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第67話 計画 ②
「さ、女神。私の傍に」
サムナンが手招きをし、雅成はサムナンに近づくと、なんの迷いもなく膝の上に座る。
「女神、私の女神……」
雅成の太ももを摩りながら、何度も言う。
「サムナン様。僕は女神じゃなくて雅成です。ちゃんと名前で呼んでください」
そう言いながら、雅成は頬を膨らませそっぽを向いた。
「そうだった、そうだった。悪かった雅成。機嫌をなおしてくれ」
オロオロとサムナンは雅成の顔色を伺う。
「これからは名前で呼んでくださいね」
唇を尖らせて雅成が言うと、
「ああ、約束する。約束する」
何度も頷く。
「本当ですからね」
雅成はサムナンの膝の上で向かい合わせになるように座り直し、脂でテカるサムナンの頬にキスをし見つめる。
サムナンの細い目が大きく見開かれ、頬が紅潮した。
(第一関門は突破したかな?)
腑抜けのように鼻の下を伸ばしたサムナンを見て、雅成は次の策略を仕掛ける。
「サムナン様はどうしてあんな手荒な真似で、僕をここに連れてきたの? とっても怖かった」
長いまつげを瞬かせ、雅成は下を向く。
「雅成の警護は厳重で、ああでもしないと雅成は私のところにきてくれないかと思って……。怖い思いをさせて悪かった。許してくれ」
「……」
雅成は下を向いたまま、ぐすんと鼻を啜る。
「泣いて……いるのか?」
目に涙が溜まったところを見計らって、雅成はサムナンを見上げ、その動きで瞳に溜まった涙が一粒溢れた。
「初めからサムナン様が:迎えに(・・・)来てくださったと知っていれば、喜んで参りましたのに……」
雅成はサムナンの首に抱きつき、泣いている音を作り出す。
「喜んで来てくれたのか?」
サムナンは体を離し、雅成の顔を覗き込む。
「僕、サムナン様が乳首を可愛がってくれてから、ずっと乳首が疼いて……。もうサムナン様でしか乳首でイケない……」
頬をほんのり赤らめ、恥じらいながらシャツを捲りあげ、ピンク色の乳首をサムナンに見せつける。
「僕の乳首を……可愛がって……」
サムナンは陸地にあげられた魚のように口をパクパクさせ、雅成の乳首に近付く。
生暖かく荒い息が乳首にあたり、寒気が走る。
(我慢しないと……我慢しないと、次へは進めない……)
「サムナン様……早く……」
胸を突き出して、サムナンの唇に乳首を当てようとしたが、サムナンは体を離し距離を取る。
雅成としては、乳首に貪りつくかと思っていたのに、サムナンはしなかった。
「できないんだよ……」
サムナンは口惜しそうに呟く。
「我が国の守護神は、夫婦になる前に互いの性感帯に触れたり、触れさせたりすることを許していない。以前、オークションで雅成の乳首に貪りついたから、神はお怒りになり、雅成を連れて帰ることを阻止された。だから同じ間違いは犯せないんだ。許しておくれ……」
悲しげに雅成の頬に手をやると、雅成はその手に頬を擦り寄せた。
「どうしても、ダメなの?」
潤んだ瞳で目で下から見上げる。
「いくら雅成の頼みでも叶えてやれない。だが晴れて夫婦になった暁には、雅成がして欲しいこと、全てしてやるぞ」
サムナンに抱きしめられ、嫌悪感から吐き気がした。
計画ではサムナンと体を重ねることが必須条件で、そこから主導権を握る予定だった。
だがこの神のお告げは、雅成にとって好都合。
自分から目を逸らせないよう、サムナンを誘惑するだけし、焦らすだけ焦らし、ねだって見せる。
人は欲しいものが目の前にあるのに手が出せないことは、欲しいものに対してより強く固執、執着するもの。
欲情するがお告げにより手を出せないサムナンは、雅成以外目に入らなくなるだろう。
そうなれば家臣達の意見よりも雅成の意見に耳を傾けるようになり、より操りやすくなる。
そこまでいけば、囚われた女性達を助け出せる。
もう残りの命が少ない雅成にとって、一分一秒が貴重だった。
「神様のお告げなら、仕方ないね。寂しいけど我慢する」
捲し上げていた服を下ろすと、あからさまにサムナンは口惜しそうにする。
ここは畳み掛ける仕掛けが必要だ。
雅成は指も太り過ぎ、大きな宝石が下品に付いた数個の指輪がめり込んだサムナンの手を持ち上げ、服の上から乳首に触れさせた。
「!」
サムナンは慌てて手を退けようとしたが、雅成は両手で逃げようとする手を押さえる。
「服の上からでも……ダメ?」
乳首にサムナンの指先を当てる。
「許せ雅成。わしらが夫婦になるための試練じゃ。もう少しの辛抱しておくれ」
サムナンは雅成の頭にキスをする。
もうサムナンの中では、雅成は自分のことが大好きで、早く抱いて欲しいと思っていると勘違いしている。
(第二関門突破かな?)
一日目にサムナンを惹きつけられたのは、予想より早い展開だった。
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