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第58話

 琉麒がカゴを使う時に手に引っかからないように、長く使えるようにと工夫しながら編んだ。新しい竹ひごを手にとり、竹骨を折り曲げてカゴの形に整えていく。色あいを変えて模様を作りながら黙々と手を動かし続ける。  カゴ部分が編み上がったら、余った竹骨を切り取り縁を作ってカゴに編み込み糸で結ぶ。一通り仕上がりを確認してから立ち上がった。 「できた」 「どれ、見せてくれないか」 「え、あ」  さっきまで素足で触っていた物を、琉麒は躊躇なく取り上げてしまう。本当に気にしていないようだ。白露の方が不敬ではないかとそわそわしてしまった。 「竹細工とはこのようにして作る物なのだな。素朴な美しさがある」 「あ、ありがとう」  竹かごをひっくり返したり指先でなぞったりした後、琉麒は胸の前に竹かごを抱えてしまった。 「このままもらっていいだろうか」 「ちょっと待って」  さすがにそのまま渡すには抵抗感がありすぎるため、清潔な布で全体を拭きとった。丁寧に心を込めて作ったから、いつも以上にいい物ができたと思う。ためらいながらも手渡すと、彼は目を細めて微笑みながら竹かごを両手で受けとった。 「ありがとう、白露。執務室に置かせてもらうよ。そうすれば君が側にいない時も存在を感じられる」 「ええ、そんな……いいの?」  皇帝に庶民の使う竹かごなど持たせたのは誰だと、責められたりしないだろうか。琉麒は力強く首を縦に振った。 「誰にも文句など言わせるものか。この際、皇帝の番が竹細工を愛用しているからと流行らせてしまえばいい」 「でも僕は、まだ正式な番じゃないから」 「ああ、今すぐにできないのが残念だ。白露にはこんな素晴らしい特技があるのだと、皆に知らしめたいのに」  それはさすがに知られたくない。制作風景を見せたら琉麒以外の華族獣人は絶対に引くだろう。けれど竹細工の魅力を知ってもらえると想像したら、口元が自然と綻んだ。 「軽くて持ち運びやすいし、それに長持ちするんだ。出来立ては竹のいい香りが残ってるんだよ。みんなに竹のいいところを知ってもらえるのは嬉しいな」 「ああ、いつか必ず実現させよう」  琉麒が口にすると夢物語ではなく、いつか本当に叶うことのように思える。白露が番として認められるように、竹細工も認められたらいいなと、琉麒と同じ夢を見たくなった。

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