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第69話 計画 ④
サムナンの話では他国と国交はあまりないが、この国には天然資源が豊富で、輸出でかなりの利益がある。
が、それ以上に利益があるのが『闇の人身売買』だ。
不定期で行われ、顧客は金持ちばかり。
そのため拉致、監禁は日常的におこなっているとのことだった。
もしかするとこの国が人身売買の黒幕なのかもしれないと雅成は思った。
サムナンに抱き抱えられながら、用意された部屋にミモザと共に行く。
「またすぐに会える?」
部屋を立ち去るサムナンの服の裾を引っ張る。
「ああ、朝食は一緒に食べような。それまでいい子にしていておくれ、私の可愛い雅成」
雅成の額にキスをして、サムナンは部屋を後にした。
部屋の前には護衛の兵士が二人立っている。
雅成は部屋の中を無邪気に散策するような素振りで、隠しカメラと盗聴器の有無を確認する。
大急ぎで用意した部屋だからだろう。
隠しカメラも盗聴器も今のところはない。
だがいつ付けられるかわからない。
雅成はドアの前に立ったまま動かないミモザに駆け寄り、
「怖かったね。でももう大丈夫。ここには隠しカメラも盗聴器もない。今は僕とミモザ二人だけだよ」
抱きしめる。
「……う、う、うわぁぁぁ〜〜ん」
堰き止められていた恐怖と涙が、ミモザから一気に溢れ出す。
「辛くあたってごめんね。もう大丈夫、大丈夫だからね」
ミモザの涙が落ち着くまで、言いながら抱きしめ頭を撫でた。
多分、サムナンのそばにいた女性達に同じことをしても、彼女達は無表情のまま黙って立っているだけだろう。
希望を奪われ、もう逃げられないと洗脳された彼女達を早く救い出さないといけない。
誰のものでもなく、ましておもちゃでもない。
一人の尊い人間だと思いださせてあげたい。
時間はかかるかもしれないが、もとの生活に戻してあげたい。
もう同じ思いをする人を出させてはいけない。
残された時間、ルイと共に研究に参加することはできなくなってしまったけれど、捕えられた彼女達を助けることに全力を注ごう。
雅成は誓った。
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