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第4話
先輩が去った後、僕は更衣室で一人立ち尽くしていた。彼の言葉は、些細なこととは思えなかった。何か彼が抱えている悩みがあるのは明らかだった。
「先輩、どんな些細なことでも、分かち合いたいと思うのは当然だよね」
心の中でつぶやきながら、僕は彼の後を追うことに決めた。
プールの外に出て、校舎の廊下を歩いていると、偶然にも先輩が一人で立ち止まっていた。彼の表情は深刻で、何か考え込んでいるようだった。
「先輩」
僕が声をかけると、彼は驚いたように振り返った。
「松元か。何か用か?」
「実は、先輩のことが気になっていて、お話を聞きたいと思って」
僕は率直に言った。先輩はしばらく黙り込んだが、やがて微笑みながら頷いた。
「そうか。わかった、じゃあ、一緒に散歩でもしようか」
僕たちは校舎の周りを歩きながら、ゆっくりと話をすることになった。
「実はね、俺は将来のことで悩んでいるんだ」
先輩が打ち明けた。彼の言葉に、僕は驚きを隠せなかった。
「将来のこと?」
「そう、将来の進路や、自分の適性について考えているんだ」
先輩は静かな声で続けた。
「周りの友達はみんな進路を決めていて、将来の夢を持っている。でも、俺は何をしたいのか、よくわからないんだ」
彼の言葉に、僕は共感を覚えた。自分も同じように、将来のことで悩んでいた。
「でも、先輩。将来のことで迷うのは当たり前だと思いますよ。みんなが決めた進路が自分に合っているとは限らないし、夢を持っている人もなかなか少ないです」
僕がそう言うと、先輩は僕を見つめながら微笑んだ。
「松元、君はいつもそんなに前向きだね。俺も君のように、前を向いて生きていきたいと思う」
先輩の言葉に、僕は嬉しさを感じた。彼の笑顔が、何よりも僕に勇気を与えてくれた。
「先輩、きっと将来の道が見つかると思います。一緒に頑張りましょう」
僕はそう言って先輩の手を握りしめた。彼も笑顔で僕の手を握り返した。
「ありがとう、松元。君と話していると、心が軽くなるよ」
先輩の言葉に、僕は心から嬉しさを感じた。彼との会話が、僕にとっても大切なものだということを改めて感じた瞬間だった。
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