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第39話

 今夜は琉麒を子守唄で寝かせてから、遅くまで勉強しよう。琉麒を助けられるようになるには、まだまだ知識が必要だ。  白露が勉強を頑張る計画を立てていると、琉麒は黒髪から手を離した。 「そうであれば、これも経験か……いいよ、葉家の息子との交流を許可しよう。ただし、けして一人で会ってはならない。付き人と護衛付きで外出するように」 「わかった」 「笹も自由にしてくれ。白露一人が食べる分には問題ないだろう」 「わあ、ありがとう!」  宮庭に生えている竹笹は里の苦くてもったりした味とは違って、爽やかな風味があるんだよねえと、うっとり頬を緩める。  竹も何本か切り倒してもいいと許可をもらえて、ほくほく顔でお礼を言った。毎日竹林に通ってしまいそうだ。 「白露は竹の葉だけでなく、竹本体も食べるのか?」 「食べる時もあるけれど、今回は竹細工を作ろうと思ってる。太狼にあげる予定なんだ」  警吏のお兄さんたちにはお礼にお皿をあげたのに、旅の間一番お世話になった太狼にお礼をしていない。お皿よりも立派なカゴを作ってあげようと意気込む。 「そうか……」  琉麒はどことなく肩を落として元気がなさそうだ。 「どうしたの?」 「いや、ずいぶんと太狼に心を開いているんだな」 「旅の間お世話になったから、そのお礼だよ?」 「お礼か」  歯切れの悪い琉麒の様子を見て、白露はハッと顔を引き締めた。 「も、もしかして太狼は竹が嫌いだったりする? それか、竹細工は縁起が悪いとか」 「いや、そのような話は聞いたことがない」 「そっか」  だとしたらなぜ……美しい顔を見上げると、琉麒は顎に手を当てて考えこんでいた。 「竹細工か、話には聞いたことがあるが実際に見たことはないな」 「そうなの? だったら琉麒にも作ってあげようか」 「いいのか? ぜひお願いしたい」  華のような笑みを向けられて、白露の頬がほんのりと熱を持つ。こっくりと頷いた。 「いいよ。なにがほしい? なんでも作れるよ、カゴとか箱とか、筆立てとか」 「白露の作るものならなんでもいいよ」  なんでもと言われると迷ってしまう、琉麒がもらって嬉しい物ってなんだろうか。

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