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第3話

集合住宅の中に、一軒の家がある。 そこのリビングで、兄弟が戯れていた。 否、戯れていたのは弟だけだ。兄は、嫌がっている。その嫌がっているのを、弟は愉しんでいた。 「ふふ、兄さん、ここ、敏感になっちゃって面白いね?」と、弟は言う。 「触んな、キメーんだよ。」と、兄は弟から離れようと身を本気でよじるが、兄の四肢はない。よって、兄は弟から離れることができない。 弟は、そんな兄を猫か何かのように抱きすくめて、敏感になっているところをいじくり回す。 そこは、切断された四肢の先だ。そこは、ある種の新しい細胞が弾けるようなスピードで補修を始めており、極めて敏感な部分なのである。 そこをいじられる度に、兄の神経に、痛いようなくすぐったいような感覚が巡る。それは股間に集まってくる熱に似ていた。 「兄さんの肉の芽にさぁ、穴が空いてるよね。この中ってどうなってるの。」 それは、彼の骨折した骨を抜き取った跡だった。弟は、無遠慮に穴の中へ指を入れてみる。 「やめろッッ!クソ野郎!」兄は本当に嫌なのか、ジタバタと無計画にもがく。しかし、弟の思いの外力強い拘束に、兄は反抗出来ない。 「どうせ逆らえないんだから大人しくしなよ」弟は、兄を抑えつけ、乱暴に兄の手足の穴をいじくり回す。兄は 「ヒッ」と悲鳴のような声を挙げて、もがくのをやめた。下手に動けば穴にずぶりと弟の指が入り込むからだ。 弟の指はゆっくりと穴の中を探る。その空洞の中は、確かな温度と湿度を保っていた。そのぬっとりとした感触に、ぞわりと弟の中で嗜虐心が湧く。この穴を様々に虐めてみたらどうなるのか。 弟は、昔自分が兄に殴られた時の記憶があった。苛ついているとか、かおがきにいらないとか、それだけのことで殴られる日々。だが、その日々は終わったのだ。今は、逆に兄を自分が虐待している。 そう考えて、ずぶりと二本目の指を穴に挿入した。 「やめろ!気色悪いんだよ!死ね!」と兄は罵るが、弟は余裕だ。 「僕が死んだら、こまるのは兄さんだけどね。今の兄さんには、僕しかいないよ。」と言われて、兄は大人しくするしかないと悟った。 大人しくしていると、右腕の穴に突っ込まれた弟の指が、びりびりとした感触を伴い、おぞましく感じられた。しかし、弟はその中の感触に、もっとおぞましいことを考えついた。 「そうだ、この穴を使って兄さんで遊んでみようか。」 兄は黙ったままだ。こうなってしまえば弟の言うなりになるしかない。自分には選択権はないのだから。 まず、弟はアルコールで兄の右腕の穴を消毒殺菌した。兄の敏感なところを、アルコールでなぶる。 「イッッッ‼︎」兄は、敏感なおくの方に当たるたび、みをよじり歯を食いしばった。 「クソッッ!この変態野郎!」そういった言葉を投げかけるのみで、ちっとも対抗できない。 「奥まで綺麗にしとかないとね。」と、弟はなんのこともなく消毒を続ける。 「お前は変態野郎だ、光流。」と、呼びたくない弟の実名を挙げたのは、兄、武流の呪いたいと言う欲求からであった。 「お前は、どうせまともに機能してねぇんだ。あの華菜とか言う女がいたって同じことだった。お前は、どうせまともに恋愛もできねぇ。」 「違うよ。」と、光流は兄の武流を真っ直ぐに見つめて言う。 「投げ出されたら困るのは、兄さんだけ。僕は、日常に帰っていける。まぁ、今は兄さんを性欲処理に使ってるけどね。」 さて、準備もできたし。と、光流は兄の目の前に自分の性器を出した。 「舐めろ」と言う言葉の圧の容赦のなさに、兄は逆らいようがないと知る。 教え込まれた通りには丁寧に舐められないから、ただもう、何も考えず、頭を空にして舐め上げる。その拙い様子も弟は割と気に入ったのか、 「いいよ。」と言う。 「そろそろ挿れてみるね。」と、弟は自分の性器を兄の右腕の穴に挿入した。 「ああ、やっぱり気持ちいい。」と言う弟と、声にならない悲鳴を挙げる兄。敏感になっているところにドロリとしたモノが入り込み、遠慮なく突いてくるその不快さ、しかし、不快の中の快感に、兄は悲鳴を挙げる。耐えていた何かがプチリと切れるように、突然に兄はぐたりとした。 「なんだ兄さん、もうへばっちゃったの?まだ僕イッてないんだけど。」 「…耐えられねぇ。」と兄。 「脳みそに色んな感じが来て、めちゃくちゃになる。」 さまざまな感覚に脳を掻き乱されている状態なのだろうと、弟は推測する。それを知った上で弟は、 「むかし、僕に頑張れって言いながら根性焼きしてきたよね、兄さんも。」と言いながら、弟は容赦なく性器で兄の穴を突く。 嫌悪感、快楽、くすぐったさ、不快感、強烈すぎる刺激。しかし、なかなか気絶できない武流は、その感覚に翻弄されていた。 光流は、その様子にすら興奮を覚える。ついに射精した光流の生暖かい精液に、武流の背中が海老反りに跳ねる。 「あ、っ、おま、中、で…、」武流はそれだけを言って、気を失った。限界だったのだろう。光流は、それを見ても何も言わなかった。こんな兄はこうするのが相応だと言わんばかりに、ただ、 「あー、もうへばりやがった。もっと今日は楽しもうと思ったのに」と言い、面倒臭そうに兄の穴の中へアルコールのウェットティッシュをねじ込んで、掃除を始めた。 その刺激で、武流は再び目を覚ます。痛みに似た刺激が、武流の脳味噌をかき混ぜ、目を白黒させながら武流は暴れる。 「ちょっと、綺麗にしてやってるんだから、じっとしててよね。」と、光流は兄を抑えつけた。しかし、なかなか武流は大人しくならない。光流に噛み付きさえした。それだけ、ショックが大きかったのだろう。 そんな武流を、弟は乱暴に髪を掴んで引き摺り回す。その筋力は、見かけによらず、四肢を失った兄くらいは引き回せる力がある。それが、兄には悔しくてならない。歯を剥き、咬みつこうと反抗する。だが、次第に反抗は弱まっていき、しまいには少しずつ虚勢は剥がれ、目が虚ろになり、されるがままになった。 「自分の立場がわかった?」と言われてしかし、 「知るかよ」と、小さく呟くのだった。

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