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第17話 3章 鳥はどこから来たのか
インターフォンが鳴る。
「全く、アポイントくらいとれと思うけど、来たものは仕方ない」
応対した彰吾が顔をしかめながら言う。
来客なのか? ここへ来てハウスキーパー以外の来客は初めてだ。わたしはどうすれば? 星夜の顔に不安が浮かぶ。
「ああ、心配いらない。中学の時からの友達だから気の置けないやつなんだ。お前はそのままここにいて大丈夫だ」
と言われても心配だ。寝室に行こうかと思っていると、既にその人は入ってくる。
「あっ、先客だったのか?」
「ああ、ちょっと事情があって預かっている。星夜だ。星夜、こいつ成瀬っていうんだ」
「成瀬です。そみませんね、急に押しかけて」
「ほんとだよ、急に来るなよな」
「休みなのに急な仕事が入ってさっき終わったんだ。近くで売ってたこれが美味そうだったから買って来た。一緒に食べよう」
「へえ、確かに美味そうだな。 今日はブランチで昼飯食ってないから丁度いい、早速一緒に食おう。星夜、コーヒー入れてくれるか? 三人分だけど大丈夫か?」
大丈夫だと思う。星夜は三人分のコーヒーを慎重に入れる。彰吾は気の置けない人と言ったが、気を使う。
コーヒーを入れて出し、キッチンへ引っ込もうと思ったら、「お前も一緒に」と言われ、彰吾の隣を指された。戸惑い気味に座る。
「いただきます。おっ、コーヒー美味いなあ。星夜君と言いましたか? 上手ですね」
ニッコリ微笑んで言われ、安堵する。彰吾さんの友人だから悪い人じゃないのだろう。その印象通り、成瀬は終始気さくに星夜にも話しかけ、星夜も気楽にその場にいられた。
成瀬は、気さくに話しかけながら星夜を観察した。思った以上の中性的な美形。これで、長髪なら女と見紛うのは分かる。そして、相当な執着をされたことも、さもありなんと思える。
成瀬はゲイでもバイセクシャルでもないが、星夜なら抱けるかもと考えて急いで否定した。そんなこと彰吾が知ったら殺される。彰吾の星夜への思いは見ていて分かる。相当惚れている。そして、星夜にも彰吾への想いを感じる。
この二人、両想いだろうと思う。多分本人たちに自覚は無いだろうが。
「久しぶりに美味いコーヒーを飲んだ。できればおかわりが欲しいのですが」
「あっ、気付かず申し訳ございません。すぐにお入れします」
星夜は慌てた様子で、コーヒーを入れに行く。彰吾と成瀬はそこでアイコンタクトをとる。成瀬は頷いた。
二杯目のコーヒーを飲んだ後、成瀬は上機嫌で帰って行った。
成瀬なりに、星夜と直接会い、何か感じることがあったのだろう。後は、暫く任せるのみ。何も無い所からの調査だ。簡単にいくものではないと彰吾も思っている。
星夜のことは時間がかかることだとは思っているが、早く解決したいと逸る気持ちも抑えられないのだった。
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