30 / 48
26.結婚式
「新婦様の入場じゃ~い!」
唐傘小僧の吉兵衛 さんの号令を受けて歩き出す。
プロポーズを受けてから二週間後のこの日、晴れて結婚式の日を迎えた。
会場はリカさんのお家だ。
俺は男だけど、立場上は嫁なので白無垢を着せてもらった。
でも、ぶっちゃけ全然似合ってない。
女顔のひょろガリもやしも、所詮は男なんだよな。
どうにも違和感が拭えない。リカさん、ガッカリしないといいけど。
「焦らずゆっくりね」
「はっ、はい……」
手を引いてくれているのは、ろくろ首の棗 さんだ。
今は首を引っ込めているから、見た目の上では人間と変わらない。
塩顔のTHE★和美人。
黒い髷頭 に、琥珀色の簪 スタイルで、真っ黒な着物を完璧なまでに着こなしている。
「おぉ! 主役の登場だ!」
「幸せになれよ!!」
祝福してくれたのは、俺の職場の先輩達。
屈強河童さんをはじめとした農作業組のみんなだ。
庭先にずらっと並んでる。
数にして二十人ほど。ほぼ全員参加してくれていた。
今日も忙しいのに。本当にありがたいな。
大五郎 さんは……やっぱ不参加か。
まぁ、仕方ないよな。切り替えてけ、俺!
「おわっ!?」
中にもたくさんの妖さん達の姿が。
豆腐小僧、一つ目小僧、小豆洗い、提灯お化け、化け草履、のっぺらぼう……本当にたくさん。
この二週間の間に、仕事を通じて仲良くなった妖さん達だ。
沈みかけていた気持ちがぐっと跳ね上がっていく。
「「「ゆー坊!」」」
「綺麗~」
「あの猫達、中々いい仕事をするじゃないか♡」
凄く賑やかだ。結婚式って、もっとガチガチで厳かなものだとばかり思っていたけど、案外カジュアルなんだな――っ!
キョロキョロしているうちに見つけてしまった。リカさんだ。
部屋の一番奥にいる。髪型はいつもと同じで、結ばずにさらりと流している。
けど、服装は違う。
袴姿だ。黒の無地の着物に、縦縞模様の袴を合わせていた。
お世辞抜きでカッコイイ。
おまけに品の良さも際立っていて、何って言うか……そう、凄く綺麗だ。
ああいうのを、眉目秀麗って言うんだろうな。
マジでずーっと見てられる。
俺、あんな綺麗な人と結婚するのか。正直、未だに実感が湧かない。
「っ!」
目が合う。その瞬間、リカさんはふにゃりと笑った。
ぽかぽかだ。幸せって顔に書いてある。
俺は嬉しいやら恥ずかしいやらで、堪らず目を伏せた。
「綺麗だ」
「あ、ども」
横に座るなりリカさんが褒めてくれる。
良かった。ガッカリさせずに済んだみたいだな。
「『夫婦固めの盃』じゃ~い!」
黒猫又の椿 ちゃんが朱色の盃を、キジトラ猫又の皐月 ちゃんが金色の柄杓 みたいなものを持ってきてくれる。
「ありがとう」
リカさんの手に小さな盃が渡った。
そこに皐月ちゃんがお酒を注いでいく。三回に分けて丁寧に。
父さん、母さん。俺、結婚するよ。相談もなしにごめんね。
だけど俺、ちゃんと幸せだから。だから、安心してほしい。
「ゆーた?」
「えっ? ああっ! ごめんっ」
俺は慌てて椿ちゃんから盃を受け取った。
リカさんの時と同じ要領で、こぽこぽとお酒が注がれていく。
お酒を飲むのはこれが初めてだ。ちゃんと飲めるかな?
そっと盃に顔を近付ける。
これはさっきまでリカさんが使ってた盃だ。
ようはあれだよな。この儀式って、西洋式のウエディングで言うところの『誓いのキス』みたいなもんで……。
「~~っ」
途端に顔が熱くなる。心臓はバクバク。
みんなの視線をやたらと強く感じて……うっ、うおぉおおぉお!!!
「ん……んっ……」
「んニャ!? 何してるニャ! このバカ!!」
気付けば俺はお酒を呑んでいた。
それもイッキに。三回に分けてって言われてたのに。
「ゲホっ! ゲホっ!!!」
「優太 様!?」
「おやおや」
リカさんの手が俺の背中に触れる。
擦ってくれてるみたいだ。
「すみ、ませ……っ」
「『きす』してるみたいだって……そう思ったの?」
「っ!!? あっ! いやっ!」
「鱚 ?」「お腹が空いてしまったのでしょうか?」と、椿ちゃんと皐月ちゃんが小首を傾げている。
居た堪れなさが過ぎる!! たっ、頼む! スルーしてくれ……!!
「折角だし、シちゃおっか♪」
「へっ? っ!? ちょっ――!?」
唇が包まれる。
リカさんの唇でふんわりと。
「「「ニャハーー!!!!!!!」」」
「「「~~♪」」」
会場全体が大歓声に包まれる。
いやいやいや!? 何してるんですか!?
俺は直ぐさまリカさんの胸を押した。
すると、意外にもあっさりと解放される。
「~~っ、リカさ――」
「愛してる」
「なっ……」
言いたいことは山ほどあったはずなのに、愛の囁き+はにかみで一蹴されてしまった。
これが惚れた弱みってやつか。
「「「きゃーーーーー!!!!!」」」
「お熱いね~♡♡♡」
「ありゃ相当ご執心だな?」
大盛り上がりだ。それこそ収拾がつかないぐらいの。
ああ、本当にあったかいな。
リカさんも俺も男なのに。そういう偏見は全然ないんだな。
「ほニャほニャ! たんと呑め! たんと食うニャー!!」
「っ! えっ!? もう終わり……?」
女中猫又ズが、お酒や大皿に乗った料理をジャンジャン持ってくる。
どうやら儀式はもう終わりで、こっからはパーティーをするらしい。
ともだちにシェアしよう!

