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好きになる方も勇気がいるんだぜ

 時は戻り、高校の屋上で俺は早川と向き合っていた。俺にそんな過去があるとも知らずにみんな勝手に好きとか言いやがる。  今目の前にいるこいつもそうだ。  何かとお互い言い合って来たけど、離れず一緒に行動してる早川。なんだかんだ居心地が良かったからそれが無くなると思うと心がキュッとなる。 「貴哉、気持ちは分かるけどさ、好きになる方も勇気がいるんだぜ」 「…………」 「異性ならまだしも、同性を好きになっちゃうんだもん。怖いに決まってんだろ」 「怖い?」 「今だってすげぇ怖い。いつか好きな貴哉に拒絶されるんじゃないかって、そうなったら俺泣くじゃすまなそう」 「早川……」 「だからさ、ちゃんと返事してくれね?」  両手を合わせてお願いと言ってくる早川。  早川の言葉を聞いて俺は何も言えなかった。  確かに俺は自分だけの事しか考えていなかった。告白する方が悪いとだけ。でもそれも仕方ねぇ事なんだ。それに向き合えるか向き合えないか。  楓の時は向き合わなかった。  そっか、俺逃げてたんだ。 「あのさ、早川」 「ん?」 「もし、俺がノーって言ったら俺達はどうなるんだ?」 「そりゃ貴哉次第だろ」 「分かった。早川、改めてもっかい言ってくんね?」 「え、ちょい恥ずいんだけど……」 「いいから言え」  そして早川は真っ直ぐ俺を見て真剣に言った。  俺も真剣に向き合おう。  今度こそ失敗しない為に。 「貴哉、好きだ。俺と付き合って下さい」 「早川……」 「え?」 「…………」  あれ、改めて言われると何か、こう胸の辺りがくすぐったい?いやいや、真面目にやらねぇと! 「悪い、付き合えねぇ!」 「えー!今の間は何!?期待しちゃったじゃんかー!」 「仕方ねぇだろ!告白とか初めて断ったんだから!」 「威張って言うな!あーやっぱショックだなぁ~」 「なぁ、早川は俺の事嫌いになるのか?」 「へ?何で?」 「断ったから」 「それぐらいで嫌いになるとかどんな自己中だよ。あのなぁ、そもそも俺の好きはそんな軽いもんじゃねぇの!すぐに諦められる訳ねぇだろ」 「げっそうなのか!?」 「げってなんだよげって」 「いや、早川とは今まで通り言い合ったりしたいから……」 「はは、可愛い事言うじゃーん♡」 「かわっ何言ってんだ!」 「もちろん今まで通りだよ俺らは。これからもよろしくな友達として」  友達か。薄々分かってたけど、俺も早川の事を友達だと思っていたんだろうな。だから告白を断ってあの時みたいに失うのが怖かったんだ。  でも早川は違う。 「早川、ありがとう」 「うわー、貴哉がお礼言うなんて珍しすぎるー!」 「もうねぇから録音でもしとけー」  それから俺達は授業が終わるまで屋上で話していた。

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