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第1話
僕は根本 真葛 。何年か前に起業した、いわゆる社長というやつだ。そんな僕はΩDom。Domはリーダーシップが強いから出世しやすいって言われてるけど、ΩDomはΩだからって中堅止まりだったりするし、起業しても食い潰されることも多い。だけど僕は偏見に負けず今のところ順調に会社を回している。
もちろん蹴落としてこようとするαやDomは後を絶たない。まあ逆にこてんぱんにのしてやってるんだけど。
こないだなんか野心を隠しもせずαDomが面接に来たから、望み通り僕の秘書にしてやった。発情期 で業務を滞らせるわけにもいかないからいい所に来てくれたものだ。僕にこき使われるのが気に食わないようだけど、僕の跡を継ぎたいならこれくらい出来て当然だ。そうだろう?
それで僕の目下の悩みは早く孫の顔が見たいとせっついてくる親だけだ。何しろ僕は彼らの一粒種。そしてΩは男にも子宮があって、妊娠率が高くなる発情期まである性なだけあって産ませるより産む方が得意。だから要はαと番 になって僕が子供を産めって話だ。僕は別に子供欲しくないんだけどな。子育てとか興味無いし。ちょっと考えが古いんだよね、うちの親。
結婚して安心させるくらいはしたいけど、これがなかなか相手が見つからない。
僕ほどの地位があるんだったらどこかで適当なαでも見つければいいって?とんでもない。この世の中のαなんて嫌なやつばかりだ。中でも天才的な僕にαが向けてくる視線なんてだいたいが嫉妬とか嫉妬とか嫉妬とかだった。嘘だと思う?本当なんだって、僕の立場になれば絶対分かるから。要するにαは僕を所有できる、好きなように抱けるってなったら大喜びするような連中ばかりなんだ。そんな奴らに誰が抱かれたいと思う?
そうじゃないαもいるのは知ってる。でも、こっちの方が重大な問題なんだけどさ、そもそも誰にも言ってないけど僕はαSubを痛めつけたいタイプのDomなんだよ。Domの多様性も認められつつあるけれど、やっぱりこういうタイプのDomは今でも顔をしかめられる存在だ。そういうサービスとかもいいけどさあ…なんかこうヤラセみたいで好きじゃないんだよね…。
あーあ、僕の下で犬のように這いつくばって恐怖とか屈辱とかを滲ませた視線でこっちを見上げてくるαSubが空から降ってこないかなあ…。こんなこと言ったら犯罪者予備軍だもんなあ……。もちろん実際にやったことはまだないよ。
いや僕もDomだからね?そういうのは本当に信頼してくれるパートナーとやりたいなあって思ったりもするんだけど、でもやっぱり一回は屈服させたいって気持ちはあるんだよね。生ぬるいのは好きじゃないっていうか…ハードSMグッズだけは家にいっぱいあるから、あとはSubだけっていうか…。
いかんいかん、せっかくの昼休みに何不毛なこと考えてるんだ僕は。番やパートナーは作らないし、プレイバーでのそれこそお遊びみたいなプレイと不安症抑制剤(欲求不満と仕事のストレスのせいで僕はDomには珍しい慢性不安症患者だ)で満足するって決めたじゃないか。そう思って気を取り直した瞬間、そのニュースは今思えば天啓のようにテレビから流れてきた。
ΩDomにストーカーしていたαSubがこの近くで捕まった。そんなニュースだった。でもなんとなく気になって調べてみたんだ。そしたらまあ情報が出るわ出るわ。アングラなサイトもあるからちょっと信憑性には欠けるけど、まとめるとこんな感じだった。
そのαSub、河原 梁 には前科があって、今回のストーカーの被害者でもあるΩDomをフェロモンで発情させて番にしようとしたことがあるらしい。その時も今回もΩDomの方がディフェンス起こして事件は未遂で終わったらしいけどそんなのはどうでもよくて、関係者によるとその時に河原は「君は僕の運命の番だ」と言ったとか。
そうだよ。「運命の番」ってものがあるじゃないか。その時僕は閃いた。
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