴に舌先が入り込んで、強く舐め挙げる。
ゾクゾクした刺激が、腹に堕ちる。
「して、ほし……、も、ムリ……、イかせて、ほし……」
「じゃ、気持ちよくなろ」
直桜が護の体を覆うように、ふわりと抱き包んだ。
腰がさっきより早く動く。
中のしこりを突くように擦られて、思わず腰が浮いた。
「体、丸めないで。ちゃんと俺の、感じて」
吐息交じりの直桜の声があまりに色気があって、余計に感度が上がる。
直桜の手が護の亀頭を扱く。中と外、両方の刺激が強すぎて背中が仰け反る。
「こんなの、全部感じ、たらっ。ぁ、ぁあ! あ、あぁっ!」
快感が一気に体中を駆け上がって、腹から吹き出した。
溜まっていた総てが外に出たようで、体中から力が抜けた。
「もしかして潮、吹いてくれた? 護、ヤバいくらい、可愛い……」
直桜の指が腹をなぞる。体がピクリと震えた。
気が付いたら腹の上から自分の顔まで、白濁が飛び散っていた。
「そのまま、力抜いててね」
脱力して震える護の足を持ち挙げて、直桜がまた腰を動かす。
大きく一度、貫くように護の中に押し込んだ。
びくん、と体が跳ねる。
探るように、直桜が何度か引きながら突っ込む。
「っぅあ! 直桜、直桜。それ、ハマったら、ヤバイ」
結腸責めをされているのだと気が付いて、腰が引ける。
「ハメるために、やってんの。護の一番奥に注がなきゃ、意味がないだろ」
逃げる腰を摑まえられて、動けない。
探る直桜の腰が、また強く護の中を貫いた。
「あっ! ……あ、あぁ……」
ハマった瞬間、気持ちが良すぎて頭が真っ白になった。
ぼんやりと蕩けた顔を直桜が熱い舌で舐め挙げた。
「入った。動くよ。中に出すから、全部飲んでね。俺の一部を、護の中に注ぐから」
背中に腕を回されて、逃げられない。
耳元で囁く声は甘くて優しいのに、有無を言わせない強さがある。
「愛、しています……、俺の、神様……」
無意識で口走った。
突然、直桜の動きが激しくなった。
「ぁぁ、ぁっ、イくっ、も……、直桜っ」
抱き締めてくれる直桜の肩にしがみ付く。
「いいよ、一緒にイこ。俺も、もう限界」
強く腰が押し付けられて、腹の中に熱いものが流れ込んだ。
一際強い快感が背中を走って頭から抜けた。
痺れた頭のせいか、目の前がチカチカして視界が霞む。
ゆっくり目を開けると、直桜が護の上で果てていた。
(意識、飛んでた。どれくらい飛んで……)
モゾっと腕を動かして、直桜が顔を上げた。
体を持ち挙げると、腹の上が精液でぐちゃぐちゃになっていた。直桜の服まで、汚れている。
「神紋は、定着したみたいだね。良かった」
腹に鮮やかに咲く桜の花は、淡い光を帯びていた。
直桜の指が紋を満足そうになぞる。
その顔を見て、安堵した。
最初にあった焦りの表情は、直桜からすっかり抜け落ちていた。
直桜の体がまた、護の体の上に倒れ込んだ。
「直桜! 大丈夫ですか?」
「さすがに、疲れた」
ぐったりと力なく護に抱き付く。
すべてを預けてくれているようで、嬉しくなる。
「神紋を定着させるにはさ、俺の体の一部を相手に取り込んでもらえばいいんだ。別に精液である必要は、無いんだけど」
「え? じゃぁ、どうして、無理してまでセックスしたんですか?」
神紋を定着させる儀式的なものなのかと思っていた。
「俺が護を抱きたかったから」
あまりにストレートな言葉に、思わず何も言えなくなる。
「でもさすがに今日は神力使い過ぎた。多分動けないから、あとは、よろしく」
「え? 直桜? 直桜!」
肩を揺すってみるが、既に寝息を立て始めている。
どうやら、ただ眠っているだけらしい。
眠る直桜の目尻に、指を滑らせる。
普段は飄々として、何にも興味がないような顔をしているのに、時々こうして強い感情を露にする。
一見しては何を考えているのかわからないが、その本音は、存外俗物なのかもしれない。
「本当に困った神様ですね」
直桜の強い感情は自分だけに向けられればいい。
本音も我儘も全部、自分だけに晒せばいい。
そんなことを考えながら、自分の上で眠る直桜の頭を撫でていた。
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