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第1話
自分がゲイじゃないかと疑ったのは中一の夏だった。
水泳の授業後シャワーを浴びる同級生の裸に催したのがきっかけだ。
同性が気になるのは自分がなよなよしているからだと、硬派な男になるべくヤンキーチームに入り日々男を磨いたが、病気や出来物じゃあるまいし治る治らないの話ではなかった。
高二となり、自分はどうあっても同性が好きなんだと腹を括り、周りの連中に気付かれないよう気を付けた。
だが、どんなに気を付けようと、バレる時はバレる。
所属するヤンキーチームの頭である自蔵に先日バレた。
肩を抱かれた時に変な雰囲気を出してしまったのが良くなかった。ついでに勃起したのも良くなかった。
俺がそっちだと気付いたその日、自蔵は面白そうに笑うだけで終わり安堵したのも束の間。
クリスマスプレゼントだと、本日俺を主役とした集団レイプパーティーを開催しようとしやがった。
何時もの集会場所にゲストとしてあちら側の野郎を五人。観客兼照明やカメラマンとしてチームの奴六人と自蔵の計十二人の姿を見た時は流石に駄目だと思った。
この人数相手には勝てないと。
だが、どうせヤられるなら何人か痛い目見せてやると、俺を縛ろうと近付いたクソの腕を折り、二番手の奴の膝を砕いた。三番手は金的にモロ入ったから暫く小便するのも辛いはずだ。四番手と五番手は逃げる時に階段から蹴落としたからよく分からん。死んでいないといいが。
そんな訳で絶賛逃亡中だったりする。
五人は狩り参戦不可能にしたが最低でも七人は残っているし、キレた自蔵が召集をかけて追っ手の数は倍以上になっているだろう。
このピンチをどう乗り切ればいいのか。
無い脳みそで考えるが、良い案など浮かぶ訳もなく、近くの公園に逃げ込んだ。
ただひたすらに走り、公園を抜けると廃墟と化した建物の間をすり抜け闇雲に逃げる。
流石に息が上がった俺は打ち捨てられた洋館らしき建物の庭に入り物置小屋の影に身を隠した。
自分ですら現在地が分からないほどに走ったのだ。
当分は見つからないだろうと息を整えていると……。
「こんな時間にかくれんぼデスカ?」
おわっ!
何処からともなく神父のコスプレした外人が現れた!
クリスマスってコスプレする日だっけか?
とりあえず騒がれると面倒だから……。
「あいむ……」
「落ち着いて下サイ。ワタシ日本語デス」
「あっ、ああ。そうだな……」
日本人ていうのはどうしてこう外人を見ると焦っちまうんだ?
「迷子デスカ?」
迷子と言えば迷子だが……。
「平気だから放っとしてくれ」
「こんなキュートな子猫ちゃん放っとけませんヨ」
キュートな子猫ちゃん?
身長百八十。体重八十五のガチムチな俺がか?
いやいや、アレだろ。アメリカンジョーク。
きっとそうだ。
「ココは寒いデス。中に入りマショウ」
「いや、迷惑かける訳には……」
俺を匿っているのが連中にバレたらヤバイと首を横に振るが、タイミング悪く腹の虫が鳴ってしまった。
「パンとスープありますヨ」
「いや……」
「大丈夫。痛い事しませんヨ」
「ちょっ!」
必死に遠慮する俺の意思は無視され、謎の外人によって洋館に引き摺り込まれた。
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