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第40話
「もしよければ、実際に作る様子も見てみたい」
「時間がかかるし地味だよ? それに、刃物も使うから危ないし」
「刃物?」
琉麒の秀麗な眉の間に皺が寄った。
「それは絶対に必要なのか」
「うん。最初に竹から、骨や竹ヒゴを切り出さなきゃならないから」
琉麒は白露に刃物を使ってほしくないようで、その作業は別の者にさせるということで話がついた。
「いいのかな、任せちゃって。骨と竹ヒゴに分けてくれれば、後はハサミと糸さえあれば作れそうだけど」
「その方が私も安心だ。ぜひそうしてほしい」
「……わかった」
今まではなんの疑問も挟むことなく出来ていた事柄が、皇帝の番候補になると出来なくなるらしい。けれど、琉麒の番として生きるためには必要なことなのだろうと受け入れた。
(はやく慣れないと……)
「ところで白露にお願いがあるんだ」
「なに?」
「会ってほしい者がいる。本日の夕餉は彼らと一緒に食べよう、後で遣いをよこすから」
「ふうん、わかった」
誰だろうと思いながら快諾した。琉麒が会ってほしいと言うくらいなのだから、彼にとって仲がいいもしくは重要な相手なのだろう。白露とも友達になってもらえたら嬉しい。
午前中は文字の勉強をして過ごし、午後も同じようにして過ごした。本当は竹林に行きたかったけれど、早く知識を蓄えないといつまで経っても琉麒の仕事が手伝えない。一緒懸命に練習し、いくつかの文字を覚えることはできたけれどまだまだ先は長そうだ。
夕方近くになると会食のための着付けをされる。今日は麒麟柄の深衣を身につけるのかと意外に思って首を捻った。
「お客様と会う時は銀の刺繍服じゃないとダメじゃなかったの?」
「本日の催しは内輪のお披露目にあたると聞いておりますから、こちらの深衣を着ていきましょう」
「えっ、お披露目?」
そんなの聞いてないよとドギマギしたけれど、魅音は構わずにさっさと帯を締めてしまう。仕方なく廊下に出ると、ばったり琉麒と出くわした。
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