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第68話 計画 ③
(待ってて、今助けてあげるから)
雅成が女性達を見ていると、
「こいつらのことが気になるか?」
サムナンが女性達を指さした。
(こいつら だって!?)
彼女達に対しての言葉に怒りが湧き、一瞬、顔に嫌悪の表情が出てしまう。
「雅成? こいつらのことが不快か?」
雅成の顔色を伺っていたサムナンにその表情を見られてしまった。
うまく受け答えしなければ、彼女達の身が危ないかもしれない。
「不快じゃないけど、彼女達はサムナン様の側室なのかな? って思って……」
雅成は彼女達にヤキモチを妬いているように聞いてみた。
するとサムナンは「あははは!」と大声で笑い、
「側室なわけない。こいつらはわしのおもちゃ じゃ」
一番近くにいた女性の髪を引っ張り、雅成の前に引きずり出す。
女性が小さく悲鳴を上げて、床に倒れ込んだ。
本当はすぐさま助けに行きたかったが、握った拳に怒りを込めて耐えた。
「おもちゃ?」
「わしが好きに扱えるおもちゃじゃ。きちんと教育しているから、わしに従順でな、殴りたい時は殴っていいし、何してもいい」
怒りから激怒に変わり、今にもサムナンに飛びかかりそうになる。
でも今は我慢の時。
雅成はまた気持ちを握り拳に閉じ込めら彼女達の立ち位置を詳しく知るために、探りを入れる必要がある。
情報は多ければ多いほどいい。
「ふ〜ん。じゃあ彼女は?」
ついでを装いミモザの立ち位置も確認する。
「ああ、忘れておったわ。あいつもわしの新しいおもちゃじゃ」
サムナンが近くにいた家臣に目配せすると、ミモザは乱雑に引きずられ、サムナンと雅成の前に突き出された。
「綺麗な子だね」
頬を膨らませ、雅成は言う。
「なに、ヤキモチを妬いているのか?」
愉快そうにサムナンがニヤつく。
「そんなことないもん。ただ……」
「ただ?」
「やっぱりサムナン様は僕みたいな男じゃなくて、綺麗な女の人が好きなのかなって思って……」
性別を気にしているように答えた。
「そんなわけあるか! 雅成は唯一無二の存在。こいつらが雅成と同等なわけがあるものか」
「そうなの?」
ちらりとサムナンを見上げる。
「当たり前だ」
「ならよかった。おもちゃ達と遊ぶ時間があったら、僕のそばにいてね」
贅肉だらけのサムナンの背中に腕を回し、雅成はぎゅっと抱きついた。
「ああいいとも。雅成は本当に可愛いな」
愛おしいそうに雅成の頭を撫でる。
(これで彼女達をサムナンから離すことができた。次は……)
「ねぇ、おもちゃには何をしてもいいの?」
「そうだが。どうした? 何か気になることがあるのか?」
「あのね、僕も好きに扱えるおもちゃが欲しい。ダメ?」
ねだってみた。
「どいつがいい? どれでも好きなものをやろう」
女性達を指差す。
女性は何をされるかと、震えている。
「じゃあね……この子がいい」
ミモザを指差す。
「そいつはまだ教育が済んでないがいいのか?」
「それがいいんだよ。僕が僕好みに調教する。その方が面白そうでしょ?」
まるで調教することも遊びの一貫だと捉えているように言った。
「そうなんじゃよ。やはり雅成はよくわかっておる」
同調してもらえたと思い、サムナンはニヤニヤと笑い、女性達と同じ首輪を雅成に手渡すと、
「好きに使え」
ミモザを雅成の前に押し出した。
「うふふ。僕、サムナン様と一緒なの嬉しい。今この子に首輪を付けていい?」
「もうソレは雅成のものだ。好きにするといい」
「やった!」
サムナンの膝の上から飛び降りると、ミモザに近寄り首に首輪を回す。
恐怖に震えるミモザの耳に自然に見えるよう近づくと
「ごめんね。必ず助けるから我慢して……」
囁く。
ハッとミモザが雅成の顔を見たが、その時にはもう雅成のはサムナンが好む雅成の表情となっていた。
「素敵になった。ありがとうサムナン様」
サムナンの膝の上に座わり、頬にキスをする。
またサムナンは頬を紅潮させた。
これで雅成を喜ばせることができれば、頬にキスをしてもらえるという思考をサムナンに植え付けられた。
「僕疲れちゃった……部屋で休みたい」
サムナンの胸に体をしなだれさせる。
「ああそうだな。ではわしらの寝室に連れて行ってやろう」
サムナンは雅成を抱き上げた。
「それなんだけどね、寝室は別々にがいい」
一瞬サムナンの眉がピクリとする。
「一緒は嫌か?」
「ちがうよ! 本当は一緒がいいけど……」
照れたようにもじもじした後、
「一緒にいたら、可愛がってもらいたくのるの、我慢できそうにないから……。僕、神様のお告げ絶対に守って、サムナン様のお嫁さんになりたいもん」
サムナンの耳元で囁いた。
「そうかそうか。雅成もそうなのか。それなら仕方ない。寂しいが寝室は別にしよう。おい、大至急雅成の部屋を用意しろ」
上機嫌で家臣に命令する。
「じゃあ、部屋が用意できるまでサムナン様の膝の上で、この国のこと教えて」
集められる情報は、集められるうちに集めることにした。
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