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第7話

色欲 昔々、あるところに、砂漠の国の王様がおりました。王様は、国の村という村から美少女美少年を徴用してきてはこれを侍らせて愛でるのですが、しかし、三日と経たずに飽いては、その者たちを信頼できずに処刑してしまう、大変暴虐な王様なのでした。さて、今宵の王様の夜伽の相手もまた、例の、褐色の肌に銀の髪をした、しなやかな手足の、お話の上手な少年です。この少年は、巧みな物語の語り手で、そのために、その前の日も、王様に処刑されずに済んだのでした。夜伽も終わり王様は、今夜も寝物語をするよう、少年に命じました。少年は王様に申し上げました。「承知いたしました。王様がそのように望まれるのであれば。王様の願いをかなえるのは七度目となります。」「うむ、もうそんなにも時が経ったのか。」と王様は仰られました。「そなたの物語が尽きるとき、そなたの命も尽きるものと知れ。さあ、語るがいい。」こうしてわたくし、月が見ているその下で、今夜も不思議の物語の幕が開いたのです。 昔々、まだ人よりも遥かに長命な者たちが闊歩していた頃のお話です。あるところに、エルフの女性に見初められた男がおりました。 男は、エルフの純朴さを利用して、女性を仲間に襲わせ、助けるふりをすることでその女性に近づいたのですが、予想外にそれは上手く行ってしまったのです。 エルフたちを従えるための政略結婚とは言え、男は美しいエルフを妻にできる嬉しさに身を弾ませておりました。 しかし、一人だけ事実を知っている者がいました。それは、エルフの女性の弟でした。 弟は、隙を見て男を捕らえ、誰も知らない秘密の場所に連れて行きました。 「弟くん…?どうしてこんなことをしているのかな?私にはわからないんだけれど。…」 手足を拘束され、男は怯えながらも威厳を見せかけて尋ねます。エルフの弟は答えました。 「なぜって、義兄さん、それは、あなた自身が知っていることなのではないですか?」 「思い当たる節はないなぁ…」と、男はしらを切ります。しかし、弟エルフの視線は男を丸裸にするようにしっかりと刺さっていました。 「やらせ…」と弟エルフがボソリと呟きます。が、男の演技もさるもので、全く汚点などないかのように振る舞うのです。 「とにかく、弟くん、君の姉さんを救った私を、こんな風に拘束したりしてはいけないのではないかなぁ。そのよくわからないものを一旦置いて、私の拘束を解こう?ね?」 エルフの弟は、にっこりとしました。そして、言いました。 「わかりました。僕は、姉を救ってくれたお礼に、貴方に最高の快感を味わわせて差し上げたいと思っています。」 ……次の瞬間、エルフの魔力が流れ込み、それが男の精神を犯しました。そして同時に男の意識のどこか深いところで、今までの自分が書き換えられていくような、強烈な恐怖感を覚えました。それはまるで一年ものことのように思えましたが、実際には、その恐るべき魔力が流し込まれた時から一瞬に過ぎませんでした。 「あ ア、やめてェエ……、もうゆるしてッ」 「ふふん、義兄さんはかわいいですねぇ。もう音を上げているのですか。」弟が笑います。男の体はざわざわと欲情に目覚め、すでに抵抗の意思など残っていませず、男はぐすぐすと鼻を鳴らしてすすり泣いておりました。「義兄さん、こんなことならもっと早くからこうしておけばよかったです。僕、ちょっと待ちすぎてしまったかもしれません。まさかあの姉が、人間如きを本気で好くと思っていなかったものですから。だから、貴方をただの性奴隷に堕として、姉の目を覚まさせないと。」 などと弟エルフは男の体を愛撫しながら言っていましたが、「そろそろ良い頃合いかな?」と言って、後庭に指を這わせました。そこはすでに柔らかく解け、ローションで濡らされたそこをくちゅくちゅと掻きまわされれば男堪らず、甲高い声を上げました 。 「やめてくれ!おかしくなってしまう!お願いだから!いい子だから!」 「そうだなぁ、じゃあ今度はこれでいきましょうか」弟エルフは楽しそうにはしゃいで、何本もの大人の腕ほどの太さもある張り型を取り出してきます それはエルフに伝わる秘宝の一つであり、エルフの中でも使える者は少ないというものでした 「あなたのここに入るか心配だが、これでも入らぬことはないでしょう。義兄さんは痛いのは苦手ですか?これは、優しく愛してくれるんですよ。兄さんも気に入ってくれるといいんだけど」弟エルフが呪文を唱えれば、それを合図として張り型の先にびっしりと細かい触手のようなものが生まれていきます。そしてそれらが男の後門にあてがわれるようにして入り込み、ゆっくりと、奥まで進みます 「ああ、無理だから!っ、許しておくれ、あっ、入ってくるぅうっ、……いやだっ!いやだぁ!!」男は真っ青になって泣き叫びます。 「いやだ、抜いてくれッ!頼むッ!助けてくれぇっ……!!」「だめですよ。これから義兄さんが気持ちよくなれるかどうかなんですから」と弟エルフは尚微笑を浮かべて張り型を奥へと押し込んでいきます。 あまりの気持ちよさに、男は自我を手放しそうになりました。そして、絶望のあまり、ヘラヘラと笑いながら卑屈な口調で交渉を始めました。 「ごめんなさいっ、俺が悪かったです。気高いエルフの弟様は、どうしたら俺をお許し下さいますか?お願いです、もうやめてください、壊れてしまいます。何でもしますだから、やめてください。俺みたいな虫けらが貴方様の姉君と結婚するなんて、とんでもなかったです。ごめんなさい、どうか、許してください。」 男エルフはそれを聞いて、鷹揚に笑いました。 「まさか!あなた如きがこの屋敷に入ったことなど、私たちはそれほど怒ってはいないのですよ。今は、ただただ遊びたいだけなのです。」弟が笑う。「そうですね、姉さんのま前で僕の性奴隷になりたいから婚約は破棄し、仲間もエルフの森に呼ばず、一人孤独に僕と遊ぶ時と宣言するなら、今は見逃してあげてもいいですよ。。」 「はいぃ!喜こんで奴隷になります!」男はもはや、恥も外聞もなく懇願しました。どうせ性奴隷になればこんな遊びは目一杯やられるのに決まっているのに、そんなことすらわからずに男は懇願します。「お慈悲をッ、どうかッ」 それを見て弟エルフが笑います。「では決まりだな」 その言葉と共に、張り型が盗賊の中で激しく動き出しました。同時に、乳首を強く噛まれて、盗賊は甲高く声を上げます。 「ああ ひィッ!!あっ、あっ、あんっ」もはや奴隷と成り果てた男に、人権はありません。男の体は弟エルフたちのいいように開発されつくし、快楽を得るためだけの器官になっていました。 ある日のこと、男は婚約者であるエルフの皇女の前でその奴隷っぷりを披露しました。皇女はその様子の醜悪さに吐き気すら催し、婚約を破棄しました。弟のほうはそれを眺めて笑っています。「もうイっちゃったんだ。」 エルフ弟による苛烈なまでの拷問じみた行為によって、男は生まれ変わったのです。 エルフの弟は言いました。 「この者は病気なのです。自ら性奴隷となりたがるこの男は、僕が面倒を見てやりましょう。」なんと優しいことよと、周囲は拍手をし、幸先悪くなりそうな予感がした人間の仲間たちはコソコソと引き上げて行きました。 その日の夜もエルフの弟は男を弄び、やがて空が白み始める頃になってようやく終わりを迎えました。 「あはは、まだ痙攣してる。やりすぎたかな?でも、まぁ、いいか。」 痙攣し、無様な姿を晒す男に、弟エルフは言います。 「うん、今夜は楽しかったよ。また遊ぼうね、奴隷。」 こうして男はエルフ弟のペットとなり、毎日のように彼によって弄ばれています。彼の部屋に行くたびに、いつも新しい玩具を与えられ、その度に壊されてしまうほど激しい責めを受けていました。「奴隷君、今日はこれを使ってみよう。」「これはすごいぞ。ほら、こんなにも柔らかい。」「さぁ、入れておくれ」 最初は痛みしか感じなかったはずの後門も、もはや快楽のための器官でした。「あぁ、んっ……」 「さぁ、こっちへおいで」と誘われれば、逆らうこともできません。 「はいぃ……」 「よしよし」 まるで犬のような扱いを受けながら、男は幸せを感じていましたとさ。めでたしめでたし。 少年はそこまで語ると口を閉じ、例の、美しい蒼の瞳で恭しく王様を見ました。王様は、その瞳の美しさを堪能した後の、しばしの沈黙の後言われました。「なるほどのう。色欲に目の眩んだ男は、だ更に強烈な色欲の持ち主の虜となったわけか。」「そうでございましょう。」少年は白い睫毛を伏せて、静かな声で相槌を打ちました。「今日の話も、また興深い話であった。」と、王様は言われました。「まだまだそなたの話は面白い。」そうして王様は、今夜も少年に命じられました。「明日の夜もまた、夜伽に参るがいい。そして、余のこの世の慰みに、不思議な話を聞かせるのだ、よいな。」 「ところが、そうは参りません」 と、少年が今日は顔を上げてはっきりと申しました。 「どういうことだ。」 王様が尋ねます。 「せっかくですから、特別に今夜はもうひとつ、短いお話をいたしましょう。」 むかしむかし、と始まるそのお話に、王様はすっかり釣り込まれて、聞いていました。 王様は、ご自分が小さな頃、このようにお話を聞かせてくれる乳母がいたことを思い出しました。 乳母が、王様を、いえ、その当時はまだ王子だった幼い彼を、先代の王様の命令で暗殺しようとした時から、王様は、もう誰も信用するまいと心に決めたことを、王様は苦いような甘いような気持ちで、ふと思い出したのでした。 「昔々、あるところにお話の上手い下女がおりました。その下女は、王様に仕えて、毎晩夜伽の寵愛を受けたのち、寝物語に大変面白いお話を致しましたので、王様は、千夜続けて下女の許へ通いました。」 「そうするうちに下女は身ごもり、その子は、下女の子であるという素性を隠して、王子様として、子のなかったお妃さまに、大変可愛がられて育ちました。」 「しかし、お妃さまが弟君をお産みになって、事情は一変しました。」 「お妃さまは、ご自分がお腹を痛めてお産みになった子が王位を継げないのを、大変哀れに思われました。」 「そこで、王子を産んだ下女に命じたのです、王を暗殺せよ、お前が生んだものはお前の手にかけ始末せよ、と。」 「勿論、そのようなことを、下女に出来るはずもありません。侍女は、命令を拒んだ罰として、蠍や蛇の住む洞窟へ幽閉され、そこで孤独に餓死するはずでした。しかし、そこには魔法のランプがあったのです。」 「侍女は、魔神にお願い事をしました。一つは、自らの息子が何とか宮殿で生き延びられること、二つ目に、国を富ませ、人民を安心させる賢い王となること、そうして最後は、もしもそのような王として相応しくない行動があれば、王座を降りられること。」 王様は、ここまで聞いて、不思議な気がいたしました。 おかしい、この物語は、どこかで聞き覚えがあるようだ…しかし、思い出せない…一体、どこで。 しかし、王様は頭がぼうっとして、なかなか考えがまとまらないようでした。 「王様、貴方様のお母上のお話です。あなたは今や、暴君になってしまわれた。終わりです。あなたは魔神の国に連れて行きます。私の番(つがい)として。」 ふと王様が少年を見ると、そこに立っていたのは少年が大人になったような、眩いばかりの美丈夫でした。 王様は言いました。 「いやだ、余はお前の番などにはならぬ。」 「だめです。7つの願いを叶えた魔神は、願った者の魂をさえ奪えるのです。暴虐の王よ、あなたは既に国からの必要などなくなりました。私の伴侶として、永遠の時を生きなさい。」青年がそう命じた時、王様は、自分が自分でなくなるのを感じました。 それは、深い喪失感であり、また、最早、責を負い、危険な矢面に立つ必要がないことへの、不思議な安心感でもありました。 こうして王様は魔神(ジン)に攫われ、私月の前から姿を消したのです。 今でも、私は考えます。あの王様は、今幸せなのか不幸せなのかと…

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