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第1話 プロローグ

 公園の小さな掲示板に一枚の手描きのポスターが貼られていた。  それを見る度、また夏が来たのだなと思い知らされる。 「夏が来る……」  樹(イツキ)はランドセルを背負ったままポスターの前に数分立ち止まった。  そして、手元にある去年買ったばかりの運動着が、来月にはまた新たな物へと変わるのかと思うと、複雑な気持ちになるのだった。 「また学校変わるんだ……」  慣れたばかりの学校を、一年いただけですぐに変わる。それは、父の転勤が頻繁にあり、周期が毎年その時期だからだった。  転勤族。一言で説明するならばそうなるだろう。樹はいつだって転校する事を友人に知られるとそう話していた。  そして、もうここには戻って来ない。そう付け加えるのだった。 「はぁー……面倒臭い……」  引っ越す事。  心にもない色紙を渡される事。  破られると分かっている約束を交わす事。  その全てが面倒臭い。 「次はどこに行くんだろう……」  今の所よりも都会だと良いけどな。  そんな程度しか樹には楽しみがない。 〝次の学校ではどんな友達がいるだろう〟  そんな事を思ったって意味がない事を、樹はもう既に体感しているのだった。

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