fujossyは18歳以上の方を対象とした、無料のBL作品投稿サイトです。
私は18歳以上です
彩雲華胥〜起承編〜 4-21 あの日の真実 | 柚月なぎの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
彩雲華胥〜起承編〜
4-21 あの日の真実
作者:
柚月なぎ
ビューワー設定
106 / 141
4-21 あの日の真実
逢魔
(
おうま
)
は
藍歌
(
らんか
)
の邸に向かう前に、用事を済ませておこうと
晦冥
(
かいめい
)
の地へと足を向ける。 途中、黒衣を纏った怪しげな男を見つけ、その後をつけて行ったところ、思いもよらない場面に出くわした。 結界壁の前で男が襲われて倒れ、息絶える。青い鬼面は闇夜に悪目立ちしており、逢魔はじっと目を凝らしていた。 その手に握られた灯篭の中の紫色の光は禍々しい気を放っており、それは忘れもしない存在を逢魔に思い出させた。 (あれは······まさか、) その瞬間、透明な糸が逢魔を捕えようと目の前で分かれて広がった。するりと身を翻し、後方へ飛んでそれを軽く躱す。 (結界壁の様子を見に来てみれば、それ以上の収穫だったようだ) 闇に身を隠して姿を晦ませる。鬼面の青年はその先へ何の影響も受けずに進んで行った。その様子を見て、やっぱりね、と逢魔は肩を竦める。 あの結界は、とっくに効果を失っている。それでも
殭屍
(
きょうし
)
が越えて来ないのは、来れないのではなく、行かないように命じられているだけなのだ。 新しく施した者の仕業か、もしくは施した後に細工をしたか。見た目は完璧に結界壁。並みの術士が見ても解らないだろう。そもそもこの地を訪れる者などいない。 あの夜、無明たちは導かれるようにこの地にやってきた。あの二枚の文を送った主は民ではなく、鬼面の青年だろう。より興味を持つだろうこの
晦冥
(
かいめい
)
の地での依頼を、無明が選ばないわけがない。 そして用意されていた陣が発動した。ここで霊力を失うほどの力を使わせ、
竜虎
(
りゅうこ
)
と共にそのまま保護して、邸に連れ帰るつもりだったはず。
白笶
(
びゃくや
)
が現れたのは予想外だったろうし、仮に白笶が現れなければ傍で見ていた逢魔が出て行った。 会話を聞く限り、逢魔の存在は話していなかったようだ。 (そこでまた計画は変わったってことだね、) それさえも計算済みだったのかもしれない。もしもの時のために、藍歌に毒を盛らせるように言葉巧みに操り、結果、無明の仮面の封印は解かれた。 謀主の読み通り、五大一族の前に素顔とその能力を晒すことに成功する。 そして、宗主に決断させる。 無明を
紅鏡
(
こうきょう
)
の地から旅立たせることを。 特別に無明に期待を寄せていた宗主は、よりその才能を伸ばしてやりたいという気持ちになったはずだ。 (そして、諮らずとも、神子が巡礼を始める十五歳の年に、各地を巡る旅に出すことに成功したってことか) 逢魔には、ふたりの会話がはっきりと聞こえていた。 あの灯篭の中の光は、間違いなく、邪神、
夜泮
(
やはん
)
だった。身体を失った奴が、欲しているのはその身を宿すための身体だろう。 (まさかとは思うけど、神子の身体を奪うつもりなのか?) そんなことはあり得ない。邪神に身を空け渡すわけがない。それ以前に、神聖な神子の身に宿ることなど不可能。 (それを可能にするなにかがあるのか?) 四神の契約がどうのこうのと言っていた。そもそも四神の契約を結べば、奴らが動きにくくなるだけだろう?それなのに手助けをする理由はなんだ? わざと宝玉を穢れされ、契約をせざるを得ない状況を作った本当の目的は? 「
師父
(
しふ
)
に······白笶に、知らせないと」 今世では
師父
(
しふ
)
と呼ぶなと言われているんだった、と思い出して言い直す。 あの鬼面の青年が誰かということは、今はとりあえずどうでもいい。いずれ解ることだろう。 逢魔は懐に忍ばせた文と小袋を取り出し、藍歌の邸の縁側にそっと置いた。 音は立てていないつもりだったというのに、奥から現れた影に、思わず顔を上げる。 「あ、えっと、こんばんは?」 その間抜けな挨拶に、くすくすと肩を揺らす少女のようなその人は、逢魔を見て悲鳴を上げることも、怯えることもなかった。 あろうことかその場に跪き、深く拝礼をし始めたのだ。
前へ
106 / 141
次へ
ともだちにシェアしよう!
ツイート
柚月なぎ
ログイン
しおり一覧