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転生して妖狐の『嫁』になった話【完結/改稿済】 17.私の可愛いお嫁さん(☆)(※六花視点) | 那菜カナナの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
転生して妖狐の『嫁』になっ...
17.私の可愛いお嫁さん(☆)(※...
作者:
那菜カナナ
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17.私の可愛いお嫁さん(☆)(※六花視点)
優太
(
ゆうた
)
の隣にいると、
頻
(
しき
)
りに思い出される情景がある。あたたかな
膝
(
ひざ
)
の上。見上げれば母上の姿が。母上は私と目が合うなり微笑んで、そっと頭を撫でてくれた。 優太の隣にいると、あの時と似た心地になる。安らぎと充足感。甘酸っぱいような、
擽
(
くすぐ
)
ったいような心地に。 もっと一緒にいたい。そう思うようになってからというもの、私はやたらと子供じみた行動を取るようになった。優太の気を引こうとしたり、
揶揄
(
からか
)
ってみたり。優太は私のことをどう思っているのだろう? 尻尾には異常な……特別な興味を持ってくれているみたいだけど。 『…………』 気になって何度も心の中を覗こうとした。けど、ダメだった。何も見えない。他の妖や人間相手なら、容易く読み取ることが出来るのに。神め。まったくもって腹立たしい限りだ。 『んっ……はぁ……っ、ゃ……っ』 優太の薄い胸に舌を
這
(
は
)
わせていく。色白で
華奢
(
きゃしゃ
)
だけど体温は高め。なめらかでハリのある肌は、彼がうら若い青年であることを物語っていた。 『りか……さっ……』 優太が快楽に染まっていく。だけど、これは偽物。作られた情動だ。行為を促進させるための一種の
機
能
にすぎない。 分かってる。分かっていても、つい夢を見てしまう。仕組まれた情欲の裏には本物の情欲が。優太もまた私を求めてくれているのではないかと。 『優太……』 熱で
蕩
(
とろ
)
けた思考の中、ゆっくりと距離を縮めていく。血色のいい薄い唇。重ねれば変わる。優太は私のものに。 『リカさん――』 『っ!?』 名前を呼ばれて我に返った。慌てて距離を取る。心臓が煩い。落ち着け。冷静になるんだ、私。息を整えつつ、それとなく優太の様子を窺う。 『えっ?』 優太は酷く傷付いたような顔をしていた。
顎
(
あご
)
の下には皺が寄り、黒く澄んだ瞳には影が伸びていて。君も望んでいたの? 求めてくれていたの? この私のことを? 「はっ……んっ、ぁ……」 思いを確かめるなり、私は優太に口付けた。一度し出したら止まらなくて。 「りか、さん……っ」 いじらしく私の名を呼ぶ。目尻からは涙が零れ落ちて。月並みだけど綺麗だと思った。同時に衝動が湧き上がってくる。汚したい。無垢で純粋な君を。 「抱きたい」 「っ!」 優太の耳元で囁いた。途端に優太の背が大きく跳ねる。
逸
(
はや
)
り過ぎたかな。内心で反省していると、ぎゅっと抱き返してきた。ああっ、何てことだ。堪らなく愛おしい。 「でも……ここ……じゃ……」 優太が気まずそうに目を伏せる。参ったな。周囲に目を向けられる分、優太の方が数段
上手
(
うわて
)
だ。苦笑しつつ優太の額に口付ける。 「山小屋に行こうか。あそこでなら存分に。
声
を
抑
え
る
必
要
も
な
い
よ」 「なっ!? なっ……!!!」 優太の顔が真っ赤に染まる。してやったり。……なんてね。優太の前だとつい子供じみた振る舞いをしてしまう。何処かで改めないと愛想を尽かされてしまうかもしれないな。 「それじゃあ、行こうか」 優太が頷いたのを見計らってゆっくりと抱き上げた。それと同時に私の着物の襟を掴んでくる。自然と思い起こされるのは、初めて会った日のことだ。 『おおおおっ!! おろさないで!!!!』 そう言って君は取り乱していたっけ。まったく。あれからまだ2日も経っていないというのに私達は……。いや、妖である私の2日と、人間である優太の2日とでは重みが違うか。優太は他の人間同様
儚
(
はかな
)
い存在だ。一息つく間に老いて、去っていってしまう。分かり切っていたはずの事実が重く圧し掛かる。 手がないわけじゃない。ただ、優太が
そ
れ
を望むかどうか。慎重に。決して強要してしまうことのないようにしないと。 大きく跳躍して山頂を目指す。途中で縁側でくつろぐ
猫魈
(
ねこしょう
)
・
梅
(
うめ
)
と目が合った。訳知り顔で笑ってる。敵わないな。だけど、里のみんなにはちゃんと話さないと。少なくとも
大五郎
(
だいごろう
)
は大目玉だろうな。ああ、気が重い。 「あの……本当に俺でいいんですか?」 優太が尋ねてくる。眉尻を下げた不安げな表情で。どうやら
ま
だ
ま
だ
足
り
て
い
な
い
みたいだ。もどかしい反面、楽しみでもある。次はどんなふうに愛を伝えよう。どんなふうに愛を乞おうか。 「優太」 「……はい」 「覚悟しておいてね♡」 「はい? ……はいっ!?」 戸惑う優太を他所に、鼻歌交じりに山を駆けのぼっていく。私の可愛いお嫁さんとの素敵な未来を思い描きながら。
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那菜カナナ
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