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第71話 計画 ⑥

「おはようサムナン様」  食事の間で待っていたサムナンの姿を見つけると、ミモザを繋いだ鎖を引っ張りながら駆け寄る。 「よく眠れたか?」  サムナンは雅成を抱き上げると、膝の上に乗せる。 「ううん。あんまり眠れなかった」 「どうした? 体調でも悪かったのか?」 「違うよ。あのね、僕頑張るって言ったけど、やっぱりサムナン様がそばにいないのが……寂しくて……」  しゅんっと肩をすぼめる。 「サムナン様も僕がいなくて……寂しかった?」  甘えるように聞くと、サムナンは眉根を寄せ 「寂しかったに決まっておる」  雅成の銀色の髪を指に絡ませた。 「本当に?」 「ああ本当じゃ」 「僕がいないとサムナン様も寂しいって思っていてくれて、なんだか嬉しい」  口元を両手で押さえながら、雅成は微笑む。 「雅成は可愛いことを言ってくれるな」 「だって本当のことだもん」  無邪気に笑う雅成を見ているミモザの目が心配そうに揺れる。 「僕、サムナン様の膝の上で朝食食べたい。いい?」 「ああいいとも」 「じゃあ、僕がサムナン様に朝食を食べさせてあげるから、サムナン様は僕に朝食食べさせて」  おねだりしつつ提案してみる。  雅成がサムナンの膝に座り、食事を食べさせるのが習慣化すれば、もし毒が手に入った時、少量ずつ時間をかけて食事に混ぜることができる。  その道筋を今からつけておきたかった。 「雅成は甘えるのが上手だな」  サムナンは雅成の食事を自分の前に用意させ、雅成の手から食事をとる。  側から見れば仲の良い恋人同士のように見える。  だが本当は……。  雅成の言葉、行動全て、計画になくてはならないことで、無駄なことは一つもない。  食事の最中に「ミモザは僕のおもちゃだから、絶対に手を出さないでね」と釘を刺す。  サムナンが手出しできないことは、他の家臣達もできないこと。  これでミモザを守ることができた。  朝食後から、雅成は「一緒にいないと寂しい」という理由で、ずっとサムナンと一緒にいた。  変態でゲスでクズなサムナンだが、一国の王。  財力と権力を保つため、仕事もしていた。  書斎で仕事をしている時もサムナンは雅成を膝の上に座らせる。  雅成はサムナンの仕事に興味がなさそうにしていたが、机の上に置かれた書類や家臣達との会話を全て記憶した。  午後から闇の売人がやってきて、一緒にいることは流石に無理かと思っていたが、売人に雅成のことを自慢したかったサムナンが商談の席に同席させてくれた。  書類には、拉致誘拐され、次回のオークションで売られる男女数名の名前と写真が記載されている。  隠し撮りされた笑顔の写真と、捕まった時の恐怖の顔。  その写真の全ての人達が、雅成に助けを求めているようだった。

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