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ウサギの着ぐるみを着た悪魔
次の日の朝、母ちゃんに起こされた。いつもは起こしになんか来ないのに、何で今日は起こしに来たんだ?
てかまだ6時じゃん!
「あんたいつまで寝てるの!さっさと着替えなさい!お友達上げるわよ」
「は?お友達?」
なるほどな、誰か来たから起こしに来たのか。てか早川なら勝手に入って来るはずだよな。他に朝から来る奴なんかいねぇし……
「中西くんごめんなさいねぇ、貴哉ったらまだ寝てたみたいなの~」
「あはは、貴哉らしいですね~」
「はぁ!?中西ぃ?」
母ちゃんの後ろから爽やかな笑顔で入って来る中西に一気に目が覚めた。
てか何で家知ってんだ?
母ちゃんが出てった後、俺の部屋を物色し始めた。
「へー、ここが貴哉の部屋かぁ。意外だよね!絶対畳に布団かと思ってたのに、フローリングにベッドだなんて♪ほんと最高♡」
「お、おい!お前何で家知ってんだ!」
「俺の人脈舐めないでよ?それよりも早く起きないと襲っちゃうぞ~」
「あ!勝手に入ってくんな!」
俺がいるベッドの中に入って来ようとする中西を全力で止めようと腕を押さえて反抗するが、何かがおかしい。
中西は余裕そうにニヤッと笑った。
うお!こいつの力予想以上に強くないか?
「えー、貴哉ってばそれ本気ー?そんな見た目なのに力無いとか可愛いすぎるんだけどー♡」
「てめぇが馬鹿力なだけだろ!」
「このまま押し倒しちゃいたいけど、早くしないと厄介なの来るからさっさと着替えて出るぞー」
「ぎゃ!変なとこ触んな!」
このまま中西と二人きりはまずい!ここは大人しくさっさと着替えて家を出よう!
にしても朝からなんなんだよぉ!
家を出て中西と歩く。徒歩で学校行くとか久しぶりだなー。あ、早川に連絡しとかなきゃ……
スマホをいじってると、中西に睨まれた。
「ちょっと!誰に連絡してるの!」
「へ?早川だよ。先に行くって言わねぇと来ちゃうだろあいつ」
「そんなの俺がするよ!」
「そ、そうか?それにしてもお前荷物多くね?女子かよ」
「いつも通りだよ。こっちのバッグにはお弁当が入ってるんだ」
「ああ、いつも豪華だもんな」
「貴哉の分もあるから一緒に食べよね♪」
「あ、戸塚の分もあるのか?」
「ないよ。ある訳ないでしょ」
「なっ戸塚を差し置いて俺が中西の弁当を食うなんて出来ねぇよ!」
「どうしてだよ。春くん関係ないじゃん。てか今は貴哉が俺の彼氏なんだよ?」
「だって戸塚はまだ中西の事が好きなんだぞ?そんなの、気使うだろ」
「はぁ、貴哉気にし過ぎ。春くんがまだ俺を好きなのは知ってるよ。けどそんなの気にしてたら次にいけないじゃん」
「けどよぉ」
「なぁ、他の男の心配なんかするなよ。ムカつくじゃん」
「っ……」
「あと、直登だよ俺の名前」
「はい……」
俺はとんでもない勘違いをしていたのかもしれない。いつも戸塚とのほほんとしたやり取りをしていた中西の事を。
本当の中西はウサギの着ぐるみを着た悪魔なのかもしれない。
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