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初夜(4)

 下着(ブレー)の紐が解かれ、濡れた布が取り払われる。 「ユーリ。お前はこんなところまで可愛いんだな」  フェロモンの影響か。  普段の無口が嘘のように、今日の殿下はお喋りだ。それにちょいちょい、ユリウスをからかうようなことを言う。  「可愛い」というのは、小ぶりで未熟なユリウスの性器をからかったのだろう。 「ここも後で可愛がってやるが、すまない。今は俺も余裕がない」  言われるやいなや、膝裏を抱え上げられ、太股が腹に付きそうなほど、高く腰を浮かせられた。  すなわち、殿下の眼下に、ユリウスのあられもない場所が曝け出されている。  さすがにこれには、完全に失いかけていた理性が少しばかり戻って来た。 「ラ、ラ、ライニ様! 駄目です! そのような見苦しいところ、見ないでください!」 「ユーリの体で、見苦しいところなどないだろう? ここも、とても綺麗な色をしているぞ。それに、さっきから甘い香りを漂わせて俺を誘っている」  欲情に濡れた眼が、高く持ち上げられたユリウスの恥部に注がれている。  どうやら発情(ラット)というのは、目を(くら)ます作用もあるようだ。  せめて殿下の視線から隠すために、両手を下に伸ばし、そこを覆った。 「そんなことをしたら、俺を受け入れてもらうための準備ができないだろう? ここに俺を受け入れるのは、嫌か?」 「……準備……?」  オメガの男が後孔(そこ)でアルファの性器を受け入れることができることは、発情期(ヒート)がきてオメガだとわかったときに継母(はは)に必要な知識として教えてもらった。でも、準備が必要なことまでは教えてもらわなかった。  そもそも、継母(はは)はベータなので、オメガの男の体について、それほど詳しくは知らなかったと思われる。 「準備が必要なのですか?」  そこで初めて、殿下が気まずそうに視線を揺らした。 「俺のは……それなりの大きさだからな……。ちゃんと準備をしないと、お前を傷つけるかもしれない」  体にぴったりとフィットするタイプの騎士用のトラウザーズは、形がわかるほどに前が大きく盛り上がっている。きつかったようで、いつのまにか帯革(ベルト)とボタンは外されていた。  彼の興奮を目の当たりにし、ユリウスはゴキュッと生唾を呑みこんだ。  体格からして、ラインハルトの性器(それ)がユリウスのものよりずっと大きいことは想像できる、それを後孔(あそこ)に受け入れるとなると、準備が必要なことも理解できる。  ユリウスは、そろそろと恥部から手を離した。  それは、そこに殿下のものを受け入れたいという、意思表示でもあった。

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