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14.邪魔者になる未来(★)
早いもので転生して3か月の時が過ぎようとしていた。
「んっ……! あっ……」
行灯 の灯りが揺れる薄暗い小屋の中で、2つの影が重なり合う。
「はぁ……っ、ぁ……ン……っ!」
薄くて熱い舌が俺の体の上を這 っていく。肋 骨、みぞうち、そして胸の先へ。
「あン! ぁ……っ、んゃ……っ」
全身に甘い痺 れが。口からは嬌声が漏れ出す。
脱力感が深まるのに連れて、リカさんの金色の瞳も虚ろになってきた。
催淫効果。これもまた『妖力供給』の力であるらしい。
俺的には有難い半分、余計なお世話半分といったところだ。
「んくっ……!」
お腹の中のリカさんがずしりと重たくなる。
早く欲しい。リカさんの種が欲しくて欲しくて仕方がない。
「あっ!? ふっ……ぁ……っ」
乳首に吸い付かれる。小悪魔的で淫猥なリップ音が、俺の鼓膜を揺する。
恥ずかしいのに、物凄く興奮もしていて。
「はぁ……っ、ぁ……ぁン! あぁっ……!」
縋 りつくようにしてリカさんの首に腕を回した。
素肌と素肌が重なり合う。しっとりと汗ばんでいた。リカさんの長い髪も、俺の体に張り付いて。
何もかもが馴染んで、境界線が曖昧になっていく。
「やっ! ぁ……り、か……さっ……あン! アンっ! ひゃっ……!」
突き上げられる。何度も。何度も。イイところも余すことなく全部。
「ァンっ! あっあっあっ……!!! んぅ♡ んぁっ♡」
抱き起されてリカさんの膝の上へ。
俺のペニスがリカさんのお腹に触れた。薄く6つに割れた腹筋が、俺の先走りで汚れていく。
目が離せなくなる。背徳感と征服欲がごちゃ混ぜになって。
「んぁ……!」
リカさんが俺の胸に顔を埋めた。
左手で俺の胸を揉みながら、反対側の乳首を舐めしゃぶっていく。
「んく……っふ、……ふぁ……っ」
痛い。舐められる度にじんじんする。それでも止めて欲しいとは思わなかった。
「甘い……蕩 けて、……しまいそうだ」
「もっと飲んで。……それで……俺にもください」
緩く腰を振って内側を締め上げる。強請るように。甘えるように。
「あっ……」
リカさんが小さく喘いだ。すっかり聞き馴染んだ上品で温かい声が、快感に染まってる。
ああ、どうしよう。めちゃくちゃクる。もっと聞きたい。もっと。もっと。
「あ゛!? んん゛っ……! ふっ、ぁンン!!」
突き上げてくる。どんどん激しく。がむしゃらに。
壊れそう。立てなくなる。声がガラガラになる。
……だろうけど、そんなこともうどうだっていい。
「りか、さん…す、……きっ……すきぃ……っアン! あぁ゛っ!! 出して、俺の……ン……中、に……っ」
「っ! ゆう、た……っ」
「んんぅ!」
キスされる。噛みつくように。貪 るように。
「……?」
不意に甘くなった。慈しむように俺の頭を撫でて、唇を食んでくる。
「リカさん……?」
「愛してる」
澄んだ瞳が俺を捉える。変わらず熱いけど、意識はしっかりとしていた。
これは熱に浮かされて言ってるんじゃない。
本物の愛の言葉なんだって、都合よく解釈する。
「俺も……っ、愛して……ます……」
愛してる。
重たいけど、幸せを強く実感させてくれる言葉だ。
まだまだ言い慣れないけど、これからも大切に紡 いでいきたいと思う。
「あ゛! あぁ……!!」
「ゆう、~~っ、た……っ!」
リカさんが俺の中で爆ぜた。お腹が文字通りいっぱいになっていく。
堪らず口元を覆うと、布団の上にそっと寝かされた。
「もふ……もふ……」
「ふふっ。ああ、優太が大好きなもふもふだよ」
銀色の太くて長い尻尾が、俺の体を包み込んでいく。
4本ある内の1本を腕と脚で挟んで、顔を埋めた。
すんっと鼻を鳴らすと薬草と太陽の匂いがした。
射精は後2回。それが済むまでは、俺とリカさんは繋がったままだ。
不便に感じることはない。むしろ多幸感に満ち満ちていて……ぶっちゃけると、この時間が一番好きだったりする。
「優太。今日もありがとう。無理をさせてごめんね」
労わり。所謂『後戯』ってやつだ。そっと頭を撫でて、頬や目尻、唇にキスをしてくれる。
触れる手つき、くれる言葉、何もかもが優しくて心底ほっとする。
「リカさん」
「ん?」
「大好きです」
リカさんへの思いが詰まった風船がぱーーっと弾けて、笑顔や好きの言葉に変わっていく。
かと思えば、また『思いの風船』が膨らんでいく。エンドレスだ。終わりが見えない。
「君には敵わないな」
「それはこっちのセリフですよ。……んっ……!」
それから俺は2回目……3回目と受け止めていった。
栓が抜けて溢れ出ていったそれらを、リカさんがせっせと回収していく。
これは……正直苦手だ。この行為には生産性がない。その事実をまざまざと痛感させられていくようで。
「そうだ。急な話だけど、今度私の弟が里に来ることになってね」
「えっ……?」
思考がショートしかけたところで、辛々立て直す。
「どういうこと……ですか?」
リカさんの話によると家出をした後も、お婆さんとは秘密の繋がりを持っていたらしい。
そこでリカさんはとある相談を持ち掛けたのだそうだ。
里の守護のため、リカさんの考えに賛同してくれそうな妖狐はいないものか? と。
すると、リカさんの弟の薫 さんが応えてくれた。
部下の中に適任者がいる。村の守護に役立てて欲しい、と。
「薫からは愛想を尽かされているものとばかり思っていたから……本当に嬉しくてね」
リカさんは破顔して照れ臭そうに頬を掻いた。一方の俺はと言えば――気が気じゃない。
信用出来るのか? 罠なんじゃないのか? 協力するフリをしてリカさんを連れ戻す気なんじゃ……?
「あっ、あの――」
「大丈夫だよ。万一の時には、私が彼らを追い出すから」
「でっ、出来るんですか!?」
「一応ここは私の世界だからね」
なら安心か? 俺がほっと息をつくと、リカさんが目を伏せた。その表情は何処か苦し気で。
「君の紹介は慎重に行おうと思ってるんだ」
「俺が人間だから?」
「……うん」
「新しく来てくれる妖狐さんはその……やっぱり人間嫌いなんですか?」
「分からない。視察の日に探ろうと思ってる」
この里にいると実感が湧きにくいけど……人間と妖は長いこと敵対関係にあるらしい。
何百年、何千年にも渡って血で血を洗うような争いを繰り返してきているそうだ。
そんなんだから、リカさんに近い考えを持った妖狐であったとしても、人間に好意的であるとは必ずしも言い切れない。
人間と妖が敵対関係にある以上、憎しみや嫌悪感を持っている可能性の方がずっと高いと言えるだろう。
俺か。
新しい妖狐さんか。
どっちを取るのか……何て、考えるまでもないことだ。
俺は妖力を持っているだけの普通の人間。100年も生きられないんだから。
分かり合えない。
悟ったら、その時は――潔く身を引こう。
「だから、直近の視察の場では挨拶はしなくていいよ」
「分かりました。無駄にバチバチしないように、俺は隠れておくようにしますね」
俺は笑った。必要があると思ったからだ。期待した通りリカさんの表情が和らいでいく。
「……ごめんね」
「気にしないでください! 俺は大丈夫ですから」
そう。大丈夫だ。そもそも論で俺は、殺される前提でこの里に来た。
逃げずに守ろうとした。
御手洗 に、ほんの少しでも近付けた。
その実感を得られただけでも十分だと、納得した上で。
だから、問題ない。これ以上を求めたら欲張りになる。前世 の俺に戻ってしまうから。
「優太……?」
「すみません。何だか眠くって。このまま寝させてもらってもいいですか?」
「勿論だよ。無理させてごめんね」
俺はリカさんの尻尾に顔を埋めた。笑顔が崩れていく。顎に力を込めて目尻を引き結んだ。
「いつか必ず、君を紹介するからね」
「……はい」
新しい妖狐さんも俺のことを受け入れてくれて……。そんな日が来たらいいな。
切に願いながら深く頷いた。眠りの淵はまだまだ遥か遠い。
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