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第1話
俺と宮本が付き合ってどれくらいになるのだろう。
一つ言えるのは、もう互いを分かり合うのに十分な時間を過ごしたってことだ。
…と、俺は思っていた。しかし、最近、俺は宮本のことを何もわかっていなかったと知る。
宮本は、極度のマゾヒストだった。
なよっとした感じの細くて女性的なコが、とかならわかる。
でも、宮本みたいな消防士とか海上保安官とかやってそうな重量のある筋肉バカがマゾだと言うのは、ちょっとギャップのある話である。
発覚したのは、去年のクリスマスだった。
俺たちはクリスマスを楽しく過ごしていた。
普段はあまり口にしないフライドチキンとピザと言うジャンクフードで腹を満たし、学生みたいにゲームで盛り上がり、シャワーを浴びていざ合戦、というところで、なぜか宮本が俺に差し出してきたのは赤い大型犬用の首輪だった。
俺は目を剥いた。SMは、俺にとってはギャグとかにしか出てこないものだった。それを宮本は現実世界へ持ってきたのだから。
俺は思い知った。こいつを抱いていた時、俺は気持ちよかったけれど、こいつは欲求不満だったのだ。
調べてみたら腸壁は異物を挿れられると勝手に粘液を出すと言うだけで、抱かれている間、宮本は多分もっとひどくされたかったのだろう。
俺のサド心に火がついた。恋人に気持ちよくなって欲しい。それがきっかけだった。
自分で調べてグッズを買い、蝋燭を垂らしてみたり、バラ鞭と呼ばれる何本も細い鞭が付いたもので背中を叩いてみたりした。
でも宮本の欲は底なしで、安全なプレイでは満足できなかった。
宮本は、首を絞められるのが好きだった。それから、目隠しをされてナイフを突き立てられたりも好きだった。
腹を殴られるのも好きで、体にピアスを入れて欲しがった。俺は頑張ってやってみるけど、どう考えても絵面が酷い。
宮本の要求するシチュエーションはまるで拷問のようで、俺のほうが勘弁してください、そんな酷いこと出来ない、と泣かされたのは一度や二度ではない。
恋人の異常性癖に、心底引いた。どこでどうして、こんなにも歪んでしまったのか。
「お前、虐待とかされてたの?」と宮本に聞いたが
「いや、いい両親だよ。ヒロも会った事あるだろ?」と言われた。
確かに、挨拶に行ったときは良い人たちだった。宮本に自然体で接していて、俺の事も同性愛者ということより、息子が選んだ人、として俺を見てくれた。
同性愛者もノンケからしたら、やはりノーマルの人間がSMなどのアブノーマルの人を見るような感覚だろうか。
だとしたら、宮本のご両親はやっぱり懐が広い。
とにかく、宮本は健全に歪んでいるし、俺は宮本の願いを叶えようとしたら多分、殺人犯になってしまうだろう。
それぐらい激しいドMなのだ、宮本は。
そんな俺でも、一つだけ好きなプレイがあった。
乳首いじめだ。
宮本を縛って筆でくすぐったり、指で撫で回したり、少し爪を立てて引っ掻いたりする。
これの良いところは、痛そうでないことだ。それから、宮本は乳首をいじられることをひどく恥ずかしがる。
その様子が、いつも乗り気で色事に及ぶ宮本と違って見えて新鮮なのだ。
宮本も恥ずかしいことをされる気分は、まんざらでもないらしい。
というわけで、おれは新年の姫初めを、乳首責めにすることに決めた。
「まあ、丑年だし。」
と俺は、買っておいた物々しい器具を取り出して、ベッドへ縛り付けた宮本へ見せつける。
「搾乳機だ。」と説明すると、宮本が顔を赤くした。
「ち、乳首、、やだっ、」
無意識に拘束された手首を解こうとする宮本。何も説明していなかった分、反応が良い。
「いまさら何言ってんだよ、こんな、もう外に晒せない恥ずかしい乳首して。こっからどうなろうがもう同じだろ。」
俺がなぶりすぎたせいか、宮本の乳首は結構な存在感を放っている。
それを人差し指と中指、親指で挟むようにしてぎゅっぎゅとひねり回すと、宮本が「ああっ」と呻いた。
明らかに感じている。そのようすが可愛くて、俺は乳首ブリーダーと化してしまう。
「ほら、宮本の乳首、今からどんどん育ててこうねぇ~、嫌がる振りしても無駄だよ、知ってんだからなお前、気持ちいんだろ。」
先っちょに触れるか触れないかくらいの優しいフェザータッチ。宮本が体をひねって避けようとするので、体の上に乗って動きを制圧する。
「やめっ、やめろ」
そんなこといいつつ、宮本の左乳首が立ってきていた。俺は舌なめずりして、そこをツンツン突っつく。
「嘘付け、宮本のココ、いじめて欲しがってるぞ~。なんだよこの全面降伏ちくび、いやらしいじゃん。」
「変態ッ!」
宮本が顔を真っ赤にして抗議してくるが、両手を万歳の格好で手錠で繋がれて、ベッドのパイプに繋がれているこいつの方が絶対変態だと思う。
「うるせえ、お前のせいだろ。俺はどノーマルだったのに、お前が引きずり込むから・・・」
うるさい口はギャグボールでいましめる。乳首責めをするときの宮本の口は嘘つきだ。
だから、俺は体の声しか聞こえないように、宮本の口を塞ぐ。
「~~ッッ!!!」
宮本の目も嘘つきだ。怯えたみたいに見開かれているが、本当はこうやって手も足も出ない状態でいたぶられるのが好きなのだ、ど変態め。
「おらっ、ちゃんと胸張ってろ、ドヘンタイ野郎。」
上半身を縮めようとする宮本の頬を軽く叩き、左の乳首を思い切り、しかし、一応力加減しながら引っ張る。SMプレイには愛情と注意力が必要だ。痛みと快感の丁度真ん中あたりを狙ってイジメてやる。
どこをどうすれば宮本が気持ちいいのか、俺は記憶力だけは無駄にいいので、大体熟知している。
親指と中指で乳首を挟み込み、上から人差し指を使ってつぶすようにいたぶる。ぐりぐりと、爪を立てて。
カリカリと、乳首の裏側もくすぐってやる。
全方位からイジメられて、宮本の乳首が充血してくる。
「ン”ン”~ツ、フ、ウ”ーッ、」
「ちんこみたいに乳首勃起させやがって。お前は変態だ、男でもないし、むしろ人間でもない。この乳牛が。無駄にでかい胸筋見せびらかしやがって。」
講義するように打ち鳴らされる手鎖を無視して、乳首の周りを焦らすように優しく撫でる。暫くそうして可愛がっているうち、宮本の息が上がってきた。
「ほらあ、陥没乳首、出てきちゃったぞ。どうして欲しくて出てきちゃったのかなぁ~」
宮本がいやだいやだというように体をよじる。胸がぷるんぷるん動いて、誘ってるようにしか見えない。
「こんな、空気にもロクに触れてない陥没乳首俺が今から指でこねくり回したら、お前どうなっちゃうのかなぁ~」
陥没していた右の乳首の先っちょに触れるか触れないかくらいの位置で、指先を動かすと、宮本は何かを想像したのかまた身じろぎした。
「ン”、アア”~~ッ‼」
触ってやると、思ったより良い反応が返って来た。
「キモチイイか?じゃあ、機械でいじくりまわしてやろうな。機械は泣いても叫んでもやめてくれないぞ、」
と、俺は搾乳機を取り出す。
脅すように起動させてその音を聞かせると、宮本の体がぶるっと震えた。
「…期待しちゃった?そうだよなぁ、宮本ってそういうやつだよなぁ。」
吸盤で宮本の胸に、搾乳機を付ける。宮本が暴れて振り払おうとしたので、俺は乳首をぐいっとつねった。
「…ンウ - - -!!!」
「お前は自分の立場が分かってない。お前は乳牛なんだ。乳牛なんだから、搾乳されるのが当たり前だろ。」
宮本は家畜扱いされるのが好きだ。表面上は、俺に組み敷かれるのを嫌がるふりをしている。が、本当はこういう風に俺に支配されるのを喜んでいる。
外ではよく頼りにされている宮本が、こういう形でしか誰かに依存したり弱い面を見せられないのを、俺は少し可哀想にも思う。そして、俺が持ってる嗜虐性が満たされるのも感じる。ので、俺はどうしようもなく宮本をなぶることになるのだった。
「ッてめえを、ッ、見てると、ッ!そのデカケツ、壊したくなるんだよッッ‼‼‼この変態マゾ便器‼‼犯されるために存在してるくせに、っ、泣くな‼‼っ、おらっ、喜べよお、イジメてるみたいだろうが、」
宮元の尻を思いっきりはたく。俺の手形が綺麗に付いた宮本の尻は、びくびくと痙攣し始めた。
「どうだ、搾乳機の味はよお、っ、」
答えるみたいに、宮本の尻の穴がひくひくしだす。宮本は俺好みの引き締まったいい形の尻をしていて、それが目の前で左右に揺れ出した。
その尻を揉みしだき、噛みついてやる。一瞬宮本の体がびくりと震えた。
「ン”ア”ッ‼‼」
血が出るまで噛んでから、優しく舐める。それを繰り返していたら、宮本の尻は入れ墨でもしたみたいに赤く色づいた。
「宮本、今お前の尻どうなってるか、わかるか?気持ちいいか?なあ、」
俺は宮本にのしかかり、目隠しを取る。宮本はボロボロと泣いていた。この顔だ。この顔が一番そそる。羞恥心と悔しさと、一番に快感が表現されたこの顔。ゆっくりと宮本の首に手を掛け、咽喉仏を潰すようにして力を込めていく。
「ウ、グ、ウ~~‼」
そのまま、犯した。宮本の中は温かいというか熱い。
「…首絞められて締まるとか、どんだけ淫乱なんだよ。」
宮本は答えない。声が出せないのだろう。時折、えづくような息をする。
その息すら止めてやりたい気持ちになって、口枷を外し、口を口で覆った。
宮本はだらしなくよだれを垂らして喘いでいた。そのよだれを舐め取り、自分のと混ぜて宮本の気道を塞ぐように送り込んでやる。
「宮本ぉ、嬉しいか?お前の中、俺でいっぱいにしてやる。嬉しいだろ?おい、」
「お、ぐっ…」
「幸せだろお前さぁ、」
幸せって言え、言えよ、と脅しながら、ゆっくりと揺さぶり、宮本を犯す。宮本は本心なのか言われるがままなのか、
「ひ、ひやわへですぅ、」
と言った。洟まで垂らした情けないその顔に、俺は心が満たされるのを感じる。
「そうかよ、そうかよ、」
搾乳機の出力を最大限にして、宮本の陰茎をこすりあげながら、音を立てて犯す。宮本はもう日本語をしゃべれるほど脳が働いていないのか、
「お”、ひ、ぃ…!」
と、哀願なのか何なのかよくわからない声を漏らす。
手がいくつもあったらいいのに。宮本の好きなことを全部してやりたい。首を絞めたりとか、腹を殴ったりとか。
宮本の体の中は激しく痙攣して、やがてほとんど動かなくなった。
ぐったりした体を好きに扱い、射精した。
物と化してしまった宮本は重たくて、温かくて、可哀想で。俺は、自分の中の狂気をゆっくりと冷ましながら、宮本を抱きしめる。
見れば、さすがにやりすぎたのか、宮本が涙を流していた。瞳が上にぐるっと回ってしまっていて、焦点は合っていない。
「・・・おーい、聞こえるか?」
頬をぴたぴた叩きながら、呼び掛けてみるが返事はない。イッちゃったらしい。失神に近い状態なのだろう。息はしてるし、大丈夫だろう。
半年前、首を絞めすぎてしまって同じようになった時は、俺は慌てた。宮本を廃人にしてしまったかも知れない、と思った。
しかし、暫くして正気を取り戻した宮本に「サイコーでした」と言われて、ああこいつに加減はいらないんだな、と理解した。
無駄に頑丈な恵まれた体躯は、残念なことに俺にいじめられることに役立っている。
多分大丈夫だろう。
俺が知らなかったのは宮本のことだけではなかったのかも知れない。俺は俺自身のこともよくわかっていなかったのだろう。
宮本といると、俺はおかしくなる。
宮本を口汚く罵り、AVの男優みたいに言葉責めする。宮本が泣こうが喚こうが一切慈悲なく追い詰めることが出来る。宮本にそういう自分にされてしまったのか、俺に元々そういう部分があったのか。どちらもなのか分からないけれど、
とりあえず、俺は満足したのでこれでプレイは終わりだ。俺たちのプレイにセーフワードはない。宮本がやめてと言っても、泣きながら許して下さいと言っても、俺はやめない。
大体俺が満足するか、このまま宮本の体を破壊したらどうなるのか怖くなったら終了だ。
今日は宮本が恥ずかしがって悶絶して絶頂を迎えて泣きながらイっちゃう姿を見られたので満足だな、と思う。
「・・・可愛かったぞ。」と、聞こえていないのをいいことに耳元で囁く。
…ごめんな、こんなことしか出来なくて。
本当はもう少し優しくしたいけれど、こういう風にしか俺たちは気持ちよくなれないし。別に常日頃宮本を虐待してるわけではないし。
とにかく、こうして俺たちの新年は始まったのだった。
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