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はじまりの場所(10)

 燭台の明かりに照らし出された均整の取れた武人の身体は、今まで見たどの彫刻よりも美しかった。  ラインハルトがユリウスの右手を取り、腕にある傷に視線を落とす。 「すまなかった」  傷に対しての謝罪のようだった。 「これは、僕が勝手に作った傷なので……」 「いや。俺のせいだ。俺の、迷いのせいだ……。お前を早く故郷に帰した方がいいことはわかっていたが、もし前任の副団長のように命を落とすようなことになれば、お前と会えるのもこれで最後かもしれないと思うと、無理やり帰すこともできなかった」 「僕も……。早く帰ったほうがいいことはわかっていたのに、いつまでも帰れませんでした。少しでもライニ様の近くにいたくて……。だから、ライニ様の所為じゃないですよ」  縫い目が少し盛り上がったその傷にラインハルトがキスをし、腕、肩、鎖骨……、とその唇が移動していく。  薄い胸元を吸われ、上目遣いで見上げながら、見せつけるように突起に舌を這わされる。 「ふぁっ、……んっ……」  両方をきゅっと抓まれて、臍の下が切なく疼く。  女性でもないのに。どうして、そこを弄られただけで、こんなにも感じてしまうのだろう。 「可愛いな。ユーリはここを舐めただけで、こんなになるのか」  ゆるく勃ち上がった性器を、大きな掌に包まれる。 「あ、あの! ライニ様!」 「どうした?」  ユリウスの胸元に顔を伏せたまま、ラインハルトが上目遣いで見上げてくる。 「その……、できれば今日は……、僕もライニ様のを……」  最後まで言えなかったけど、ちゃんと言いたいことは伝わっただろうか……。  ラインハルトは体を浮かせ、ユリウスの顔を上から覗き込んできた。 「無理しなくていいぞ」 「無理……とかでは……ないです。ライニ様のは……、可愛くはないですけど、可愛がりたい気持ちは、僕も一緒なので……」  もっと他に色気のある誘い方があるだろうと思うけど、必死に考えた結果がこれだ。  困惑顔が、ぷっ、と吹きだす形で崩れる。 「ユーリはすごいな。その言葉だけでやられそうだ」  だったら一緒にやればいいと、殿下は仰向けに横になった。  まだ触ってもいないはずの殿下のそこは、力強く血管を浮き立たせ、天井にむかってしなやかに反っている。 「こっちに尻を向けて俺の上に跨ってくれ。今は発情期(ヒート)じゃないから、ちゃんとほぐさないと傷つけることになる。」  ……そ、そんな……、ライニ様に尻を向けてライニ様の上に跨れなんて……。  前回はどうしていたかと思い出そうとするけど、ただ気持ちよかったという記憶しか残っていない。 「可愛がってくれるんだろ」  怪我をしていないほうの腕を引っ張られ、ユリウスは仕方なしに殿下にお尻を向ける形でその上に四つん這いになった。

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