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なら俺のが上じゃねぇか♡
今日は早川と帰っていた。珍しくチャラ男号には乗らずに早川は自転車を押して二人で並んで歩いていた。
「今日はお疲れさん」
「あら、貴哉から労いの言葉がもらえるなんて♡」
「キモいからやめろ」
「まぁ自分でも頑張ったと思うよ。あの中西と二人きりとかどんな罰ゲームだよって感じだし」
「お前ら気が合いそうな見た目してるのにな」
「合わないだろ。苦手だもんあいつ」
「でも人気あるぜ?今日も廊下歩いてるだけですげぇ周りに睨まれたもん」
「だから苦手なんだよ。正統派イケメンこそ俺にとって怖いもんはねぇよ」
「お前は邪気があるイケメンだもんな~」
「否定はしないね」
そんな話をしながらゆっくり歩く。
直登と付き合ってるって周りにバレ出してからすれ違う度に睨まれて来たけど、その前の早川といた頃はむしろ俺と目を合わせるのを避けてるとさえ思える態度取られて来たのに。
まぁ気にしてねぇけど。
「ところでさ、中西とは本気なの?」
「まぁな」
「本当にー?」
「何でだよ?」
「本気で付き合ってるなら俺も本気出さなきゃだなーって」
ニヤッと笑う早川。あ、こいつも俺の事好きなんだっけ。なんか奪うとか何とか言ってたような……
「多分だけど、中西とは手を繋ぐぐらいしかしてねぇんだろ?」
「……まぁ」
「なら俺のが上じゃねぇか♡」
「おい、調子に乗るなって」
「コレは乗るでしょ本命よりも先の事してるなんて♪」
本命か。直登との付き合いの事は俺と直登しか知らないから、こういうワードが出ると胸が痛くなる。本当の事を言えたら楽なのにって毎回思う。
「なぁ早川」
「なにー?」
「俺直登とキスしてみる」
「ぶっ!はぁ?何言ってんの!」
「付き合ってない早川とは出来るのは分かった。付き合ってる直登と出来るのか試してみるよ」
「しなくていい!お前らにキスはまだ早い!」
「俺達だってしてんじゃん」
「俺達はいいの!特別なの!」
「変なの。付き合ってからする方が普通だと思うけどな」
「とにかく中西とはしちゃダメだ!どーしてもしてぇなら俺が相手になるから♡」
「うーん」
直登としてみて普通に出来たらそのまま付き合ってもいいのかもと思っただけだ。仮に付き合ってるっての黙ってるのもめんどくせぇしな。だから誰かとキスがしたいと思った訳じゃねぇから早川とするのは意味がない。
俺が微妙な返事をすると困ったような顔して覗き込んで来た。
「貴哉?なぁ貴哉」
「何だよ?」
「あのさ、俺……」
「モソモソ喋るんじゃねぇよ!聞こえねー」
らしくもなくハッキリしない早川は言葉に迷ってるのか中々話し出そうとしなかった。
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