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高校行っても俺の世話してよな
中学三年の冬。大晦日だった。
仲の良い奴らと集まって飲んで騒いで年越しをしていた。
受験生だと言うのにこんな事が出来たのは俺らが受ける予定の高校はそれだけレベルの低いところだから。
「あれ、みんな寝てんじゃん。おーい、初詣行くんだろー?」
「いいから寝かせてやれよ。起きたら行けばいい」
まぁ、カウントダウンもしたし、外は寒いから俺はいいんだけど。
残ったのは俺と小学校から連んでる親友の野崎楓だけだった。
「貴哉が飲み足りないなら俺が付き合うからさ」
「さっすが楓~♪モテる男は違うな~」
「本当にモテたい人にはモテないんだけどね」
「ん?何か言ったかー?」
良く聞こえなくて聞き直すけど、笑って誤魔化された。
楓は本当にモテる。頭も良いし顔も良い。性格も穏やかで誰にでも優しいからいつも周りには人がいた。ホント、俺と仲良くしてくれるのが不思議なぐらい。
「そう言えばお前、何で光陽にしたんだ?担任が泣いてたぞ」
「何でって行きたいところ無かったし、どうせなら貴哉と一緒が良かったからだよ」
「嬉しい事言ってくれるじゃん♪俺もお前と同じところ行けると思うと楽しみだぜ」
「はは、まだ願書すら出してないけどな」
「何かさ、こいつらと居るのも楽しいんだけど、やっぱ楓なんだよなぁ、隣に居て欲しいのって!」
「貴哉……」
「だからさ、高校行っても俺の世話してよな」
「ああ」
いつものように言ったつもりだった。だけど、この時の楓は何かが違ったんだ。
隣に居た楓は更に近付いて来て、俺が持ってた缶ビールを取り上げてそのままキスをして来た。
いきなりの事で頭が真っ白になったのを覚えてる。
「は?……楓?何……」
「好きだよ貴哉が。俺と付き合って」
親友からの突然の告白だった。
タチの悪い冗談だったら良かったのに、そしたら笑って許してやったのに、でも楓の顔は真剣な物で、少し辛そうにも見えた。
「嘘……」
「本気だ。貴哉……」
「触んな!」
楓の手が伸びて来て反射的に払ってしまった。
状況が理解出来て来て、俺は楓に怒りが沸いたんだ。
ずっと友達だと思っていたのに、何だか裏切られたような気がしたんだ。
きっと楓はそんなつもりは無かった。楓は楓なりに悩んで言ってくれたのに、俺はガキみたいに怒るしか出来なかった。
「信じらんねぇっ」
「貴哉!」
俺は楓を睨んでそれから何も言わずに帰った。
その後も楓とは壁が出来たように連む事はなかなった。
そして担任に怒られつつも無理矢理進路も変えて、完全に楓とは離れ離れになったんだ。
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