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26.結婚式

「新婦様の入場じゃ~い!」 唐傘小僧の吉兵衛(きちべい)さんの号令を受けて歩き出す。 プロポーズを受けてから二週間後のこの日、晴れて結婚式の日を迎えた。 会場はリカさんのお家だ。 俺は男だけど、立場上は嫁なので白無垢を着せてもらった。 でも、ぶっちゃけ全然似合ってない。 女顔のひょろガリもやしも、所詮は男なんだよな。 どうにも違和感が拭えない。リカさん、ガッカリしないといいけど。 「焦らずゆっくりね」 「はっ、はい……」 手を引いてくれているのは、ろくろ首の(なつめ)さんだ。 今は首を引っ込めているから、見た目の上では人間と変わらない。 塩顔のTHE★和美人。 黒い髷頭(まげあたま)に、琥珀色の(かんざし)スタイルで、真っ黒な着物を完璧なまでに着こなしている。 「おぉ! 主役の登場だ!」 「幸せになれよ!!」 祝福してくれたのは、俺の職場の先輩達。 屈強河童さんをはじめとした農作業組のみんなだ。 庭先にずらっと並んでる。 数にして二十人ほど。ほぼ全員参加してくれていた。 今日も忙しいのに。本当にありがたいな。 大五郎(だいごろう)さんは……やっぱ不参加か。 まぁ、仕方ないよな。切り替えてけ、俺! 「おわっ!?」 中にもたくさんの妖さん達の姿が。 豆腐小僧、一つ目小僧、小豆洗い、提灯お化け、化け草履、のっぺらぼう……本当にたくさん。 この二週間の間に、仕事を通じて仲良くなった妖さん達だ。 沈みかけていた気持ちがぐっと跳ね上がっていく。 「「「ゆー坊!」」」 「綺麗~」 「あの猫達、中々いい仕事をするじゃないか♡」 凄く賑やかだ。結婚式って、もっとガチガチで厳かなものだとばかり思っていたけど、案外カジュアルなんだな――っ! キョロキョロしているうちに見つけてしまった。リカさんだ。 部屋の一番奥にいる。髪型はいつもと同じで、結ばずにさらりと流している。 けど、服装は違う。 袴姿だ。黒の無地の着物に、縦縞模様の袴を合わせていた。 お世辞抜きでカッコイイ。 おまけに品の良さも際立っていて、何って言うか……そう、凄く綺麗だ。 ああいうのを、眉目秀麗って言うんだろうな。 マジでずーっと見てられる。 俺、あんな綺麗な人と結婚するのか。正直、未だに実感が湧かない。 「っ!」 目が合う。その瞬間、リカさんはふにゃりと笑った。 ぽかぽかだ。幸せって顔に書いてある。 俺は嬉しいやら恥ずかしいやらで、堪らず目を伏せた。 「綺麗だ」 「あ、ども」 横に座るなりリカさんが褒めてくれる。 良かった。ガッカリさせずに済んだみたいだな。 「『夫婦固めの盃』じゃ~い!」 黒猫又の椿(つばき)ちゃんが朱色の盃を、キジトラ猫又の皐月(さつき)ちゃんが金色の柄杓(ひしゃく)みたいなものを持ってきてくれる。 「ありがとう」 リカさんの手に小さな盃が渡った。 そこに皐月ちゃんがお酒を注いでいく。三回に分けて丁寧に。 父さん、母さん。俺、結婚するよ。相談もなしにごめんね。 だけど俺、ちゃんと幸せだから。だから、安心してほしい。 「ゆーた?」 「えっ? ああっ! ごめんっ」 俺は慌てて椿ちゃんから盃を受け取った。 リカさんの時と同じ要領で、こぽこぽとお酒が注がれていく。 お酒を飲むのはこれが初めてだ。ちゃんと飲めるかな? そっと盃に顔を近付ける。 これはさっきまでリカさんが使ってた盃だ。 ようはあれだよな。この儀式って、西洋式のウエディングで言うところの『誓いのキス』みたいなもんで……。 「~~っ」 途端に顔が熱くなる。心臓はバクバク。 みんなの視線をやたらと強く感じて……うっ、うおぉおおぉお!!! 「ん……んっ……」 「んニャ!? 何してるニャ! このバカ!!」 気付けば俺はお酒を呑んでいた。 それもイッキに。三回に分けてって言われてたのに。 「ゲホっ! ゲホっ!!!」 「優太(ゆうた)様!?」 「おやおや」 リカさんの手が俺の背中に触れる。 擦ってくれてるみたいだ。 「すみ、ませ……っ」 「『きす』してるみたいだって……そう思ったの?」 「っ!!? あっ! いやっ!」 「(きす)?」「お腹が空いてしまったのでしょうか?」と、椿ちゃんと皐月ちゃんが小首を傾げている。 居た堪れなさが過ぎる!! たっ、頼む! スルーしてくれ……!! 「折角だし、シちゃおっか♪」 「へっ? っ!? ちょっ――!?」 唇が包まれる。 リカさんの唇でふんわりと。 「「「ニャハーー!!!!!!!」」」 「「「~~♪」」」 会場全体が大歓声に包まれる。 いやいやいや!? 何してるんですか!? 俺は直ぐさまリカさんの胸を押した。 すると、意外にもあっさりと解放される。 「~~っ、リカさ――」 「愛してる」 「なっ……」 言いたいことは山ほどあったはずなのに、愛の囁き+はにかみで一蹴されてしまった。 これが惚れた弱みってやつか。 「「「きゃーーーーー!!!!!」」」 「お熱いね~♡♡♡」 「ありゃ相当ご執心だな?」 大盛り上がりだ。それこそ収拾がつかないぐらいの。 ああ、本当にあったかいな。 リカさんも俺も男なのに。そういう偏見は全然ないんだな。 「ほニャほニャ! たんと呑め! たんと食うニャー!!」 「っ! えっ!? もう終わり……?」 女中猫又ズが、お酒や大皿に乗った料理をジャンジャン持ってくる。 どうやら儀式はもう終わりで、こっからはパーティーをするらしい。

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