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第7話★

「……ふふ、上手だねぇ」  余裕そうな友嗣にさらにムカついて、駿太郎は自分が思いつく限りの手を尽くし、友嗣のモノを舌と唇と手で愛撫する。思えば、経験人数も圧倒的に友嗣のほうが多いのだから、上手なんていうのはただの社交辞令だ。それでも勃ちあがった彼の怒張を見て、駿太郎は少しだけ溜飲を下げる。  そしてその熱くなった肉棒を、再び咥えようと口を開けた時、不意に後ろに触れられ背中を反らした。いきなり何をするんだ、と友嗣を睨むけれど、彼は遠慮なく駿太郎の蕾を揉みほぐし、中に指を入れようとしてくる。 「ちょ、……っと、傷付いたらどーすんだっ?」 「んー? 大丈夫でしょ、処女じゃあるまいし」  いつもの口調で言う友嗣に、駿太郎はカッと頬が熱くなった。  自分でも、口が悪いことは自覚している。だから人のことは言えないと思う。けれど友嗣の今の言い方は口が悪い以前の問題で、相手をどうでもいいと思っているからこその発言だ。  ぬるり、とローションを纏った指が入ってくる。  ――嫌だ、と思った。  友嗣はあの、何を考えているのかわからない微笑をたたえながら、駿太郎の中を探っているのかと思ったら、耐えられなくなった。一回試してみろと言った将吾を恨めしく思い、片手を後ろに向けて友嗣の手を掴もうとする。 「……っ!」  しかし友嗣の指はやはり慣れていて、駿太郎の良いところに触れてきた。止めようとした手は宙を掻き、シーツを掴んで動かせなくなる。下半身から生まれる快楽に、駿太郎の腰は艶めかしく揺れた。 「ああ……やっぱりこっちも好きなんだぁ」 「う、……るさ……っ」  のんびりした口調なのに、中に入った指は容赦がない。自分だけ乱れた姿を見せるのが悔しくて、駿太郎は友嗣の熱を口に含んだ。 「あは、すっごい。……締め付けてくるよー気持ちいいねー」  駿太郎は下半身の刺激に時折負けそうになりながらも、熱い楔を唇で扱く。しかし執拗に中を穿つ指に覚えのある感覚が迫ってきて、堪らず口を離した。 「や、め……っ」  太ももの内側に力が入って震える。出してなるものかと耐えているのに、それを笑うかのように友嗣はご機嫌な声を上げた。 「わぁ、もしかしていきそう? いいよーいってー?」  ガクガク、と全身が震える。全身を突き抜ける快感に駿太郎は声も上げられず、情けなく精を吐き出した。 「やっ、やめろっ!」  しかし友嗣の指は止まらない。ずっと射精する感覚が続いたままそこを弄られ、駿太郎は身体を震わせながら頭を振った。 「も! もういい! いっただろ……!」 「んー? だってシュン、ずっと出てるよ?」  お漏らししてるみたい、と言われて脳が破裂するかと思った。やめろと言っても友嗣はやめず、駿太郎の切っ先からは絶えず精液が飛び出している。そんなこと、言われなくても分かっているし、気持ち良すぎて訳がわからなくなるからやめて欲しいのに。  なのに、後ろは駿太郎の意志など関係なく指を飲み込み、もっともっとと腰が揺れるのだ。 「よがってるようにしか見えないよー? それに、お口がお留守だけどー?」  抜きたくても抜けない、と友嗣は楽しそうに言う。やっぱりコイツは最低だ、と駿太郎は心の中で罵り、チカチカする視界のなかで彼の肉棒を掴む。不思議なことに、先程からそこは萎えずに天を向いたままだ。それに、さらに熱くなっている気がする。 (こんなプレイで興奮するとか、やっぱ性悪!)  そう思った瞬間、足先が痙攣し背中が反り上がった。光も音も消え、駿太郎の喉の奥から潰れたような声が出る。 「――ッ! はあ……っ!」  やっと息ができたと思ったら、全身がガタガタと震えていた。身体が酷い興奮状態にあり、乱暴に身体をひっくり返され上にのしかかられても、何も抵抗できない。 「そんなに怯えなくて大丈夫だよ? 気持ちよくしてあげる……」 「や、やめ……、いまいれたら……っ」  駿太郎の言葉は最後まで発することはできなかった。指よりも遥かに質量のある熱いモノが、後ろの肉襞を割ってズブズブと入ってくる。 「や、いやだ! ……ゴムは……っ!?」 「大丈夫、してるよー?」  はあ、と友嗣は切なげに息を吐く。友嗣の凶暴な熱が常に後ろを圧迫し、中で脈打つ動きさえ快感になる。これ以上強い刺激は苦しくて、駿太郎は涙目で首をふるふると振った。 「ゆー、……ゆーじっ、むり……っ」 「んー? 本番はこれからだよ?」  そう言って、友嗣は動き出す。  今までのセックスが、全部おままごとに見えてしまうほどの刺激だった。気持ちいいというよりは苦しくて苦しくて、後ろや下半身の痙攣が止まらない。 「……あは、すっごい……ずっといってるねぇ……っ」  それでも友嗣は微笑んだままだった。駿太郎は彼の動きを止めようと手を伸ばすけれど、その手を掴まれ逆に両手を拘束されてしまう。身動きが取れなくなった身体は逃げ場を失い、さらに深く、強く穿たれる。 「……――ッ!」  また大きな波が来て駿太郎は顎を反らした。胸や首元に熱い何かが飛んでくる。それが、自分の精液だとは思いたくなかった。 (いやだ……こんなの……こんなの……!)  苦しい、気持ちいい、苦しい……こんな(はげ)しいセックスは初めてだ。こんな――どこまでも堕ちそうな感覚は怖い。堕ちるのが怖い。戻れなくなりそうで怖い……! 「……っ、う……っ!」  あまりにも強い快感に、駿太郎は恐怖を覚えて涙腺が緩んだ。身動きが取れない体勢も拍車をかけたのだろう、涙が止まらない。 「泣いちゃったぁ。……ふふ、かわいい……」  相変わらず上では、笑いながら自分を揺さぶってくる友嗣。その顔は優しく見えるのに、下は燃えるように熱い楔を突き刺してくる。どうしてこの状況で笑うのか、駿太郎はわからなかった。 「――ッあ! ……あああっ!」  また視界がチカチカと強烈に眩む。ぐうっと呻いて背中を反らせば、またパタパタと胸に体液が落ちてきた。  ――人生最大の間違いだ、と駿太郎は思う。寝床がない友嗣に同情して、将吾の言葉を鵜呑みにし、自分に興味がない相手と試しに寝るなんて。こんなこと、するんじゃなかった、と唇を噛みしめる。  確かに友嗣は上手い、それは認めよう。こんなに気持ちがいいセックスは初めてだ。けれど同時に、とてつもなく苦しい。刺激が強いだけでなく、精神的にも。 「シュン、……シュン、怖がらないで……」  すると、友嗣は動きを止めた。けれど駿太郎の身体はまだ震えていて、それを抑えようと顔を逸らして目をつむる。  正直、泣いているし、汗と涙で顔はぐちゃぐちゃだ。こんな顔を見られたくないし、なんならなんでもいいから早くいけ、と思う。  でも、友嗣は「こっち見て」と言うのだ。

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