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俺怒ってるんだけど

   あれから早川はずっと大人しく自分の席にいた。  昼飯になっても寄って来る事はなく、俺は直登と二人で食った。  直登は相変わらずで人前だろうが何だろうがベタベタしてきた。てか戸塚と付き合ってた時よりエスカレートしてねぇか?  嫌がらせかと思う程だ。  疲れ果ててると、クラスメイトが直登を呼んだ。 「中西~担任が呼んでるぞー」 「お前何やらかしたの?」 「さぁね。ちょっと行ってくる」  直登が呼び出されるのは珍しいけど、内容が分かってるのかあっさり席を立って職員室へ向かった。  はー!久しぶりの一人だぜ!  直登とは今日ずっと一緒だったからなぁ!  気を抜いたら眠く…… 「貴哉」 「んー?あ!早川!」  ウトウトしてると早川が声をかけて来た。  あ、直登がいないからか。 「今の内に抜けよう」 「ちょ、どこ行くんだよ」 「二人きりになれる場所」  振り向いてそう言う早川は笑顔で、少しホッとした。  そして着いたのは屋上。昼休みだから誰かいるかと思ったけど、誰もいなかった。 「いやー、ここって結構穴場だよなー!昼寝するのにもってこいだぜ」 「あのさ貴哉、俺怒ってるんだけど」 「んん!?そーなのか?」  さっき笑ってたから油断したぜ!  って、笑顔のまま怒ってらっしゃる! 「今中西と付き合ってんだろ?俺の事振ったのに。どーいう事だよ?」 「あーあー、それはー、えっとぉ……」  これはどう答えたらいい?  本当の事を話してもいいけど、そしたら俺もとか面倒くさい事言い出しそうだし……  迷ってると早川はニッと笑った。 「ま、いいけどな!」 「えっ?」 「だって中西と付き合えるって事は男と付き合えるって事だろ?だったら奪えばいい。そーだろ?」 「そーだろと言われても……」 「俺得意なんだよね♪人のもの奪るの♡」  どっちにしても面倒くせぇ方に行っちまった!  そして一歩一歩近付いて来る早川。  それに合わせて後ろに下がるけど、とうとうフェンスにぶつかりこれ以上下がる事は出来なくなった。 「は、早川?」 「なぁ、俺の事も名前で呼んでよ。友達ならそれぐらいいいだろ?」 「……空」 「あは♪嬉しい~」 「も、もういいか?早く戻らねぇと直登がうるせぇから」 「中西なら当分戻ってこねーよ。担任にこっぴどく叱られてるんじゃん」 「は?何で?」 「え、貴哉知らねーの?裏校舎の壁殴って穴開けたんだよあいつ」  んな!?俺でもそんなのした事ねぇぞ!  あんな王子みてぇな顔してとんでもねぇ事すんな!そういえば朝といいさっきといい、あの馬鹿力なら出来なくもねぇか……

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