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初夜(5)

「ユーリ。自分で膝を抱えられるか? そうしたら手が空くから、もっと色々できる」  言われるがままに、自身の両手を膝裏にやり、深く屈曲した体を支える。 「いい子だ」  褒められて、後孔からまた、蜜液がとぷりと溢れ出るのがわかった。  褒められて嬉しいのも、これほどにアルファの熱を欲するのも、オメガの本能からくるものなのだろうか。あるいは、それ以外の何かもあるのかはわからない。  ただ一つ言えることは。  この感情も、気が狂いそうなほどの渇望も、今まで誰に対しても抱いたことのないものだということだった。 「お前を傷つけたくない。痛かったら、すぐに言ってくれ」  羞恥心から返事はできず、コクリと頷きだけ返す。  腹につきそうな程に反り返った性器の裏筋を舐められ、「ひっ」と声が洩れた。  根元から先端へと勢いよく上がって来た舌は、先走りの(つゆ)を舐め取るように、先端の膨らみをねっとりと舐めまわす。  鈴口を尖らせた舌でくじられ、今にも精を洩らしそうになるのを、ライニ様のお口に出すわけにはいかないと必死に堪えた。 「……ふっ、……ンッ…………」  先端が解放されたと思ったら、ふたたび裏筋を降りてきて、今度は後孔の表面をぺろりと舐められる。後孔の縁から双嚢の間、竿の根元へと何度か往復し、何度目かにその舌は、窄まりを押し開いてその奥へと入って来た。 「ヤっ……、ぁあっ……!」  熟れた壁をじんわりとこじ開け、体内の浅い場所でくねり、襞の一つ一つを溶かすように舐め上げていく。  何をされているのかを理解し、羞恥と快感で膝が震えた。 「甘いな。唾液と同じくらい甘い」  浅いところを執拗に舐られるのみで、痺れるような快感が周囲へと広がる。けれど、射精するには刺激が足りなくて、そのもどかしさに身悶えする。  世の中のオメガは、本当に、アルファを受け入れるために、毎回こんな恥ずかしいことをされているのだろうか……。  疑いたくなる気持ちを振り払うために、これは必要な準備だと、頭の中で何度も言いきかせた。  とろけた襞が彼の舌に絡みつくのがわかる。  舌だけでなく、指も挿れられて、舌では届かない、奥の熟れた膨らみを指先でゆっくりと捏ねられる。快楽を与えるというより馴染ませるような動きで、浅いところを舌と指で丁寧にほぐされていく。  もっと荒々しくしてくれていいのに、と思った。  ただの侍従なんだから、こんなふうに、恋人や妾にするみたいに、丁寧にしてくれなくていい。  でないと、勘違いしそうになる。 「……ぁ、ぁ、ぁ……っ……」  どんどんとたまっていく熱に、ひっきりなしに声が洩れ、どうしようもなく腰が揺れる。  もうこれ以上は我慢できないと思ったとき。舌と指が抜かれた。  背筋が弓なりに反り、半開きの口から甲高い嬌声が洩れる。  堪えきれなかった薄い精液が、ぴゅぴゅっと鈴口から飛んだ。けれど、萎えることなく、性器は反り返ったままだ。

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