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英司は謎の人脈をいくつも持っていて、いつも確実な情報を得てきてくれる。その情報元について、響は詳しく知らないし、知りたいとも思わないけれど。
地下鉄集団ヒート事件で使用された薬物は、TXの強化版、TX+と呼ばれるもので、アングラ系のショップやクラブで、半年ほど前からセックスドラッグとして出回り始めていたらしい。
事件を起こしたオメガ達は同じイベント――所謂、ドラッグパーティーに参加していたようで、そのパーティー関係者は軒並み逮捕された。
「宮下の不真面目な勤務態度は、最近更に酷いらしい。毎週末、オメガ引き連れてVIPルームにこもってるって話だし、薬物中毒 一歩手前かもな」
毎週末と聞いて、この間の『バイオセキュアテック』での打ち合わせは月曜だったなと思い出す。
「バイオセキュアテックの上層部ではかなり問題になってるみたいだから、社長 がそろそろ動くだろうな。海外支部へ移動って|体《てい》で、施設の更生プログラムコースってとこか」
「壱弥の鼻は正しかったわけだ」
英司の報告を聞きながら、響は隣に座る、情報ではなく嗅覚でスキャンダルを探り当てた男を見る。
分厚いローストビーフのサンドイッチを早くも一つ食べ終えたらしく、ぺろりと唇のソースを舐めている。
その鼻頭にも茶色のソースが付いていた。「ついてる」と鼻を指差しペーパーナプキンを差し出すと、壱弥は顎を上げ、響の方へ顔を寄せてくる。
拭いて、のジェスチャーに呆れたように溜め息をつき、それでも形の良い鼻先を拭ってやった。
「ありがと、響」
壱弥が嬉しそうに笑って、二つ目のサンドイッチにかぶり付く。
「ったく。イチは本当に甘ったれだな。響も甘やかしすぎなんだよ。躾には適度な厳しさも必要なんだぞ」
子供かペットの話をするような英司に、響は片眉を上げた。
「昨日、また壱弥の冬服を大量に買ってきた奴に言われたくないけどね。こいつのクローゼットを溢れさせる気か?」
「俺のは甘やかしとかじゃないから。見栄えのする奴を着飾るのは俺の趣味だ。最近、響は全然一緒に買い物行ってくれないし」
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