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第70話 計画 ⑤
ミモザは泣き疲れて寝てしまった。
寝顔を見ていると、自分が女神だったことも、病気だったことも、拉致されたことも全て繋がっていて、多くの人を助けるため全て必要だったように思える。
唯一心残りなのが拓海のこと。
傷付けたまま、この世を去らないといけないと思うと、何も悪くない拓海に申し訳なさだけが残る。
いつか拓海も自分のことを乗り越え、新しい人と幸せになって欲しい。
本当は陰ながら見守りたかったけれど、それは叶いそうになかった。
雅成はこの国でサムナンの興味を自分に向けさせることに集中しなくてはならない。
自分に気を取られている間だけでも、新しい犠牲者を作らないでおくことができる。
辛いことばかりだと思うけれど、拓海との思い出が支えてくれる。
夜空に散りばめられた無数の星を窓から眺めながら、拓海との記憶を蘇らせた。
(拓海、愛してる……)
脳裏に次々と浮かんでくる拓海は、どれも笑っていた。
早朝、雅成はミモザを起こし、計画を話た。
今は隠しカメラも盗聴器もないが、いつ付けられるかわからない。
だから、部屋に入りカメラと盗聴器の有無を確認するまでは、ミモザから話しかけない。
もしカメラや盗聴器が確認されたら雅成はミモザのことをモノのように扱うが、本心ではないこと。
伝えたいことがあれば反対の意味の言葉で伝えるか、不自然にならないように耳打ちをしにいくのでそれまで待っていること。
もし他の女性と離す機会があれば、雅成と仲間なことは伏せて情報を集めること。
雅成は病気だが、それを誰にも言ってはいけない。
そして最後に一番大切なこと。
雅成がサムナンにどんなに酷いことをされていても、絶対に助けようとしない。
「僕はね、今までいろんな人を見てきた。だからどんなことがあっても必ずこの計画を成功させる自信があるんだ」
「……」
「ミモザ、辛いことばかりかもしれないけど、希望は持ち続けて」
両手でミモザの手を包み込む。
「今からミモザが僕だけの所有物だと周知させるために首輪に鎖をつける。僕以外、誰にも触れさせないと誓うよ。どう? 頑張れる?」
ミモザは雅成の目を力強く見つめながら、大きく頷く。
「じゃあ行くよ」
ミモザの首輪に鎖をつけ手に持つと、サムナンが待つ食事の間へと向かった。
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